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荒ぶる野に生きた魂は母なる海へ還っていった*アン・ブロンテの星読み

パソコンが故障したため、スマホから更新しています。

今日、5月28日は、若い方はまったく知らないと思いますが、阿部定(あべ・さだ)と言う女性の誕生日です。
1936年(昭和11年)に起きた阿部定事件と呼ばれる事件の犯人です。私の母ですら生まれたばかりの年のことですが、1976年に大島渚監督によって事件が映画化(『愛のコリーダ』)され、大変な話題になりました。当時は、成人指定映画だったと記憶しています。
阿部定のホロスコープ解説は、Twitterで簡単にしましたので、ここでは割愛しますね。

さて、本題。
今日5月28日は、アン・ブロンテの命日でもあります。
誰それ?と思われる方が多いと思います。
アン・ブロンテは、『ジェーン・エア』を書いたシャーロット・ブロンテ、『嵐が丘』の作者、エミリー・ブロンテの妹でした。

ブロンテ姉妹は、映画にもなりました。長女がシャーロット、次女がエミリー、三女がアンです。

トゥ・ウォーク・インビジブル

実は、有名な3姉妹には兄(長男ブランウェル)がいました。兄は幼少から才気煥発で、3姉妹のリーダーでした。家族はみな、彼の才能を認めていたようです。
しかし、兄は大失恋から精神的に追い込まれ、アルコール中毒になり、廃人同然になってしまったのです。エミリー・ブロンテが書いた『嵐が丘』のモデルはブランウェルではないかと言われています。
兄は、妹たちの小説にアドバイスするなど文学的才能がありましたが、ブランウェル自身の作品は世間には認められなかったようです。長兄としてのプライドを傷つけられ、ますます彼は卑屈になって行きました。

ブランウェルが18歳の時に描いた姉妹の肖像画。 後年になってブランウェル自身が、自分の姿を消してしまいました。

個人的には、ブランウェルの不遇な人生に同情します。興味深い人物です。

彼らの父親(パトリック)は、英国国教会の優秀な牧師でした。
妻マリアを病気で早く亡くした後、妻の姉の協力を得ながら4人の教育をしていますが、書架の本を子供たちに自由に読ませ、それによって子供たちの文章力と想像力が養われたと思います。
パトリックの人生も大変興味深いです。

マニアックな私は、2年ほど前に(母マリアを除く)ブロンテ一家全員のホロスコープを読みましたが、今回はアン・ブロンテのホロスコープをシェアしたいと思います。
(以下、2年前に書いたものを加筆修正しました。)

アン・ブロンテは、二人の姉に比べて、名前も作品もあまり知られていませんでした。発表された著作は『アグネス・グレイ』『ワイルドフェル屋敷の人々』の2作品。近年になって、イギリス文学におけるアン・ブロンテの功績が認められたそうです。
私はアンの作品は読んでいませんが、本の感想を検索してみると、
「当時のイギリスの時代背景や人物描写が巧みだ」という感想と、「姉達の作品に比べて内容が平坦で地味」という感想に分かれていました。
原文で読むのと翻訳を読むのとの感じ方の違いもあるかもです。

ホロスコープはこちらからお借りしました。20世紀前半の著名な占星術師、ビビアンE.ロブソンという方が作成したホロスコープとのことです。

アン・ブロンテのホロスコープ

1820年1月17日生まれ。 太陽は山羊座、月は水瓶座。アセンダントは魚座です。

姉たちと比べられがちなアンの才能について水星を見てみますと、
水星は10ハウス山羊座。射手座の海王星にコンジャンクション。MC、天王星もコンジャンクションの範囲です。
天王星と海王星のコンジャンクションは1820年代に生まれた人に見られます。1820年代は、産業革命によってもたらされた多くの発明と社会的変化があった時代でした。「超越世代」と言われる1820年代に生まれた人たちは、社会分野で活躍している人が多いそうです。

MCに天王星が重なっているのは改革者の顔。海王星は直感的、創造性。射手座は哲学や思想がテーマ。
天王星と海王星ともコンジャンクションしているアンの水星は、そんじょそこらの水星ではない(どんなんじゃ(笑)と思われます。

10ハウス水星は、書くことや言語を扱うこと、または教師が天職という感じですね。
山羊座の水星なので現実的な思考をします。この水星が、二人の姉とは違う個性を発揮していたと思います。劇場型のタッチ(ゴシックロマンスの作風)ではなく、日常的な視点が強かったでしょう。
エミリーやシャーロットの作品に見られる神秘主義的な場面は少ないそうですが、作品中に聖書の引用が多く、姉妹の中では一番、信仰心が強かったとも言われています。

MCのサビアンシンボル「美しい流れにかけられた古い橋 」は、古くて優れたものに対する愛着と尊敬、受け継がれてきた尊い精神性を受け継いで判りやすく世間に広めていく、ということを意味しているので、まさしくアンその人を表しているように思います。

射手座24度付近はギャラクティックセンター(銀河の中心)と言われ、アンは天王星が26度にあります。
マンディ・ロックリー(占星術師)は、射手座24度付近に天体を持つ人を
“Whistleblowers at the Galactic Centre ”「銀河センターの内部告発者」と例えています。

