「美味しんぼ」再読備忘録2024「包丁の基本」‐第二巻「幻の魚」第5話‐

板前志望のアメリカ人ジェフ君が東西新聞社LA支局長の紹介で日本にやってきた。アメリカの日本料理店で修行したというジェフ君は、日本での板前修行を希望しているらしく、LA支局長に頼まれて谷村部長が修行先を紹介してあげるようだ。栗田さん、山岡も同行している。

気合が入ったジェフ君は柳刃包丁を取り出す。天下の往来で包丁を振り回すな!と慌てて栗田さんが止めに入る。その包丁は1560年(永禄3年)創業の京都の有名な老舗「有次」のものだ。しかし、ジェフ君「包丁一本さらしにまいて」とか歌い出したけど、「月の法善寺横丁」どこで覚えたんやろ?。「有次」とかも教えてもらわな知らんやろしね。

そして一行は「West Coast」というアメリカナイズドされた和食料理店に到着する。この店は、西海岸を中心にアメリカに支店を五店舗展開している、というところからジェフ君の修行先に良いだろうとの谷村部長の判断のようだ。

この店構えや雰囲気に山岡は気に入らないようでブスッとしている。店でカニカマやアボカドを使ったカリフォルニアロールやが提供されているのを、栗田さんは初めて見たようで驚いている。

白人には海苔の黒いのが食べ物に見えないので嫌悪感がある、生魚を食べることにも抵抗がある、などの理由からアメリカの日本料理店で発案されたこのカリフォルニアロールは、1980年代にアメリカ合衆国各地で大流行し、日本にも紹介されつつあった、そんな時代だ。

一同がそのようなアメリカナイズドされた寿司に抵抗があると見た社長はイサキの刺身を提案する。そして花板がアクロバティックな調理法で刺身を調理する。アメリカではこの調理法による演出が大受けなんだそうだ。嫌悪感を隠そうともしない山岡。

社長によるとLAに板前養成の学校を作る計画があるとかで、ジェフ君をその一期生にしようと提案している。かなりの厚遇である。アメリカナイズドされた寿司に抵抗がありそうと感じるとすぐに刺身をオススメするなど、流石アメリカで成功しているだけのことはある臨機応変で柔軟な対応とも思う。この社長は外見はうさんくさそうな悪役顔だが、なかなかの人物だ。

しかしジェフ君は出されたイサキの刺身が美味しくないことを理由にこの店で働きたくないと言い出す。当然揉め事になるが、そうなると山岡の出番でもある。山岡もジェフ君の「美味しくない」に同調する。そして「俺も今の刺身は感心しなかった。それも魚のせいじゃない。ウデのせいだ」と断言する。

これには「West Coast」の社長も花板も怒り出し、当然喧嘩となる。そして例によって例のごとくジェフ君と「West Coast」の花板との調理勝負になる。しかも山岡は対決の題材をただの刺身より難しい「スズキの洗い」で、と指定する。山岡にはなにか思惑がありそうだ。

場面代わって日本橋・箱崎の「鯛ふじ」に来ている。この「鯛ふじ」も実在するお店だったが、現在は閉業しているらしい。先代の板長である大不二さんがこの当時はご顕在で、山岡は大不二さんに例の勝負のためにこのジェフ君に特訓をして欲しいと頼み込んでいる。山岡の恐るべき人脈の発動である。

店主は「山岡さんの頼みなら」と引き受けてくれたようだ。そして鯛の洗いを皆に提供する。ここで大不二さんは氷を柳刃包丁で細かく切り出すという技を披露し、一同を驚かせる。

「洗い」をあまり食べたことないであろうジェフ君や栗田さんに本物をまず味わってもらうことも狙いのようだ。その腕前にジェフ君は「弟子にして欲しい」と頼み込む。

大不二さんはそれには答えず、大根を持って来て「かつらむき」をやってみろという。一週間の修行ではそもそも大したことは出来ない。そして小手先の技術を中途半端に身につけたのではどうしようもない。基本の包丁の使い方をマスターしろということである。それでも一週間で出来るかどうかわからないが、「夜の目もみずにやってみろ」と大不二さんは言う。

