余白の詩

空っぽのスクリーンに

何が映っていますか?


陽の光

四季の移ろい

肌寒さ

金木犀の香り

ゆっくりと歩く

長かった暑い夏にさようなら

冬の気配

走っている息づかい

落ち葉を踏む音

虫たちの生き様

何を着て出掛けようかな?

植物の植え替え

小さな小さな葉が出てきた

心温まる

喜び

生きていること

鼓動

喉が渇く

手に潤いを

鳥のさえずりが聞こえる

目にぼんやりと
そのすべてが映る

携帯電話の画面

真っ白なスクリーンに

連なる文字

それは何処からともなく現れて

詩(うた)になって

何の意味も無く

目的も無く

ただそれそのもので

いつか消えてゆく


いのちとは

日常の

ありとあらゆる

現れ

生も死も

何もかもが

分け隔て無く

価値も無く

ただそれそのもので在る


あぁ、何という安らぎか!



余白


そこに映るのは


無限の可能性


それは豊かさ


分け隔て無く


自由に


いかようにも


いかようにも


常に湧き出す


新しさ


胸に突き刺さるような言葉も


離れてゆく切なさも


取り残された寂しさも


絶望と


孤独と


どうしようも無い


行き場の無い


もう終わりだ、という想いが


空っぽに


響く


たくさんの大切なものたちの残骸


信じていたものの無意味さ


人生という夢


わたしという幻の主人公


記憶のかけらが


ありとあらゆる感情を


この身体に


縦横無尽に


走らせる


その全てが叶っている。


満ち足りている。


現れて、消えてゆく


儚い


日常。


陽の光の


まぶしさに


目を閉じたときのように。



空っぽのスクリーンに

何が映っていますか?


余白の詩。


切望した答え。


それが、これだよ。


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