未来の扉──わたしがダブルワークで風俗を選んだわけ
ある風俗求人情報サイト様が募集していた「漫画シナリオ制作」のコンペに応募したものです。生まれて初めて漫画のシナリオを書きましたw 楽しかったです!
コンペは通ったのですが、違うテイストにしてほしいということになったので、このコンペ用シナリオは、まるまるボツに。ということで、この「終着駅」に、笑笑
なんでも、「内容はいいけど、ドラマっぽくて、話が堅すぎる。もっと、軽めで笑えるものを」とのこと。しかも、そのやりとりの過程で、「ウラノ様の真面目な人柄が現れてます」なんて、担当者の女性に言われたw 「ウラノけいすけ」としてやりとりしているのに、そんなことを、しかも風俗求人情報サイト運営会社の女性広報担当者の方に言われるなんて、なんか複雑w もっと不真面目にならないと、商売上がったりです、苦笑
ちなみに、オーダーの内容は次の3つです。
「風俗業界は一般のイメージよりもきちんとしていることを伝えてほしい」
「一般の風俗になじみのないような普通の女性が、風俗業界に興味を持つような物語にしてほしい」
「風俗でのアルバイトを通じて夢を叶えるような女性の姿を描いてほしい」
ちょっと心が痛みましたが、ギャラに負けましたw
すでに12月には最終話(全10話)を納品済みで、現在、漫画制作中だそうです。早くできないかな。わくわく。
第1話 新たな扉──わたしが★★★にたどりつくまで
※★★★には、ある風俗求人情報サイトの名前が入ります。
●1コマ目
【場面】深夜、1人暮らしの部屋でノートパソコンに向かう女性。
私の名前は、美都。22歳の会社員。
アパレル業界で働いている。
もう午前1時。明日も仕事だというのに、検索が止まらない──。
●2コマ目
「未経験者歓迎、初心者特典のお店も、こんなにあるんだ! 見学のみOK、体験入店OKのお店も、たくさんある。 あ、なんかこの店、ちゃんとしてそう。ボーナスもあるんだ! えーと、口コミは……と。あ、すごい、たくさんある!」
●3コマ目
私は生まれて初めて、風俗でアルバイトをしようと考え、会社の先輩に教えてもらった大手の求人情報サイトで、お店を検索しているところである。なぜ、こんなことになったのか──。話は昨日にさかのぼる。
●4コマ目
【場面】美都がアパレルショップで働く場面(earth music&ecologyのようなお店のイメージ)
試着中の客「すみません、ちょっとこれイメージに合わないんで、似たようなの、持ってきてもらえますか」
美都「あ、ただいま、持ってまいります……!」
樹奈「美都ちゃん、あのショーケースの商品、さっき並べ直してって言ったよ(苦笑)」
美都「ああ、ごめんなさい……!」
●5コマ目
【場面】バックヤードでお昼休憩中。惣菜パン2つと、野菜ジュース。
「ふう……」
アパレルショップの仕事は、大変。
なかなかお客様に買っていただけないし、先輩にはしかられてばかり。
集客のためのSNSや動画配信もしなくちゃだし、イベントプランも考えなきゃだし、残業続き。
それなのに、お給料は驚くほど少ない──。
●6コマ目
【場面】バックヤードでお昼休憩中に、樹奈が慌てて入ってくる。
樹奈「ちょっと、美都ちゃん!! この前の発注やってないでしょ!!! お客様、すごい怒ってるんだけど!!」
ああ………(天を仰ぐ感じ)。
●7コマ目
【状況】仕事の帰りに寄ったパブで、1人でお酒を飲む美都(英国風パブ HUBのようなイメージの店)
ああ、なんか疲れた。
働くって大変だな。
みんな、楽しそうだな……。
●8コマ目
【状況】50歳くらいのサラリーマン風の男が美都に声をかける。イケオジでも、キモオジでもない、普通のちゃんとしてそうな男。
「1人?」
「え?」
●9コマ目
【状況】お店で50歳くらいの男と2人で飲む美都。
男「へー、アパレルって、そんなにお給料低いんだ」
