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「美味しんぼ」再読備忘録2024‐2025「辛味の調和」‐第六巻「牛肉の力」第5話‐
東西新聞社の大原社主の元に大学後輩であるベンチャー電子会社社長の佐橋氏が相談に来ているようだ。しかし、「ベンチャー電子会社」ってどういう会社名だ?。
佐橋氏の息子が結婚したい女性を連れてきた。めでたい話のはずが、先方をひどく怒らせてしまったようだ。結婚相手となる生田氏は伊豆の大地主で所用で東京に出てくるというので、ちょうど良いと佐橋氏の父と息子、生田氏の父と娘の四人で、佐橋氏の行きつけの寿司屋で会食することにした。
店に向かうまでは良い雰囲気で和やかだったのだが、会食の最初の方で生田氏が急に怒り出し、席を立ってしまったらしい。生田氏がなぜそんなに立腹してしまったのか、わからないので困ってるらしい。大原社主は「食べ物のことならと栗田さんと山岡が適任だ」と二人を呼んで詳しく話を聞かせた。
栗田さんと山岡と大原社主と佐橋氏はその寿司屋に行って、この前と同じにやってみようと「まず酒と刺し身」を注文した。
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ということで栗田さんと山岡は翌日、伊豆の生田さんの土地を見に行った。
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これはもう大地主ってレベルじゃないと思うが…。戦国大名とかじゃないか?。
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栗田さんの新スキル「オヤジ殺し」が発動し、生ワサビの五年ものの一級品をタダで手に入れるのであった。これこの一袋で四、五千円くらいすると思うぞ。
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お話では、すっかり改心した佐橋氏は生田さん親子を夏子さんの店にもう一度招いて、前回の無作法を詫びて、生田氏もそれを許し、縁談が無事まとまってメデタシメデタシとなる。
いや、一人、一店だけ不幸な人というか店があった。冒頭の寿司屋は会社社長の佐橋氏という太客を失ったわけだな。かわいそうであるが仕方ないのか?。
さて、このワサビを醤油に溶くな、という提言は、これ以降「食通の嗜み」として広く強く信じられた。その影響力の凄さは、この後、そこらのスーパーマーケットでも、生ワサビが店頭に出回るようになったし、鮫皮のおろしも普通に買えるようになったことでもわかると思う。'`ィ(*´ェ`*∩。俺様も買いました。
これを「美味しんぼの呪い」と呼んではるお方の記事をリンク貼っときます。「呪い」か…。たしかになあ。
以前も紹介した「味いちもんめ」でもこの問題は取り上げられているのである。
「将太の寿司」でもワサビの皮はむかなくて良いと取り上げられていた。なにかグルメ漫画揃い踏みといった様相だが、逆に言うと「美味しんぼ」の影響力がこれほど強力であったことの証明なのである。
「味いちもんめ」でも触れられているが、時代小説の大家で、食のエッセイでも有名な池波正太郎も、「刺し身を食べる時にワサビを醤油に溶くな」「蕎麦を食べる時にもツユにワサビを溶かすな」、「唐辛子なんかもツユでなく蕎麦の上に必要な分だけふりかけるのが粋なやり方」「熱い蕎麦に唐辛子をかける場合は湿気ないように自分の掌にまず出してからかける」みたいなことを食のエッセイで書いていた。
自分も小学生高学年くらいの時に、生まれて初めて生ワサビを体験した思い出がある。市場の八百屋のオッチャンに生ワサビをもらって、オッチャンに教わったとおりにおろし金の目の細かいのでゆっくり円を描くようにおろした時のその発色の良さ、香りの鮮烈さ、辛味の強烈さに驚いたものである。
当時は缶の粉ワサビを水で溶いたのが一般的だったと思うが、あ、そうそう。これこれ。
若い人は逆にこの缶を知らないかもね。
今は、粉ワサビを溶いたのは生ワサビと違って、これはこれで良さがあるというか、自分は今は「味いちもんめ」のワサビ醤油というソースとしてとらえるか、醤油と薬味のワサビととらえるか、というのがしっくりきますかね。(つづく)