姉じゃの面影



姉じゃ…


姉じゃ………



どこさ行く。
おらを置いて、どこさ行く。



行かねでけろ。



おら、まだうまく魚もとれね。
ぐみも、熟れてねー、すっぺぇのばっかりとってしまう。


おら、まだひとりじゃ、こえー。




行かねでけろ。

おねげぇだ、姉じゃ………


***


ここで目が覚めた。

かたっぽの手が、天井に向かってのびてた。
姉じゃの面影が、そこに映ってた。


身を起こすと、皿がやけに重く感じて。
水を取り替えようと、沢に下りた。



何気なく、取り替える前に、皿の水を舐めてみた。


………しょっぱ………

泣いてたんか? おら………



情けねぇ。
こんなんじゃ、姉じゃにまた心配かけちまう。


もう、おらはこわっぱじゃねぇんだ。
ひとりでも食っていけるんだ。

もう、姉じゃにばっかり頼るわけにいかねぇんだ。




強くなれ。


泣くな。



今日は、姉じゃの祝言。
もう少しこの沢を下ったら、あの花があるはずだ。

花と一緒に、魚もめいっぱいとって、持っていってやる。




おらは、大丈夫だ。


しあわせになれ、姉じゃ。



この時のこわっぱが、少しだけオトナになったものがたり。




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