和訳:"The Whitsun Weddings" by Philip Larkin
note初投稿です。指摘や感想や議論などウェルカムです。コメントしていただけるとものすごく喜びます。失礼ながら返信もさせて頂こうかと思います。
こちらの想定する読者は、時間がクッソ余っている人。またはこの詩を読んだことがある人向けです。とにかく長いので・・・。
noteに投稿した動機としては、➊Google検索してみても、Philip Larkinの詩を翻訳しているサイトは非常に少なく、➋また数少ない翻訳の中でも、自分の解釈を和訳に反映しすぎていたり、そもそもちゃんと構文や英単語の意味をとれていないようなものがケッコーあったりと、詩の美しさを伝えきれていないと感じたからです。実の所は自慢したいというのが本音です。
じゃ、さっそく和訳を。あ、知らない人のために軽く紹介すると、”The Whitsun Weddings” はLarkinが書いた詩で、➊~➑段落で構成されています。Larkinの「結婚」に関する人生観が反映されている作品だということ”らしい”です。ストーリーは読めばわかります(ちゃんとわかるとは言っていない。まぁ詩なのでむずい部分もある)。解釈に関しては十人十色多種多様だと思いますし、前評判なぞ無視して、自分が素直に感じたことを大切にして頂ければ幸いです。
和訳 "The Whitsun Weddings"
➊That Whitsun, I was late getting away:
Not till about
One-twenty on the sunlit Saturday
Did my three-quarters-empty train pull out,
All windows down, all cushions hot, all sense
Of being in a hurry gone. We ran
Behind the backs of houses, crossed a street
Of blinding windscreens, smelt the fish-dock; thence
The river’s level drifting breadth began,
Where sky and Lincolnshire and water meet.
あのWhitsun(精霊降臨祭・5月後半)の日、私は遅れて逃げ出した。1:20、太陽光できらきらした土曜日になってはじめて、4分の3が空席となっている電車は乗客を乗せて出発した。すべての窓は閉まり、座席のクッションはみな熱を持ち、急ごうという気持ちが全部どこかに消えてしまっていた。家の裏手を走り抜けた。ある通りを通過すると車のフロントガラスの照り返しがまぶしかった。漁港のにおいがした。そこから、●The river’s level drifting breadth began●、空とリンカーシャーと水が接している。
※和訳なのに英語で書かれている箇所は文法的にわからない箇所でした。なので訳出せず。この一文だけなので、ご容赦ください
➋All afternoon, through the tall heat that slept
For miles inland,
A slow and stopping curve southwards we kept.
Wide farms went by, short-shadowed cattle, and
Canals with floatings of industrial froth;
A hothouse flashed uniquely: hedges dipped
And rose: and now and then a smell of grass
Displaced the reek of buttoned carriage-cloth
Until the next town, new and nondescript,
Approached with acres of dismantled cars.
午後の間ずっと、内陸を何マイルにもわたって、まるで居眠りでもしているかのような暑さを通り抜けながら、停車と漸進を繰り返し南へ進んでいった。広い農場を通り過ぎた。家畜の牛が足元だけに影を落としていた。そして運河には工業廃水の水泡が浮かんでいた。温室が独特な光り方をしていた。家の垣根が現れては消えていった。そして時たま、ボタン付きの座席カバーが放つ悪臭に代わり、草原の香りがしていた。そうして、次の町へと向かっていった。新しいが特筆すべき所はない場所であり、ある区画に目をやるとて大量の解体された車が置かれていた。
➌At first, I didn’t notice what a noise
The weddings made
Each station that we stopped at: sun destroys
The interest of what’s happening in the shade,
And down the long cool platforms whoops and skirls
I took for porters larking with the mails,
And went on reading. Once we started, though,
We passed them, grinning and pomaded, girls
In parodies of fashion, heels and veils,
All posed irresolutely, watching us go,
はじめは、停車した各駅にて行き当たった結婚式で、どんな音がなっていたのかも気づいていなかった。ひっそりと陰で行われるべきその感興が太陽のせいで台無しになっているし、私は人や楽器のこの喧噪を聞いて、長く無機質なホームを行ったところに、荷物で悪ふざけをしている駅員でもいるのだろう、と決めつけていた。そうして本を読み続けていた。しかし、発車しようかというとき、目の前を通り過ぎていたのは、口をあけて笑い・ポマードで髪をぬりかためた人々、流行を真似た着こなしをする女の子たち、ヒールとヴェールだった。すべてはぎこちなく、発信する電車をのぞき込んでいて、
➍As if out on the end of an event
Waving goodbye
To something that survived it. Struck, I leant
More promptly out next time, more curiously,
And saw it all again in different terms:
The fathers with broad belts under their suits
And seamy foreheads; mothers loud and fat;
An uncle shouting smut; and then the perms,
The nylon gloves and jewellery-substitutes,
The lemons, mauves, and olive-ochres that
あたかも、終わったことをそうしてまだ続かせているかのように手をふっていた。感激した私は、今度は素早く身を起こし、湧き上がる好奇心を感じて、もう一度、さっきとは違った視点で結婚式の様子をまじまじと観察した。父親は、スーツを着て幅広のベルトをしており、皴のあるおでこをしている。母親は、やかましくて太っている。何か卑猥な言葉を叫んだおじがいる。そして、そのパーマのかかった髪型、そのナイロンの手袋と人工の宝石、そのレモン色・藤色・オリーブオ-カー色のドレス(ドレスは僕の推測)は
➎Marked off the girls unreally from the rest.
