「美味しんぼ」再読備忘録2024「うどんの腰」‐第四巻「食卓の広がり」第6話‐
文化部の谷村部長が大相撲のチケット、しかも枡席をプレゼントしてくれたので文化部のいつもの面々の田畑さん、花村さん、栗田さんと山岡で大相撲観戦している。
枡席って現代やと最低ひとり1万円くらいするようだ。当時はいくらやったんやろ?。まあ新聞社なので手に入りやすいんだろうとは思うが。昔は阪神巨人戦のチケットつけるから新聞取ってくれっていうのが販売員の常套文句やったもんな。相撲もおなじような伝手というかコネがあるのだろう。
終わって山岡が「近所にうまいうどんを食わせる店がある」というので行くことにした。山岡も久しぶりの訪問らしいが、外観が薄汚れて、店に入っても客は全然居ない。出迎えた親父さんもまるで別人のようにやせ細っている。山岡も店と親父さんの変わりように驚いている。
親父さん自慢のうどんは相変わらず美味い。じゃなぜ店がこんな状態なのか?というと、その答えが向こうからやってきた。チンピラ風のガラの悪いのが入ってきて無体を働くのだ。「近所に暴力団事務所が出来てからこんな感じなので、客が寄り付かなくなった」と親父さんも困り果てているようだ。
山岡の機転でチンピラから女性陣を守って逃げてきたが、今度は橋の上から身投げしようとする相撲取りを見つける。思いとどまらそうとして山岡が逆に川に落ちてしまう。凄い展開やな。漫画かな?'`ィ(*´ェ`*∩漫画です。
話を聞くと、十年やっても全然番付が上がらない。同期はどんどん出世していくのに、自分はちゃんこ番として部屋に残れと言われてるのがミジメで死のうとしたらしい。山岡が「ちゃんこが美味いならその腕を活かしてみろ」とアドバイスするが、「そんな、ただの素人料理です」と死のうとした割に意外と冷静なのが可笑しい。
翌日、死のうとした力士の大谷は部屋を辞めて、身の振り方を相談するために東西新聞社の栗田さんと山岡を訪ねた。ところでちゃんこが美味いから部屋に残れと親方が言ってくれていたハズなのに、大谷が辞めると言うと親方もおかみさんも喜んで餞別までくれたらしいが、もしかして厄介払いが出来てセイセイされてないか?これ?。アレェ?。
なんの偶然か、谷村部長も大学の後輩の柔道で日本代表にもなった大山、運動部長の前原さんもプロレスラーの大馬を連れており、巨漢の運動選手三名と一緒に昼飯を食うことになった。
さらに偶然が重なって、相撲取りの大谷は力士を廃業、柔道選手の大山も腰を痛めて選手を引退、プロレスラーの大馬も腰を痛めてレスラーを引退するらしい。
三人とも今後の身の振り方を考えないと…とそれぞれ相談をしに来た様子。山岡はそれを見て、「身を粉にして働く覚悟があるなら仕事の口があるんだけど」とポツリ。三人とも「ぜひ聞かせてください」と意欲的である。
そして場面が変わってくだんのうどん屋。例によってチンピラが店で暴れているが、
チンピラ風情が、日本代表の柔道家、プロレスラー、力士にかなうものではない。ケチョンケチョンにやられてしまう。そして…
不思議だったのは、この三人のなかでちゃんこ番として日々腕をふるっていた料理経験が一番あるであろう力士の大谷でなく、柔道家の大山が一番筋が良かったということである。才能ってそんなもんなのかもな?。
さて、この暴力団云々のハナシは今では暴対法があるのでこういうことにはならないし、そもそも旧知の中松警部に相談したらなんとかなったのかも?とも思ったりもするが、ちょっと気にはなるのである。
この作中の暴力団のチンピラはどういうわけだか、関西弁でわめいているようやけど、舞台は東京である。他所者のチンピラが暴れていたら、警察より先に地元のそっち方面の人たちが黙ってないと思うがどうなのだろうか。
うどん屋の親父もこの地でそこそこ長く商売をしているはず。町内会長とか地元の主みたいな人に相談すれば、解決策をそれとなく教えてもらえたはずである。それがないのはどうしたことだろうか。
「酒の効用」回で、商店街にアーケードが出来たという話をしたが、その時、工事がうるさいと地元の暴力団がねじ込んできたことがある。こういってはなんだが、商店街の親父連中は毎日の商売で日銭が入り、昼間の商売はお母ちゃんにまかせているので、パチンコ行ったり、夕方から酒を飲んだり、夜は博打などやっていた。こういった暴力団の良いお客様だったのである。
自分の子供の頃、月曜日の朝に土曜日、日曜日の競馬のノミのつけを回収しに怪しい親父が商店街を出入りしていたのを覚えている。このオッサンが子どもの自分に「ぼんも大きなったらオッチャンが色々教えたるからな」と声をかけたら母親が「ウチの子にアホなこと言わんといて」とマジギレしてたっけ。
そういえば商店街に雀荘もあったな。その雀荘に子どもの自分はよく商店街のお母ちゃんらに「ちょっとウチのお父ちゃん呼んできて」とかお使いにいかされたもんです。
そして結局、博打好きの常連の人が知り合いの暴力団の誰やらに話をつけに行ったらしい。まあ金で解決したわけだが、こういうの当時は普通のことであった。うどん屋の親父がうまく立ち回れてないの、どういうことなんやろ?と当時はじめてこの回を読んだときから不思議でしたわ。(つづく)