- 運営しているクリエイター
2020年6月の記事一覧
私が恋をしたあなたは××でした【SS】
幼い頃、初めて見たその人は、見知らぬ人を隣に連れていた。
それから何年か経った後、その人の隣に居たのは祖母だった。
私はそれが、羨ましかった。とても。
祖母はそのままいなくなり、家には私と母がのこされた。
私の心にはその光景と羨望だけが焼き付いて、今も離れない。
「貴方も早くいい人を見つけて貰ってもらわなくちゃね」
その言葉は、父を早くに亡くした母の口癖のようなものだった。
そう
真夜中のドライブ【SS】
ドライブに行こう。
そう誘われるまま彼の助手席に座り、目的もなく走り出す車。
交差していくヘッドライト、前を走る車のテールライトと、街灯。
民家やマンションの明かりが、視界を照らす総てで、全部がぼんやりとして見える。
やがて車は住宅街を抜け、山道へと差し掛かる。
緩やかな坂道と、カーブ。
灯りは減り、前後にも、対向車もない。
カーステレオからはラジオが流れている。
いつもは安心す