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「美味しんぼ」再読備忘録2024「活きた魚」‐第二巻「幻の魚」第2話‐

軽井沢の別荘地に文化部の谷村部長、栗田さん、山岡がやってきた。日本最大の電機メーカー「大日エレクトロン」の黒田社長がゲストハウスを建てた、そのお披露目会に招待されたようだ。

まさにバブル時代という感じである。ところで栗田さんのお兄さんが確か「大日電機」にお勤めだったが、今回の「大日エレクトロン」とつながりはあるのだろうか?。

第一巻第9話「舌の記憶」での初登場時のコマ

この黒田社長は食通で有名とのこと。今回のお披露目会は黒田社長自らがその腕前を披露して、招待客に料理を振る舞うという趣向らしい。それで味のわかる「究極のメニュー」担当者が招待されたのかも知れない。

このように各界の著名人を集めてお披露目会を三ヶ月間開催する、らしい。そしてその都度、「大日エレクトロン」の優秀な社員とその家族を招待すると黒田社長から説明がある。自分がその社員で、この場に招待されてたら緊張でメシが喉を通らない…いや、そんな優秀な人間じゃないからそ心配は要らないな(クソッ)。

そして黒田社長が出てきて、招待客に挨拶する。「食道楽が昂じて自分で料理するのが楽しみになってきた。皆様に私の料理を振る舞いますのでどうぞ召し上がってください」と調理がはじまる。

電機メーカーらしい巨大水槽がせり上がってくる仕掛け、調理場が回転し、招待客にもれなく調理の様子が見られるようになっている仕掛けなどに招待客は大喜びである。

まず、大島沖で取れたシマアジの特上物を目の前で黒田社長がさばいてみせて、お造りを出すようだ。この後の第二巻第7話「幻の魚」でこういう場面がある。

この頃のマグロは「大間」やのうて「宮古」なんやね。

雄山が刺し身にして美味い魚のベスト5に挙げる、そのなかに「大島のシマアジ」が入っていることに注目して欲しい。「食通」で有名な黒田社長もそこはハズしていない。これは素直に評価されるべきであろう。

しかも特上物ですよ。奥さん。

そのシマアジの刺し身が出来上がり、皆に配膳される。谷村部長や栗田さん、山岡も黒田社長の魚のさばき方や盛り付けなどには文句がなかったようであるから、黒田社長の腕前は噂通りに板前はだしのようだ。

しかし、肝心の味のほうが、どうしたことかパッとしない。食べた栗田さんも新鮮なのは認めるが何かが…と不満があり、谷村部長も(ふむ…)と同様の様子。山岡も認めていないようだ。

一方、招待客らはその新鮮さに大絶賛である。招待客らの大絶賛を聞き、得意満面の黒田社長。そして例の優良社員の家族の男の子に感想を聞くと「美味しくなかった」とズバリ。ヒィィィと凍りつく優良社員の両親。

さらに男の子は「三崎のおばあちゃん家に遊びに行くとシマアジをよく食べさせてくれるから味はわかる。」と子供だからと馬鹿にすんなと反論する。両親はもう生きた心地がしなかったであろう。

ところで「美味しんぼ」のアニメ版がなかなかに良いという話をしたと思いますけど、この「活きた魚」の回もこの原作をうまく膨らませて作ってあるのです。

例えば、このシマアジは一年中獲れるが、今が旬の時期であること、刺し身にするのにちょうど良い大きさ、個体をわざわざ選んで持ってきていることなど、黒田社長の口から説明させ、招待客がその知識と魚の目利きに感心する場面などを挿入しているのである。

アニメ版ではさきほどの「三崎のおばあちゃん家」が「沼津のおばあちゃん家」になっていた。「三崎」より「沼津」の方が場所がイメージしやすいという配慮であろうか。

そして子供に折角のシマアジをバカにされ激昂する黒田社長。平謝りの父親。この場面、アニメ版では土下座する両親、そして黒田社長がこの父親の所属を確認する場面が追加されている。ヒィィィ。

ここで我らが山岡が「その男の子の言う通りですよ。このシマアジはちっともうまくない」と助け舟を出す。

さらに例によって例のごとく「これよりうまいシマアジを持ってくる」と続けて、はからずも料理対決となるねんけど、ちょっとエエですか?。漫画では、その三崎の漁港に出向き、シマアジを仕入れる山岡と栗田さんの場面に切り替わるのですが、この場面転換はどういうことなんだろう。

その足で軽井沢から三崎に移動し、魚を仕入れて、東西新聞社に戻って翌日出直す、というのはないだろうから、軽井沢から三崎までのどこかで宿泊し、そして朝一番で漁からあがったばかりのシマアジを仕入れて、軽井沢に戻ったということなのかな?。

確か社用車で来ていたのだ。運転手はどうなったんだ?。返したのか?と思ったが、アニメ版では社用車とハッキリ出てたけど、原作はタクシーなのか、社用車なのか、まではわからないな。うーむ。

このあたりの距離感、時間感覚について、関西出身の自分には関東方面に馴染みがないのでよくつかめないのですいません。いやまた経費がかかったんだろうな…という話がしたかっただけです。

そして料理対決は当然山岡が勝つ。黒田社長のシマアジは、見た目は「新鮮」に見えるが、水槽に入れて餌もやらずに一週間近く放置している、ストレスを感じ身が痩せ細っておる、実は「新鮮」とは程遠い状態であること、一方山岡のシマアジは死んでいるが、活け締めし、血抜きして氷など入れて適切に保管していると「新鮮さ」が保てるのだ、と説明がある。

黒田社長も負けを認め、あの家族に謝罪する。めでたしめでたしである。しかし、直接、家に出向いて社長が男の子に謝ってディズニーランドの招待券を渡したって、その間また子どもが要らんこと言わんへんか…と両親は気が気じゃないよな。この父親が出世街道から外されていないことを祈りたいです。

さて、現代では熟成肉もブームであり、よく知られていると思う。さらに魚も熟成を売りにした料理店なども出てきている。それでも目の前で生け簀から出した魚の活け造りは今でももてはやされているようだ。自分もこうやって出されたら、この時の招待客らのように、やっぱさっきまで生きてたのをその場で捌いたんだから、間違いない!新鮮でうまい!最高!と言ってしまうんだろうなと思う。日本人だもの(違。

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