美都「そうなんですよー! だって、手取り14万円って、ひどくないですか! これじゃあ、家賃とか生活費と奨学金を払ったら、ほとんど手元に残らない。しかもお店の新作、6掛けで買わされるんですよ! 毎日違う新作、着ないとならないし……。全然、貯金できません。むしろ、マイナスです(泣)」
●10コマ目
【状況】店から出て50歳くらいの男と2人で歩く美都。
美都「あーあ、こんなんじゃ、私のブランドのお店、いつ作れるか分からない……。あ、しゃべりすぎちゃって、ごめんなさい。話を聞いてくださって、ありがとうございました。今日はごちそうさまでした。私、こっちから帰ります」
●11コマ目
【状況】美都の腕を男がつかむ。
男「ちょっと待ってよ。ホテル、行こうよ。お金、ないんでしょ」
●12コマ目
美都「え!?」
男「3万円でどう? 美都ちゃん、可愛いから、優しくするよ。俺、仕事でオンラインショップの運営とか詳しいから、いろいろ力になれるし。貯金もしたいでしょ」
●13コマ目
【場面】怒りで顔をゆがませ、手を振りほどく美都。
美都「行きませんっ!!!」
●14コマ目
【場面】口惜しさで泣きそうになりながら、その場を離れる美都。
男(遠くから)「おい! 待てって。せっかく話を聞いてやったのに!! ふざけんな!」
●15コマ目
【場面】夜の街をさまよう美都。
あーあ、わたし、なにやってるんだろう。
くやしい。ばかみたい。
あんなこと言われて……、本当にばかみたい。
自分のブランド、つくりたい。セレクトショップ立ち上げたい……。
なのに、毎日、すり減るばかり。
お金がほしい。資金がほしい……。
●16コマ目
【場面】夜の街をさまよう美都に声をかける若い男。ナイト系のかっこうではなく、爽やかカジュアル
若い男「ねえねえ、彼女。帰り?」
美都「え?」
●17コマ目
若い男「僕、正直がモットーだから、言うね。スカウトです。夜職の」
美都「え? 夜職?」
●18コマ目
若い男「そう。ガールズバーとかも紹介できるし、もちろんがっつり稼ぎたいって人にはエッチなお店も紹介できる。お姉さん、可愛いから、すごいいい条件で紹介できると思うよ。話、聞いてくれたら、うれしいな」
美都「……」
●19コマ目
【場面】若い男についていく、美都。
いつもだったら、絶対についていかなかった。夜職なんて、考えたこともなかった。
でも、今日はこのまま家に帰りたくなかった。
それに、このままの毎日を続けていても、夢なんか実現しない。
話を聞くだけなら……。
若い男「……(なにかいろいろしゃべってる)」
●20コマ目
【場面】若い男についていく美都を、女性が呼び止める。
女性「ちょっと、美都ちゃん!!」
美都「え?」
●21コマ目
【場面】呼び止めた女性を見る美都。
美都「あ!!! 樹奈さん!!!」
樹奈「何してるの……!? 行くよ、飲みに行こ!」
●22コマ目
【場面】イタリアンバル風の店のカウンターで樹奈と美都がお酒を飲んでいる。
樹奈「ばかね。スカウトについていくなんて、絶対にしちゃいけないんだから……」
美都「ごめんなさい……」
●23コマ目
樹奈「お金ないのは、分かったよ。それと、そんな夢持ってたんだ。うち、給料安いからね」
美都「……」
●24コマ目
【場面】樹奈が美都にスマホの画面を見せる。
樹奈「これ、わたしのオンラインショップ。個人で輸入して、セレクトでやってるんだ。最近、ようやく軌道に乗ってきたの。会社には言っちゃだめだよ」
美都「え!? すごい、これ、樹奈さんのお店なんですか!?」
●25コマ目
樹奈「そう、ここまでするの大変だったよ。デザイナーにサイトを作ってもらって、広告出して、倉庫を用意して、SNSもやって……。最近、ようやく売り上げが安定してきた。独立するには、まだまだだけどね」
美都「すごーい!!! さすが、樹奈さん。かっこいい。最初の資金、よく貯まりましたね」
●26コマ目
