最後の枝 - the last branch of the family tree

(親愛なるエミリー ディキンソン、貴方に会ったことは無いけれど、言葉を少し借りました。ありがとう。)


最後の枝は

つらいよ。


葉がぐんぐんと

陽に向かって伸びて

青々と

はつらつとした

葉が重なり合って

その陰は

ひと時の安らぎをもたらす


笑い声が聞こえる

たくさんの枝に

花が咲いている

ほのかに香る甘いにおい

分かち合う喜び

結ばれて

夢を見て

甘い

甘い時


気がつけば

枝は大きく

広がり

支え合って

新しさを

迎え入れる


実がなっている

たわわに

今にもこぼれ落ちそうに

その豊かさに

感謝が溢れる

涙が溢れる


そして

枝はまた

伸びてゆく

その終わりまで。


やがて

いつの日か

その時はやってくる


その枝に

「もう伸びなくていいんだよ」

と声がかかる


戸惑う


だって、

どう生きたらいいの?

終わりって何?

全てがわからない


はっきりしていることは

枝は伸びてゆかない 

葉は木陰には足りない

花は咲かない

よって、実は成らない


豊かさは何処へ?

分かち合いは?

支え合いは?

笑い声はどこ?


最後の枝は

つらいよ。

無いんだ。


輝きと呼ばれるような

キラキラとした

高揚した

胸躍るような

特別な

何か

大きく

膨らんでゆく

夢のような

何か

初めから

無いんだ。


それらが無いって事だけかあるんだ。


それは
つらいよ。


けれどある時、

その墓場の静けさが

最後の枝に

もたらされた

唯一の

だと気づく。


そこになる実は

関係性とは無縁の

本当の自由。


解き放たれて

失うものが無くて

行くところも無くて

ただそれそのものでいい。


最後の枝は

その全てをかけて

を響かせる。


墓場に

永遠の

安らぎを!

こころからの自由を!


最後の枝が、

その辛さが、

愛そのものだ!


それが、
最後の枝への

最後のおくりもの。

最後の枝だけに

それは微笑むよ。


生き抜いた

という

実感

完全な愛のかたち。


おめでとう。

そして、ありがとう。





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