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「美味しんぼ」再読備忘録2024「和菓子の創意」‐第三巻「炭火の魔力」第2話‐

重要な登場人物の一人である唐山陶人先生の登場回になります。そして山岡が一張羅の黒いスーツ姿でなく、セーターを着込んでいます。ちょっと肌寒くなってきているようです。季節感の演出としては地味ですが…。

お昼休みランチタイムに何処かで外食していた東西新聞文化部の田端さん、花村さん、栗田さん、山岡の一行は帰り道に新しく和菓子屋が出来ているのを見つける。花村さんの食後のデザートとして寄って行こうとの提案に賛同する栗田さん。

しかし、山岡って同僚の男性とお昼を食べに行ってる描写がほぼ皆無なのだが、精々、富井副部長か、第十九巻の第6話「仏の足」でトンカツをたかられたくらいだよね?。当時の男としてそれで大丈夫なのか?と言いたいが、飯にはうるさいのに金ないからなあ。敬遠されてるのかもしれんな。

その和菓子屋「春野」に入店し、今で云うイートインをお願いする。店主は二十七歳、その妻は二十四歳と非常に若い夫婦二人で切り盛りしているようだ。店主は京都の和菓子屋で四年修行し、両親の遺残を処分して店を出したらしい。

四年修行しただけで独立を認められるって凄くないか?。そして山岡にすぐに認められるほど、本物の材料を使っており、腕も良いようだ。さらにその菓子は、山岡がこの値段で売って儲けが出ているのか?と心配するほど安く提供している。「お菓子好きの人に日常的に使ってもらえるお店にしたい。今は貯えを食いつぶしている毎日です。背水の陣ですよ。」と店主。

栗田さんはその店主の志に感じ入り、「なんとかしてあげて」と山岡に頼み込む。山岡も店主を気に入ったようで素直になんとかしてやろうとの気持ちになったようだ。山岡の謎に広い人脈パワーを発動させることとなる。

山岡のパワーが炸裂し、あの海原雄山の師匠であり、山岡も子供の頃から世話になっている陶芸家の唐山陶人先生に声をかけ、下鴨流茶道家元の執事である岸川氏を「春野」に連れてきてもらった。

しかし、店主春野の才能を認めつつも、岸川氏は「新しい菓子を作り出してから出直してこい」と門前払いする。美味しい菓子を作るだけでは駄目なのだ。新しい味、新しい菓子を創造しないと使ってもらえないのだ。名門の茶道の茶事に使ってもらえるようになる、出入りの菓子屋になるのは本当に厳しい世界なのだった。

果たしてそんな簡単に新しい味、新しい菓子が作れるわけもない。営業を休んでまで取り組んで、試行錯誤の上、通りすがりのオッサンのふとした発言からヒントを得た山岡のひらめきで、新しい菓子を作り出すことに成功し、下鴨流茶道家元にも認められ、出入りを許されたのであった。メデタシメデタシ。

栗田さんもただ美味しいとかなにかひと味…とかでなく、ここまで雄弁に詳細に表現できるようになっているのだ

結果、下鴨流茶道に認められ、知名度が上がり、お店も大繁盛である。認められたからと言って、高級路線に走らず「お菓子が贈りものやお使いものにならずお菓子好きな人がいつでも買える、そんな店にしたい」という、店主にはその気持ち、初心をいつまでも忘れずに居て欲しいものである。

また、その新しい菓子「暖雪」は「究極のメニュー」のデザートに採用しても良いと山岡が認める素晴らしさでもあった。しかし、そのために奈良県吉野まで最上質の吉野葛を求めて行き、出来た菓子を持って京都まで出向いた。どこまでが東西新聞社の経費の範疇なんだろうと考える俺様は、この店主の爪の垢でも煎じて飲まねばなるまいな…。(つづく。)


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