戦場のフーガ

戦場のフーガ

ゲームをプレイしていて選択肢に困ってパニックに陥るという体験を久々にした。

きっかけは何気なくダウンロードした体験版だ。ケモノ人間の村、焼き払われる街、忘れ去られた謎の兵器、戦わなければ生き残れない子供達、登場人物がケモノ人間でありナーロッパ設定である事を除けば、初代ガンダムと同じ始まり方と言っていいだろう。追ってくる帝国兵、そしていきなりのボス戦、所謂負けイベントなのだが、子供達は生き残るために訳もわからず、一人の子の命を犠牲にし、大砲に込めてソウルキャノンを放つ。ソウルキャノンに選ばれた子は命を失う。死ぬ。二度と帰ってこない。それを体験版の、チュートリアルを開始して10分も経たないプレイヤーに、私に選ばせる、そこに度肝を抜かれた。完全に体験版だと思って油断していた。この先失われる一人の子の命を選ばなければいけなくなった瞬間、テレビゲームで久々に選択肢に迷って混乱する、という状況に陥った。だって、この6人のキャラクターのことを私は何も知らない。小さい子供なのに訳もわからず戦場に放り込まれて、そんな中からいきなり一人犠牲になる者を選べ、なんてなんて無茶だ!私は結局、メイという一番小さい子を選んだ。後々主人公の妹だと知ったが、何も知らずキャノンポッドに収容されて無邪気に安心しているシーンを見て、心臓が罪悪感でギュッとなった。そしてソウルキャノンが打ち出され一掃される敵、失われて二度と帰ってこない仲間の命、絶望に打ちのめされる残された5人、とんでもない事をしてしまったという罪悪感、救われなかった命と未来、これが体験版の開始10分で起こった。

仲間の命を捧げる、というゲームはいくつかある。女神転生の悪魔合体、ヴァルキリープロファイルのエインフェリア、だがコレは事前に仲間と時間を過ごし育て、それがどれくらい強いか知っていて、それを捧げるか否か、有利か不利かをプレイヤーが選択できるからゲーム内のジレンマとして成立する。

なのに!開始10分で!何も知らない子供達の中の一人を犠牲にしろなんて心の準備ができていなさすぎる。結局、子供達の中でも一番年端の行かない戦力にならなそうな子を選んだのだが、自分のその情報がない中でも「選ぶ」という残酷さを突きつけられて、辛
い気持ちになってしまった。

と、同時になんとしてもこの子達を生き延びさせてあげたい、と強く思った。

気づいたら本編を購入していた。彼らが巻き込まれてしまったこの戦争から無事に生還できるようにベストを尽くしたい。

あと、これはもう辛いのだが、仲間がいなくなった時のストーリー分岐、会話の分岐も用意されているとのことなので、全員無事に故郷に帰した後に、気持ちに余裕がある時に、製作者に敬意を払う意味で、全員ソウルキャノンで弾にする、ということもやってみようかと心のドス黒い部分が囁いている。

なんてゲームだ。久々にすごいゲームに出会ってしまった。

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