"...can have an impact on the world that reaches far beyond the personal when given access to information that others would prefer to keep hidden and when they have the means and motivation to share that information on a huge scale"
他の人が隠しておきたい情報へのアクセスが与えられ、その情報を大規模に共有する手段と動機があるときに、個人にはるかに届かない世界に影響を与えることができます。(Google翻訳)

天王星の指示で、アンの山羊座水星はその役目もしたのでしょう。アンは、人物を正確に描写することによって、小説の中で父権制度や階級社会の爛熟ぶりを批判していたそうです。

この時代の西欧の女性たちが自立する方法は、裕福な権威者の家庭でのガヴァネス(教育係)として働くか、作家になるしかないとも言われていました。なぜなら、圧倒的に女性のほうが数が多く、未婚の女性が多い時代だったからです。
その訳は、中世から繰り返し起きた覇権戦争により男性が徴兵された(戦死)ということもありますが、当時は植民地で儲けて一旗あげようとする男性たちが多く、国外に結婚適齢期の男性が流出してしまっていたことも原因と見られています。

アンの水星は、姉エミリーの木星とコンジャンクション。アンとエミリーは、4人兄弟の中では、1番仲が良かったそうです。
そういえば、ヴアン・ゴッホと弟のテオも水星木星がコンジャンクションでした。

MC:「美しい流れにかけられた古い橋 」
天王星:「彫刻家」
海王星:「法王」
水星:「成長と理解に対して受容的な人間の魂 」

机代わりにしていた持ち運びできるdeskbox

これら10ハウスの星たちは、1ハウス魚座の星たちとスクエアになっています。

アセンダントは魚座24度。カイロンと冥王星が25度。土星も26度でコンジャンクション。
これは繊細さと身体の弱さを表しているのでしょう。
ブロンテ家の子供たち(6人)は短命でした。水星は兄妹も表しますし、肺も表します。(シャーロット以外は結核を病んだ)水星冥王星スクエアはそれを表しているようです。

アセンダント魚座のルーラー海王星は10ハウスで、冥王星とスクエア。これは世代的なもので、現在生きている方でこの配置を持っている人はいません。
1ハウスの冥王星は、霊感の強さや見えない世界とのつながりの深さを思わせます。

スー・トンプキンズ(イギリスの著名な占星術家)によると
“Pluto rising people seem to want to go out into the world wanting to hide.”
冥王星が上昇宮(アセンダント付近にある)の人は、隠されているものを明らかにする、ということかな?

アンは、“Whistleblowers at the Galactic Centre ”「銀河センターの内部告発者」であり、隠されているものを明らかにする使命を持っているということなんでしょうね。

1ハウスの冥王星と土星のタイトなコンジャンクションは、並外れた精神力の持ち主であったことを教えてくれています。
この土星は、アン自身の性質でもあり、父親・パトリックも表します。パトリックは本当に並外れた精神力の持ち主だったでしょう。アイルランドの貧農の子から努力して英国国教会の終身司祭になり(良い意味での「成り上がり」)、妻と子を相次いで亡くしても、やさぐれもせずに神に奉仕を続け、教区の人の幸福を願って活動した人生でした。

アセンダント:「聖職の浄化 」
カイロン):「影響を分割する新月 」
冥王星:「影響を分割する新月 」
土星:「収穫の月 」

長男ブランウェルも含むブロンテ姉妹は、みな文学的才能があり、絵もうまかったようです。

アンが描いた浜辺に立つ女性の絵

金星は12ハウス水瓶座。月、木星とコンジャンクション。
木星は射手座のルーラーで、射手座にいる天王星とミューチュアルレセプション(守護星交換)しています。
見えない世界(神秘、心理)のことを水瓶座的に表現するのが、アンの場合は物語、小説になったのでしょう。時代が違えば、違う表現活動をしていたかもしれませんね。

12ハウスに星が多いと内向的と言われますが、水瓶金星は博愛精神にも富んでいます。
アンは19歳から5年間、ガヴァネスとして働いていましたので、子供に教えることを辛抱強くできたのは月金星木星の合いのおかげでしょう。
しかし、長年勤めた仕事を辞めた原因が、雇用主ロビンソンの妻と兄ブランウェルの不倫でした。
その頃、トランシット天王星がアンの水星に90度、トランシット海王星がアンの火星と150度。

金星:「絶望し幻滅した女 」
月:「絶望し幻滅した女 」
木星:「子供たちが遊ぶために床にひかれた布 」

女性のホロスコープでは火星は恋人、好きな男性のタイプを表します。蟹座の火星は家族思い、仲間思いで、人見知りという感じかな。

アンは恋愛には消極的だったそうで、初恋の相手は、1839年、アンが19歳のときに父パトリックの教会に牧師補としてやってきたウィリアム・ウェイトマンだったのではないかと言われています。
ウェイトマンは好青年だったようですが、残念ながら1842年にコレラにかかり28歳で死去。ウェイトマンは兄ブランウェルにとっても良き友人だったようで、親友を亡くし、同時期に伯母も亡くなったため、ブランウェルのショックは大きかったようです。
この頃は、アンの冥王星、土星にトランシット天王星がコンジャンクションでした。

