【アングラ小説】二元論──善意・衝動・混沌、すべてが本当の私[前編]
寄付が少しでも増えればよいと思った。
そうすれば、子どもたちにもう少し新しい学用品を買ってあげられる。
ノートや鉛筆を節約させなくてもいい。
絵もたくさん書かせてあげたい。
学校で恥ずかしい思いをしなくてすむように、新しい洋服やバッグも買ってあげたい。
仲間外れにならないように、Nintendo Switchをやらせてあげたい。
スマホだって持たせてあげたい。
子どもたちをもっと手厚くケアできるように、スタッフだって増やしたい。
この施設を始めて10年。
当初は、若い女が児童養護施設を立ち上げるというめずらしさもあって注目され、個人や企業からたくさんの寄付をいただいた。
けれど、世間の関心が薄れたり、支援者が高齢になったり、スポンサー企業の担当者や経営者が変わった際に額が見直されたり全額カットされてしまったりして、寄付金は徐々に目減りしていき、最近は少し経営が厳しくなっていた。
そんなとき、あるテレビ局から取材の話があった。
全国ネットと聞いて、不安はあったが思い切って取材を受けた。
注目が集まれば、また寄付金が増えるかもしれない。設立時はローカルメディア中心だったが、今回は影響力の大きい全国ネット──。
そんな思いが、私を踏み切らせたが、こんな結果になるとは思わなかった。
私は今、1人、施設の聖堂にいて、御子の前にぬかづいている──。
* * *
手荒く犯されるのが好きだった。
輪姦されるのはもっと好きだった。
身体の中を突き上げるような感覚、身体を圧し潰すような衝動的なリズムがたまらなかった。
次から次へと犯して欲しかった。
息ができないほど、喉の奥まで押し込んで欲しかった。
身体を上と下から、圧し潰して欲しかった。
精液でたくさん汚して欲しかった。
道具として、存分に使って欲しかった。
性的虐待にあったことがあるか? レイプされた経験があるか?って?
バカじゃない? くだらない。
安っぽい物語の影響を受け過ぎ。
バカな男ほど、こんな質問を投げかける。
私は、生まれた時から、こうだった。
ものごころがついた頃から、手荒く犯されたかった。
理由なんて、ありゃしない。
17歳で、彼氏と初めてエッチしたとき、最初から全身に快感が駆け巡った。
そして、「何か物足りない」と思った──。
理由を見つけようなんて、愚かしい。
心理学なんて、くだらない。
フロイトなんて、ただの傲慢な自己中野郎。О嬢も治せなかったじゃない。
ロジャースなんて、役に立たない傾聴オジサン。
家族環境? 学校に友だちはいたか?
ステレオタイプに感化されすぎ。
偏見とレッテルに支配されてて、発想が貧困すぎる。
残念ながら、両親は仲良し。家族も仲良し。家庭はそこそこ裕福な方。学校は楽しかった。
低能なアンタに、つける薬はないよ。
現象に、常に理由があると思うなよ。
前編のエンディング曲、マイルス・デイヴィスの定番中の定番「Blue In Green」。青は憂鬱、緑は嫉妬。青は空、緑は海。混ざり合う混沌。