その言葉通り一心不乱に寝る暇を惜しんでかつらむきの練習をしているジェフ君。栗田さんは心配しているが山岡はどこ吹く風で知らんぷりしており、やきもきする栗田さん。

そして一週間後、なんとか切れずにしかも一定に薄くかつらむきすることに成功したようだ。その成果を検分してみて納得の様子の大不二さん。さあ対決だ!。

「West Coast」の調理場で並んで花板とジェフ君がまずスズキを捌いているが、そのスピードには大分と差がある。流石に花板は早い。しかし、丁寧にスズキを捌き、刺身を引くジェフ君、さらに大不二さんの必殺技である氷の塊を柳刃包丁でカットする技まで習得しているのには驚いた。

ここちょっと疑問なんよね。魚を捌くのはある程度の経験が必要やけど、そんな経験あったんかな?と。アメリカの日本料理店で修行した時、そんなんやらしてもうてたんかな。それとも自分で勉強しとったんかな?。

それと氷の塊を柳刃包丁でカットするのも大不二さんは「氷の目があり、それを見極める」というてはったけど、包丁の使い方をマスターするのとは別の技術や経験が必要と違うの?。なんで出来るようになるの?。ジェフ君すごすぎない?。こんなん漫画やん。ハイ。漫画です。

さて、肝心の味の方であるが、先に出来ていた花板の「洗い」はどうかというと、栗田さんが「なんだか水っぽい」と納得してない様子であり、一方、ジェフ君の「洗い」はというと、谷村部長が「この舌ざわり、歯ごたえ比較にならないうまさ」と評し、栗田さんも「ほんと、だいいち全然水っぽくない」と大絶賛である。

花板は「仲間同士で褒めやがって」と怒り出すが、社長の様子を見て驚く。社長は「アメリカ人の作った方が旨い。それに比べるとウチの花板の作った方は舌ざわりが悪くてべしょべしょで味が抜けてしまっている」と負けを素直に認める。

そして山岡が両者の違いを「乱暴に刺身を押し切りすると切断面が荒れて舌ざわりや味が悪くなる。柳刃包丁で引くように切ると切断面に乱れがないから劣化が最小限で抑えられる」と解説する。

さらに「ただの刺身でなく切り出して氷水などに漬けておく洗いでは荒れた切断面からエキスが流れ出し、水が入って水っぽくなるので余計にその違いが目立つのだ」と「洗い」を対決の題材にした狙いを明かす。名軍師山岡!。

結果、ジェフ君は望み通り「鯛ふじ」さんに弟子入りすることが出来たようだ。良かった良かった。「筋が良い」と大不二さんは褒めていたがジェフ君、マジでチート級やもんな。

これはこれで凄い技やし、海外でウケるためにはやっぱ演出も必要やし、外国人はそこまで白身魚の味わからんやろしエエと思うけど

「West Coast」さんのやり方なんやけどやっぱ出刃包丁を使ってたけど、柳刃包丁でゆっくり引いてではこの演出は出来へんねやろね。社長と花板は「変な演出はやめて一から出直しや」って言うてはったけど、でもあの柳刃包丁で氷をカットするのもなかなか見栄えするので、そっちを取り入れるんやろか?。

探したけど見つかれへんねんけど、氷の器のくぼみに水を入れて、自分ですすいで洗いを作らせるって後の巻でどっかであったとも思うねんけどそれとか面白いと思うけどな。「West Coast」さん、悪い人らやないから頑張ってほしいよね。

後、カリフォルニアロールはもう現在では流石に一般的に知られてると思うけど、やっぱ一流の寿司屋では出さんよな。回転寿司店とかは海老天とか鶏唐揚とかトンカツとか巻いたの出しているみたいやけど。アボカドの寿司ももう一般的やし。

まあナポリタンとかトマトケチャップを使うのイタリア人から見たら噴飯ものやし、餃子にニンニク入ってたり、餃子と一緒にご飯たべるのも中国人からみたらギョッとされるって、日本も結構やらかしてるので、カリフォルニアロールを「あれは寿司と違う」っていうのもどうかと思うんですけどね。

カレーもナポリタンも洋食も中華料理(ラーメン含む)ももう外国のルーツから離れて、日本料理です!って言い切れると思うし、そしたら逆にカリフォルニアロールも日本の寿司でなく、これが「THE SUSHI」なんです!って言われたらまあしゃあないと思うわ…ってことでつづく。



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