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藤子不二雄Ⓐ『トキワ荘青春日記+まんが道』を読む

こんにちは、にじまるです。

藤子不二雄Ⓐ先生の『トキワ荘青春日記+まんが道』を読みました。

この書籍は、藤子不二雄Ⓐ先生が綴ったトキワ荘時代の日記をベースに、Ⓐ先生を中心として当時の漫画家仲間との青春時代の日々を回想したノンフィクションです。

本書は、藤子不二雄Ⓐ先生の自伝的作品『まんが道』『愛…しりそめし頃に…』の挿絵が随所に使用されているのが特徴で、Ⓐ先生のトキワ荘時代の生活をより深く楽しむことができます。


『トキワ荘青春日記+まんが道』とは

『トキワ荘青春日記』(光文社)は、1981年と1996年の二度刊行され、長らく絶版となっており入手困難でしたが、2022年に『トキワ荘青春日記+まんが道』として新装復刊されました。
※2016年に復刊ドットコムより『トキワ荘青春日記 1954‐60』として新装復刊されています。

本書は、昭和29年(1954)から35年(1960)のトキワ荘での日々を、藤子不二雄Ⓐ先生の綴った日記をベースに綴ったノンフィクションで、藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二雄、手塚治虫、寺田ヒロオ、石ノ森章太郎、赤塚不二夫、つのだじろう、鈴木伸一、森安なおや、といった錚々たる漫画家と過ごしたトキワ荘での青春の日々が綴られています。

巻頭には、藤子不二雄Ⓐ先生の事実上の遺作となるラフ画が掲載されています。

『まんが道』との比較が楽しい

『トキワ荘青春日記+まんが道』は、藤子不二雄Ⓐ先生の自伝的マンガ『まんが道』のベースにもなっており、両方を比較して読むと面白いです。

例えば『まんが道』の中で有名なエピソード、昭和30年(1955)8月に連載をたくさん抱えて富山に帰省したが、結果的にほとんどが締め切りに間に合わず、しばらく干されたという部分ですが、『トキワ荘青春日記+まんが道』では「正月に帰省」となっています。

『まんが道』では原稿をほとんど落としてしまい、電報がパタリと来なくなった悲壮感漂う場面ですが、本書では意外とのんびりした雰囲気で書かれており、『まんが道』ほどの悲壮感は感じられません。

『まんが道』については以前の記事で詳しく書いています。

詳細なに記述された日記がすごい

『トキワ荘青春日記+まんが道』は藤子不二雄Ⓐ先生の日記で構成されていますが、その日記の内容が実に詳細に記載されていることに驚きました。

本書の中から、昭和30年(1955)1月に富山に帰省した際の場面です。

一月一日(土)
昨夜遅かったので、起床九時過ぎ。
朝食は餅なり。母上、昼ごろご出勤。
午後より賀状を書く。
母上、六時ごろ帰る。シュークリームのおみやげ。
晩飯のあと年賀状の続きを書く。

『トキワ荘青春日記+まんが道』(光文社)34頁より抜粋

この日の日記を読むかぎりでは、原稿をたくさん抱えて帰省している危機感は感じられず、純粋にお正月を満喫しているⒶ先生が想像できます。

このように本書では、Ⓐ先生の詳細な日記が淡々と綴られており、時折『まんが道』の挿絵が良いアクセントとなり、夢中で読んでしまいます。

ノスタルジーが感じられる日記

Ⓐ先生が二十二歳の誕生日である三月十日(土)の日記。

ふと、きょうオレの誕生日だったと気づいて寺さんに言ったら、
「それじゃあ、お祝いしよう」とコロッケ、さけ缶買ってきてくれる。
藤本氏、風ちゃん呼んできて四人で大宴会。三人はチューダー、藤本氏はサイダーだけ。
騒ぎすぎて、また下からほうきの柄でドンドンと天井を突きあげられたのでお開き。

『トキワ荘青春日記+まんが道』(光文社)117頁より抜粋

Ⓐ先生の誕生日に「お祝いしよう」と言ってくれた寺さんの優しさ、そして宴会に参加してくれた藤本先生と、風ちゃん(鈴木伸一先生)のフットワークの軽さが素晴らしいです。

当時の宴会の楽しげな様子が目に浮かんでくるような、ノスタルジーを感じさせる日記です。

【まとめ】

藤子不二雄Ⓐ先生の日記はとにかく詳細に記載されているため、当時の映像が目に浮かび、さらに『まんが道』の挿絵が想像力をかき立ててくれるので、読み応えもあり、当時のトキワ荘にタイムスリップしたような感覚になります。

また本書には、当時の物価や映画、本なども詳細に記載されており、資料的な価値もあります。

あらゆる年代のマンガファンにおすすめできるノンフィクション本です。


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