Yes, from cafés
And banquet-halls up yards, and bunting-dressed
Coach-party annexes, the wedding-days
Were coming to an end. All down the line
Fresh couples climbed aboard: the rest stood round;
The last confetti and advice were thrown,
And, as we moved, each face seemed to define
Just what it saw departing: children frowned
At something dull; fathers had never known
その少女たちを幻想的に際立たせていた。…そう、カフェから始まり、中庭の先にある宴会場、バスの団体旅行客の別館へと続き、そして結婚式の日々は終わりを迎えようとしていた。各乗車口にて新婚夫婦が乗車した。残った人々はそのまま立っていた。最後の紙吹雪とお言葉が投げかけられた。そして、電車が動き出すと、人々の顔には今こそ出発なのだと気づいた顔が見えたように思えた。子供たちは、どこかつまらなくて不満げだった。父親は、知らなかった。
➏Success so huge and wholly farcical;
The women shared
The secret like a happy funeral;
While girls, gripping their handbags tighter, stared
At a religious wounding. Free at last,
And loaded with the sum of all they saw,
We hurried towards London, shuffling gouts of steam.
Now fields were building-plots, and poplars cast
Long shadows over major roads, and for
Some fifty minutes, that in time would seem
これほどまでに大きくて、しかも全く茶番的な成功を。当の女性は●楽しい葬式のような秘密を共有していた。一方で女の子たちは、ハンドバッグをきつく握りしめ、●宗教的な傷跡を見つめていた。(上の3文は一見して意味が分からん。皆もわからんと思う。わかる人教えてほしいです。僕の考察対象。)
やっと見送りの場面から解放されて、見送られた人全員が乗車し満員となって、電車はロンドンへと走っていった。蒸気の塊を吐き出しながら。きづくと田園が建物区画になっていた。ポプラの木々は幹線道路に長い影を落としていた。そして、50分もたつと、その時間が
➐Just long enough to settle hats and say
I nearly died,
A dozen marriages got under way.
They watched the landscape, sitting side by side
—An Odeon went past, a cooling tower,
And someone running up to bowl—and none
Thought of the others they would never meet
Or how their lives would all contain this hour.
I thought of London spread out in the sun,
Its postal districts packed like squares of wheat:
十分に長く感じられて、帽子をかぶり「もう退屈で死にそうなんだ」と言いたくもなった。12組の新婚生活が始まっていたのだ。外の景色を見て、ぴったり隣あって座りあっていた。Odeon(劇場)を通り過ぎ、冷却塔、助走してクリケットの投球をする人が見えた。それでも、そうした決して出会うことのない人達に思いを巡らしたり、今この時間を周りの人がどう感じ・どう過ごしているのかを考えたり。そんなことをするひとは誰もいなかった。私は太陽の下に広がっているロンドンのことを思って、その郵便区画が四角の小麦菓子(squares of wheat)のごとく詰められている様を思い浮かべた。
➑There we were aimed. And as we raced across
Bright knots of rail
Past standing Pullmans, walls of blackened moss
Came close, and it was nearly done, this frail
Travelling coincidence; and what it held
Stood ready to be loosed with all the power
That being changed can give. We slowed again,
And as the tightened brakes took hold, there swelled
A sense of falling, like an arrow-shower
Sent out of sight, somewhere becoming rain.
私たちの終着駅はすぐそこだった。光るレールの継ぎ目を踏み、停車しているPullmans(個別寝台列車)を通り過ぎ、苔で黒ずんだ壁が近づいてきた。そして、この刹那的な出会いの旅が、もう終わろうとしていた。変えられることで作用する力すべてが丸ごと加わり、列車の旅の中で留められていたものが解き放たれようとしていた。さらに速度が落ち、そしてきつくブレーキが踏まれると、どこか落ちていくような感覚で満たされた。それはまるで、眼の届かない場所で矢のように放たれた俄雨が、どこかでまとまった雨となって降り注いでいるかのようだった。
参考資料(和訳にあたってのもの)
・https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/135276/1/ebk00066_037b.pdf
京大の雑誌に投稿されたこの詩の文学評論。直訳が目立った。
・http://noerukaerufueru.seesaa.net/article/458525857.html
この詩を和訳しただけのブログ記事。詩の解釈が訳に表れていて、楽しい。
・https://kwansei.repo.nii.ac.jp/index.php?action=repository_action_common_download&item_id=16343&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1&page_id=30&block_id=85
12編のLarkinの詩を和訳している論文。著者日本人じゃない。ダニエルさん。
まとめ
読んでいただきありがとうございました。暇があれば、今度はこの詩 "The Whitsun Weddings" の解釈編を投稿しようかと思っています。試験で忙しいのであげられるかは未定です。
それでは~~。
written by 黒子マン , 12:11, 2020/07/20