人生の目的を表す太陽(顕在意識)は、山羊座11ハウス。ぽつんといる火星5ハウス蟹座とオポジション。1ハウスの星たちとセキスタイル。
太陽と火星のハードは負けず嫌いな性質と言われているんですが、「アンは大人しい性格だった」(姉シャーロットの証言)という記録が多いんですよね。
気性が激しかったとかエキセントリックだったという記録が見られないのは、アセンダントが魚座ということもあり、大人しい女性に見えていたでしょう。蟹座の火星なので、危機感を感じたときにスイッチが入るのかも。
火星は蟹座にいるとき火星のマイナス面が出やすい。(家庭に問題が起きやすいとも言われます)

家庭に問題が起きやすいという点でいえば、ブランウェルの異常行動がそうなのかも。火星がアン本人の行動ではなく、ほかの家族に影響した(仮託)のでしょうか。
ブランウェルが不倫問題を起こしたとき、アンのホロスコープに太陽火星を軸にブーメランが出来ていました。
もしもアンが火星の年齢域(35歳~45歳)まで生きていたら、ハンパない火星パワーを自分のために使ったかもしれません。

山羊座生まれのルーラー土星は1ハウス魚座で太陽とセキスタイル。
土星は地球で生きるためのルールです。アンは魚座土星(彼女の場合は宗教)を人生のルールとしていたのでしょう。
作家デビューした1847年は、アンの10ハウスの星たちに対し、トランシット海王星と土星が60度、プログレス太陽にトランシット木星が120度。
アンの火星は、父親パトリックのノースノード(ドラゴンヘッド)と同じ度数でした。

太陽:「山の巡礼 」
火星:「豪華さに満足と幸せを感じ長机の前で読書している人々 」

アンは、姉エミリーの死後(1848年12月19日)まもなく体調を崩しました。
アンの太陽にトランシット牡羊座冥王星がスクエア。金星にトランシット獅子座木星がオポジションで、太陽、冥王星のブーメランが出来ていたんじゃないかな?
亡くなったのは、1949年5月。死因は結核です。
スカボローという町に転地療養して直後のことだったそうです。
スカーバラ

スカボロー

サイモン&ガーファンクルの「スカボローフェア」のスカボローです。

Are you going to Scarborough Fair?
Parsley, sage, rosemary and thyme,
Remember me to one who lives there,
For she once was a true love of mine.
『スカボローフェア』サイモン&ガーファンクル

この転地療法について、医師は効果がない(手遅れ)と言っていたようです。しかし、彼女の最後の希望として家族は承諾したようでした。
5月24日、アンは姉シャーロットと共にハワースを出発し、途中のヨークで一泊し、そのあとスカボロへ向かいました。(ヨークからスカボローは日帰りできる距離)

アンはなぜ、スカボローの町を選んだのか。
参考にさせていただいたサイトによると、アンがガヴァネスをしていた1840年から1844年にかけて、彼女は雇い主のロビンソン一家の毎年夏にリゾートに同行しており、スカボロで約5週間過ごしていたそうなのです。

スカボローに到着したのは5月25日(金)の午後。
翌日、アンは砂浜を何度も歩き、砂の感触を喜び、部屋の窓からも見える夕陽を「これまでに見た中で最も素晴らしい夕陽」と言っていたとか。

アンはスカボローの風景が大好きだったようです。
著作の一文で・・・
just enough wind to keep the whole sea in motion, to make the waves come bounding to the shore, foaming and sparkling, as if wild with glee.
と書いています。

「風が海全体を動かして、波は岸に寄せ返し、泡立ってキラキラと輝いて、まるで大喜びをしているよう」と言っているのかな。

荒野に生まれ育ったアンは、やわらかな砂の感触にやすらぎ、
すべてを包み込むような海の大きさ、おおらかさ、生まれ育ったハワースにはない海からの湿気を帯びた暖かい空気に癒されたのでしょうね。

アンが歩いたスカボローの浜

しかし、スカボロー到着のわずか三日後に、アンは亡くなりました。29歳でした。
トランシット火星と土星が、アンのノースノード(ドラゴンヘッド)にコンジャンクション。

ノースノード:「 羽のある三角 」

アンは、シャーロットにスカボローに埋葬して欲しいと言ったそうです。そして5月28日月曜日の午後、旅立ちました。
ちょうど、この頃はペンテコステ(聖霊降臨)というキリスト教のお祭りの時期でした。信心深いアンにふさわしい日だったかもしれませんね。

アンのお墓は、スカボローのセントメリー教会の墓地にあります。
セントメリーは聖母マリアという意味。
アンが生まれて間もなく亡くなってしまった母マリアを思い起こさせる教会のある町に埋葬されることを望んだアン。やっと暖かな母の胸に抱かれているのかもしれません。

私もギャラクシーセンターに星を持っているので、隠れているものを引き出そうとする“内部告発者”なのかな。でも、愛を持って死者を冒涜しないように努めたつもりです。
長い文章を最後までお読みいただきありがとうございました。

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