故人の事情に勝手に踏み込むこと

私は、発達障害です。だから不幸だと言うつもりもない。同情してくれと言いたいのではありません。
ですが、苦労したのは事実だと思っています。

｢わかりますよ｣などと言ってくれるな。そう簡単にわかるものかよ。聞いただけでわかると思うなら、それはただの傲慢です。

もし、仮に、私が急に自らの命を絶ったらどうなるだろうと考えた。Twitterのフォロワーさんはそれなりの数がいるので、亡くなったということが知れたら、こんな私の死を悲しんでくれる人がいるかもしれない。

でも、こんなことを言う人がいるかもしれない。｢雪乃さんは発達障害だったので、大変だったんですよ｣と想像でいろいろ言う人がいるかもしれない。仮に私が命を絶った原因が発達障害に関係なかったとしても、そういうことを考える人がいるかもしれない。そして｢発達障害の人はこういうことで悩んでるんですよ～｣と語り出す人がいるかもしれない。聞き齧った発達障害の知識しかないとしても。

仮にの話だが、そんなことを好き勝手言われていると死後の私が知ったら｢知りもしないクセに何を偉そうに｣と思うだろう。善人ぶって、私のことや発達障害のことを知った風にされたらたまったものじゃない。

もし私ではなく私の身内がそれをされたらどうだろうか？嫌悪感を抑えきれないだろう。発達障害当事者としても、死という思い話に、さして関わりのない人間の勝手な想像のネタに発達障害が使われたらたまったものではない。

先日、若い有名人が自ら命を絶った。彼はセクシャルマイノリティとしてのアイディンティティがあるとのことだった。(私はLGBTという言葉を使うことに抵抗があるので、以後敢えてセクシャルマイノリティと呼称する)。

彼の死は確かにセクシャルマイノリティが故の苦悩によるものだったのかもしれない。だが、そうでないかもしれない。
彼は有名人であったが故に、その死に関する意見がSNS上で多数見られた。死の詳細はメディアから伏せられていたにも関わらず、だ。

ここで平然と彼がセクシャルマイノリティであったことから想像を勝手に膨らませ、セクシャルマイノリティに関する知識の乏しいまま、自分が思った話をして悦に入り、彼やセクシャルマイノリティに寄り添っているかのように振る舞う連中には違和感しかない。

先に述べた｢もし発達障害の私が急に自らの命を絶ったら｣という想像を重ねてしまう。そうするとより一層の嫌悪感を覚えずにはいられないのだ。

なぜ、故人のセクシャルというデリケートな部分に簡単に踏み込んでしまうのか？
故人を失った遺族に想いが至らないのか？
乏しい知識でセクシャルマイノリティを語って、他の当事者達に寄り添えるとでも思っているのだろうか？

結局、何も、誰に対しても、想像力が働いていないではないか。

亡くなった有名人はセクシャルマイノリティであることが世間に知られていたが、セクシャルマイノリティであることだけが彼の全てではなかろう。結局、彼のことさえ見ようとしていないのではないか、そう思わずにはいられない一件であった。