見出し画像

国連女性差別撤廃委員会への拠出金停止と日本の国際的信頼


はじめに

日本政府は、国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)が皇室典範の男系男子のみの皇位継承制度を差別的であると指摘し、改正を勧告したことに対し、同委員会への拠出金を停止する措置を講じた。この対応は、国際社会における日本の立場や国際協調の精神に照らして適切であったのか、本稿では検討する。

CEDAWの勧告と日本政府の対応

CEDAWは、女性に対するあらゆる形態の差別撤廃を目的とした国際条約に基づき、締約国の国内法や制度を監視し、必要に応じて勧告を行う機関である。今回、日本の皇室典範における男系男子のみの皇位継承を差別的であると指摘し、制度の見直しを求める勧告を出した。

これに対し、日本政府は「皇位継承は日本固有の伝統に基づくものであり、基本的人権の問題とは異なる」と主張し、勧告を受け入れるどころか、CEDAWへの拠出金を停止するという対抗措置を講じた。この対応は、日本政府の外交姿勢として極めて異例であり、国際社会に対する強硬なメッセージと受け取られかねない。

皇室維持のために国民が被る不利益

日本政府のこの対応は、皇室の古い体質を守ることを優先し、全日本国民に不利益をもたらしている点で極めて問題がある。皇位継承問題は必ずしも日本社会全体の未来に関わるものではなく、特定の伝統を守るために国民全体の国際的信用や経済的関係を危うくするのは、本末転倒である。国際的な批判に対して対話ではなく拠出金停止という強硬措置を取ることは、日本の立場を一層孤立させる危険性を孕んでいる。

条約締結時の判断の誤り

さらに、日本政府はCEDAWを批准する際、皇室典範を特例として除外することが可能であったにもかかわらず、それを怠った。この判断の浅はかさが、今回の国際的な批判と対応の不一致を生み出している。もし当時の政府が十分な検討を行い、皇室制度を条約の適用外とする措置を取っていれば、現在のような混乱は回避できたかもしれない。政府の安易な判断ミスを棚上げにし、国際的な対話を拒否することは、外交的にも大きな失策である。

日本の進むべき道

日本政府は、CEDAWの勧告をそのまま受け入れる必要はないが、少なくとも誠実に議論し、国際社会と対話を続ける姿勢を示すべきである。皇位継承制度に関する問題は、歴史や伝統に根ざした複雑な課題であるが、国際社会の価値観とも調和しうる形で改革を模索することが望ましい。

また、仮に現行制度を維持する場合でも、その合理性を国際社会に理解してもらうための努力を怠るべきではない。日本の立場を適切に説明しつつ、女性の権利向上に向けた具体的な取り組みを示すことで、国際的な信頼回復を図るべきである。

おわりに

国際社会との協調は、日本の外交において不可欠な要素である。今回の日本政府の対応は、拠出金の停止という短絡的な手段によって、国際的な信頼を損なう可能性が高い。日本は国連機関との対話を重視し、国内外の意見を踏まえた上で、建設的な解決策を模索することが求められる。

いいなと思ったら応援しよう!