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血液浄化療法の歴史

医学体系における血液浄化療法

透析の歴史から問われるため飛ばしておきたい範囲ですが、透析技術認定試験の前半でいくつか出題されます。また、透析の現状については基本的なことであり選択問題の選択肢に頻出されます。おさえましょう。透析の歴史について、テキストでは多くの学者名が出てきますが出題されるのは下記の4名くらいではないでしょうか。

1945年 コルフ

回転ドラム式人工腎臓装置ではじめて腎不全の救命に成功。人口腎臓の父と呼ばれるオランダ人のコルフは第二次世界大戦終戦の年、初めて急性腎不全の患者の救命に成功しました。オレンジジュースのドラム缶に透析液をため、セロファンを介して透析を行いました。回転ドラム式人工腎臓装置は透析学会で展示されてたりします。

1960年 キール

キールが平板型(キール式)人工腎臓を製作。プラスティックの板にセロファンを挟みセロファン間を血液が循環するものです。現在でもつかわれる積層型ダイアライザーの原型であり、人工腎臓が大量生産可能となりました。開発当時はキャスターの付いたテーブルのような形状でした。

1960年 スクリブナー

スクリブナーの外シャント発明。外シャントとは硬質のテフロン管を動脈と静脈に接続し、体外でバイパスするものです。これにより、慢性腎不全の患者の救命も可能となります。スクリブナーは1962年設立の世界初の外来透析センターを提唱しました。患者の選択や治療の中止など、論理的な問題も起こります。

1966年 チミノ

チミノの内シャント発明。外シャントはすぐに閉塞する、大量出血、感染などの欠点がありましたが内シャントは体内で動脈と静脈をバイパスするものです。現在でも用いられる内シャントは当時、外傷に用いられた技術を応用したものでした。長期の透析が可能となります。

1966年 中空糸ダイアライザーの開発

特に年代は出題されませんがチミノの内シャントと同時期に中空糸ダイアライザーが応用されています。

1970年 日本の慢性透析患者数 約1000人

1974年 旭化成がセルロース系膜製品化

1978年 バクスターが腹膜透析を実用化

1980年 日本の慢性透析患者数 約36000人

この年、第一回透析技術認定士試験が行われています。

1985年 手根管症候群の原因物質

手根管症候群の原因物質であるアミロイド蛋白がβ2ミクログロブリンであると報告されました。長期透析による合併症の予防目的でハイパフォーマンス膜、透析濾過法がはじまります。どのような歴史を踏まえて今のスタンダードな透析があるのかが重要なのでしょう。このほか、血液浄化療法の歴史の項目では透析液の清浄化、無酢酸クエン酸含有透析液について、血液浄化療法の適応疾患の拡大についても触れられています。

1988年 臨床工学技士資格法制化

透析技術認定士から8年後、臨床工学技士という国家資格の誕生です。

1990年 日本の慢性透析患者数 約10万人

2021年 日本の慢性透析患者数 約35万人

血液浄化療法の現況

透析の現状の出題ポイントをまとめます。透析患者は2021年、35万人であり人口350人に1人である。これは人口当たりで台湾に次ぎ世界第二位。年間3.5万人が新たに導入、年間2.5万人の透析患者が死亡し、差し引き年間1万人の増加で推移してきましたがコロナの影響で死亡者は増えています。団塊の世代の減少とともに、35万人で頭打ちとなり、減少傾向となるとみられていますが第二次ベビーブームの世代に糖尿病が増えており、透析導入はもうしばらく増え続けるかもしれません。治療形態はHDとHDFが半々。腹膜透析は3%です。導入の平均年齢は70才。透析導入患者の高齢化が進行中です。4人に1人以上がが10年以上にわたって透析治療を受けています。導入原疾患上位3位は糖尿病(DM)40%↑↑、慢性腎不全(CRF)25%↓、腎硬化症13%↑。DMの増加、CRFの減少と考えがちですがCRFによるHD導入が減っているということではありません。CRFは例年ほぼ一定数なのですが糖尿病による導入が激増しているためCRFの割合が下がっているのです。DMの透析患者の年間死亡率は20%、失明、四肢のアンプタ等、糖尿病の合併症に加え、透析困難症というシビアな問題を抱えています。糖尿の場合、他の原疾患と異なり、若年でも死亡率は高率です。CRFは腎臓の病気ですが糖尿病は腎臓だけの問題ではありません。腎硬化症は高血圧を放置した人というイメージがありますがこれは高齢者の透析導入が増えていることを示します。透析患者の年間死亡率は9%であり上位5位は心不全、感染症、癌、脳血管疾患、心筋梗塞。注目しなければならないのは30%を占める血管疾患です。25才~35才の透析患者の血管疾患による死亡率は一般人85才の血管疾患による死亡率と同じです。透析患者の寿命は短く、余命は同年齢の一般人の半分、DMにいたっては4分の1です。統計的に腎移植は透析導入によって失われた余命の半分を取り戻します。透析医療費は1.5兆円、患者一人当たり約500万円/年、総人口の0.25%の透析患者のために医療費総額の4%が費やされています。高い死亡率、低いQOL、多くの合併症、普及しない腎臓移植、厳しい社会環境に透析患者は置かれています。

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