老賢者のカードと錬金術
タロットカードの9番、「賢者」ハーミットは、1の魔術師が進化した姿と言われています。
ヌメロロジーで1は始まりを意味し、一桁の最後の数である9は達成、完成の意味があります。
また9は、1から8までのすべてのエネルギーを包括しているため、混沌としたエネルギー状態もあります。
1魔術師のカードについて詳細は省きますが、魔術師は、彼の前に並べられた4つのエレメント(火、風、地、水)を調合し、不可能を可能にする錬金術(アルケミー)を行っています。
9ハーミットが手にしたランタンには、ダビデの星形(六芒星)の炎が灯っています。ダビデの星は叡智を意味します。
ダビデの星は、ふたつの正三角形が交互に組み合わさった形ですが、正三角形は3の数字の創造性のエネルギーを表しています。
※ウエイト版タロットカードより古いタロットカードでは、ハーミットが手にしているのはランタンではなく「砂時計」です。
マルセイユ版の一部に、ランタンを持ったハーミットのカードがあります。
エステンシタロットでは、砂時計を持っています。
砂時計を持っているハーミットは、時間の神クロノス(ギリシャ神話ではサトゥルヌス)=土星に重ね合わせられていたのでしょう。
ウエイト版では、ハーミットにランタンを持たせた以外は、シンプルに描いたことで、ランタンの中の炎に焦点を当てています。
火(炎)を灯すことには、明るくするだけでなく、宗教儀式的行為の意味もあり、またそれは精神性という意味も持ちます。
火を灯すには、燃料になるもの(地の要素)と酸素(風の要素)が不可欠であり、火が燃えることにより水蒸気(水の要素)が発生します。
火が燃えている状態は、4つのエレメントがひとつになっている状態なのです。
そして、この状態は5つめのエレメントになるspirit(精神性)を作り出します。これを表すと五芒星になります。
さて、ダビデの星(六芒星)は、正三角形と逆三角形を重ねた形です。ヘキサグラムとも呼ばれますね。
数字の3を表した正三角形は、3点の角度が等しく、神秘的なエネルギーの象徴とされています。三位一体を表しているとも言われます。
正三角形は神の創造性(神の力を表している)、逆三角形は神の峻厳(神による破壊)を意味し、その二つが合わさった六芒星は「神性」を表しています。
ダビデの星の炎が灯るランタンを持ったハーミットは、若い魔術師が錬金術を長年繰り返し行い続けた結果の姿。
宇宙のすべて、この世の裏表を知り尽した人、悟った、達観した人として描かれています。
※占星術では、六芒星はグランドセキスタイルという名前の複合アスペクトになります。
ところで悟りは、一度悟ったら終わりではありません。苦しみから解放されることもないでしょう。
悟ってから始まる、精神的な葛藤があります。
それは魔境への誘惑との戦いです。
悟ったら楽になるわけではないですし、悟った後がむしろ重要です。
そのこともハーミットの姿に見ることができます。
彼は、マントをすっぽり被っていますが、そのマントは彼を外界の刺激から庇護しているようです。
つまり隠れ蓑。彼は、自分のエネルギーを世俗から守っているのです。
しかし、この世で生きるには、仙人のように山奥に籠らない限り、世俗から離れることは難しいですね。
私たちは、地球でしか経験できないことをするために生まれて来ているので、むしろ世俗の中で生きて喜怒哀楽を繰り返しながら、精神的な向上をしていくのだと思います。
階段を一段ずつ上がるように、精神的向上を積み重ね、やがて叡智に到達する、それが私たちの魂の目的でしょう。
錬金術とは、最終的に「賢者の石」を得る工程だと思いますが、賢者の石とはいわゆる物質の石ではなく、精神的な覚醒を意味しているのではと思っています。