「美味しんぼ」再読備忘録2024「板前の条件」‐第四巻「食卓の広がり」第7話
第一巻第四話「平凡の非凡」回で、東西新聞社が「印象派美術展」を主催した際に、億万長者で食通と名高い京極万太郎氏所有のルノアールを貸出してもらったこともあり大成功を収めた。
京極さんが東京に来られたと言うので、そのお礼に、と「岡星」で接待している。お供しているのは文化部の谷村部長、富井副部長、栗田さん、山岡だ。
こういう時には、「印象派美術展」を企画した事業部長である奥野氏が来て、自ら接待するのが筋というか礼儀やと思うけど、どうなってんねんやろ?。奥野氏のメインの接待が終わってて、今回は文化部一同だけのざっくばらんな食事ということやろか?。以前の回では、山岡の主導であったが、今回は「岡星」の主人の料理が食べたいと京極氏が我儘というて、この接待となったのかもしらんけども。
ともかくもいきなり3つのお造りが出て、それは京極氏を満足させるものであった。そして次は「飛竜頭、豆腐の支度だ」と岡星主人が命じると小僧さんが準備する。ざっくりいうと「飛竜頭(ひりゅうず)」ってがんもどきのことであり、これは関西での呼び名である。
のちに判明するが、岡星主人は若い頃の料理修行を京都で行っており、がんもどきを「飛竜頭」と呼ぶのもその名残であろうか。京極さんも京都出身やから気が合うものがあったのかもしれんね。
その小僧さんが岡星主人によう似てるというので、京極さんが声を掛けると実は岡星主人の弟の良三とのこと。話を聞くと、
そして良三さんの回想が始まる
って良三さんがなぜ「美食倶楽部」をクビになったのか?と探って、実は隠れてタバコを吸って精神的に落ち着かせてから調理していたのを海原雄山にバレてクビになったとわかった。
そして山岡の策で、煙草をのんでるような味覚と嗅覚が鈍っている料理人に考えつかないような、出来ないような、そんな繊細な料理を海原雄山に出し、海原雄山を納得させ、無事に良三さんは「美食倶楽部」に復帰がかなった。
そして海原雄山は、良三さんの兄も料理人と聞き、その兄の腕を見に店にやって来たらそこに山岡が居り、すべてのからくりがわかり、しかし怒るどころか、
豪快な笑いで物語を〆るのであった。メデタシメデタシ。…なんですが、実は結構ツッコミどころ満載な回なのです。
まず小ネタから。「岡星」主人の名前が岡星精一、今回出てきた弟の良三、じゃ次男はどこ行ってんねん!。
'`ィ(*´ェ`*∩。次。
もし山岡らが居ない時に海原雄山が「岡星」に来ていたら、雄山は「岡星」主人の腕をどう評したであろうか、ということ。意外と直接対決してないよね。究極のメニューは岡星主人が調理担当やっけ?。ifとして気になったなあ。
そして、海原雄山がただの嫌なオッサンから主人公山岡が超えるべき壁として、作劇上再設定されたのではないか?ということです。
以前、第三巻第4話「料理のルール」回で、雄山についてきていたお供の、名も無いちょっとイヤミな男、こやつが一回でお払い箱となり、雄山の右腕としての中川さんの初登場回、ということと密接に関係してないであろうか?。
海原雄山が主人公を喰うほどに存在感抜群であり、キャラクターが立ちすぎており、原作者も作画担当も雄山を出すと色々と話を膨らませやすい、また読者からも好評なのもあって、山岡と雄山の確執も物語の柱のひとつとしてやっていこうと、そうすると雄山のこの傲慢さ、傍若無人さ、は…とかまあなんやかんや色々と練り直しがあったのではなかろうか。最後、士郎にいっぱい喰わされたと知りながらも破顔大笑した場面に繋がるのかな?。知らんけど。
そして今回の話にも関係する、タバコを吸うような料理人はアカンやろ問題。これはどうなんやろね。実はタバコを吸う料理人ってかなり多いと思うねんけど。くわえタバコで調理してるの、あまり高級なとこじゃない店では普通に見かけたけどね。
『味いちもんめ』という「美味しんぼ」とほぼ同時期に連載がはじまった板前と料亭を題材にした料理・グルメ漫画がある。SMAPの中居正広主演でテレビドラマにもなったから、ご存知の方も多いと思う。
主人公の伊橋が修行に入る東京の料亭「藤村」の花板の熊野信吉は若い頃に京都で修行した一流の板前であり、作中最強キャラ(もちろん料理です)なんやけど、普通にタバコをパカパカ吸っているのである。もちろん、休憩中とかやけどね。
70年代、80年代の国内、国外のドラマや映画を観たら、登場人物がタバコをそれこそのべつ幕なしに吸いまくるのを現代の人は驚き、ドン引きするかもしれない。吸い殻もそのへんにポイ捨てしまくるし。だから昔の話や、で済ましてエエのかどうなのか?。
タバコについては自分も一度も吸ったことないし、正直、グルメを気取るわけではないけど、飯を機嫌よく喰ってる横で、タバコをプカプカされては、
こういいたくなるときもある。
でもあまりストイックになられてこうなられても困るんやけど…
おあとがよろしいようで…(つづく)