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もう間違えない『◯◯にいたる病』解説

普段小説を読まない人の実に9割が『死に至る病』『死刑にいたる病』『殺戮にいたる病』の違いを理解していないという。

というのは嘘で別にそんな統計はない。


死に至る病

デンマークの哲学者セーレン・キルケゴールの著書。1849年出版。
後述する2作品のタイトルの元ネタと思われる。
超ざっくり説明すると、死に至る病とは「絶望」であるらしい。(ここでの絶望の定義は大分複雑でありキリスト教的世界観に基づくものなのでこの説明はあまり参考にならない)


死刑にいたる病

櫛木理宇による長編小説。2015年に初めて出版された時は『チェインドッグ』というタイトルだったが、2017年の文庫版発売に伴い改題したもの。その為、本作はキルケゴールとはほぼ関係がない。
実写映画化されている。映画版にはキルケゴールについての講義のカットが挿入され、タイトルの元ネタ要素を微妙に回収している。

死刑囚から依頼され、事件を再検証していく話。単なる調査だと思ったそれは次第に主人公の出自に絡み始め、彼の精神を侵食していく。


殺戮にいたる病

我孫子武丸による小説。1992年出版。

永遠の愛を追求する殺人鬼とその家族、それを追う刑事の視点でそれぞれ物語が展開され、クライマックスに収束する。
映画版はない。作中の重大なネタバレになるので詳細は伏せるが、映像化するのはほぼ不可能だと思われる。『Another』の実写版みたくトリックをぶん投げてホラーに特化すれば出来なくはなさそうだけどそれが面白いかと言うと……

冒頭にキルケゴールの引用が挿入されている。本編はあまり関係ない気がした。


まとめ

死に至る病:キルケゴールの哲学書。

死刑にいたる病:櫛木理宇の小説。映画版あり。

殺戮にいたる病:我孫子武丸の小説。映像化作品なし。


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