樹奈「え、えっとね……、もう、いいか! 私ね、風俗でアルバイトしているの」
美都「えええええええ!!!!」
●27コマ目
樹奈「声でかい(苦笑)。そのくらいしないと資金、貯まらないよ。うちの会社じゃ。それに、今はダブルワークの時代だし。自分の夢をかなえるためには、そのくらいやらないとって、思ってね」
美都「なるほど……」
●28コマ目
樹奈「今もやってるよ、週2回、短時間で。今日も、その帰りだよ。お客さんがたくさんついてくれて、すぐ予約埋めてくれるから、効率よく稼げる。ほかのアルバイトじゃ、考えられないよ」
美都「そうなんですね……」
●29コマ目
樹奈「もう一回、言うけど、スカウトは絶対にダメ! あのまま事務所に連れ込まれたら、変な契約を結ばされて、危険なお店に行かされるってこともあるんだから! 本当に、私が通りすがってよかった」
美都「本当に、ありがとうございました。私、何も知らなくて……」
●30コマ目
【場面】再びスマホの画面を見せる樹奈。
樹奈「もし、興味があるんだったら、このサイトでも見てみて」
美都「……★★★?」
●31コマ目
樹奈「そう。風俗版の求人情報サイトの大手。私、これで見つけたんだ、今のお店。こういうのは、ちゃんとしたサイトで、ちゃんとしたお店を探さなきゃだめ」
美都「……」
●32コマ目
樹奈「じゃ、そろそろ帰ろっか。あ、それと、このこと誰かに言ったら、会社はもちろん、この街にもいられなくするからね♡」
美都「じゅ、樹奈さん、怖い……。い、い、言わないです、絶対!!!」
●33コマ目
【場面】翌日の夜。自宅で母と電話する美都。
母「ちゃんとご飯、食べてる? 仕事はがんばってる? お米と野菜、送っておいたから」
美都「あ、ありがとう。陸斗、もうすぐ受験だね。がんばってる?」
●34コマ目
母「一応、勉強してるそぶりだけど、どうだかね。美都にはすまなかったね、奨学金使わせて。大丈夫かい、支払い大変じゃない?」
美都「大丈夫だよ、私、贅沢しないし」
●35コマ目
【場面】電話を終えて、1人考える美都。
とは言ってみたものの、奨学金の返済は大変。
私の大学受験は、父がちょうど前の会社を辞めざるを得ない時だった。
今も、うちに、あまりお金はない。陸斗の学費だって、大変なはず。
就職したら少しくらい仕送りを、なんて甘いことを考えていたが、そんなのは絶対に無理だった。
●36コマ目
ふと、樹奈さんの言葉が浮かぶ──。
「今はダブルワークの時代」
「自分の夢をかなえるためには、そのくらいやらないと」
「効率よく稼げる」
●37コマ目
【場面】ノートパソコンを開く美都。
美都「★★★って、言ってたな……」
●38コマ目
【場面】再び1~3コマ目の状況に戻る。
午前1時。これが、私がこんな時間に風俗店の求人情報サイトを検索している理由である。
一般の求人情報サイトみたいに、条件検索ができて、口コミもたくさんあって、分かりやすい。
動画での仕事の説明や、先輩ボイスもある。会社や街中にいるような、ごく普通の女性がたくさん働いている。しかも、全く未経験の私でも、働き方が分かる記事がたくさんアップされている。
こんなサイトがあったんだ。もっと怖い世界だと思っていたけど。
●39コマ目
いろんな口コミあるなー。
あ……。
●40コマ目
【場面】あるお店の口コミの紹介を見る美都(架空)
「未経験で入店しました。最初は怖かったですが、今はこのお店で働けてよかったと思っています。店員さんも優しくフォローしてくれています。
マネジメントも衛生管理もしっかりしてるし、身バレ対策にも気をつかってくれます。お客さんも、いい人が多くて安心しています。
イメージと全く違いました。おそるおそる足を踏み入れて、よかったです。お陰様で、夢の実現も近そうです、がんばります!」
●41コマ目
夢……。未経験……。
私と一緒だ。
樹奈さんが風俗でアルバイトしているなんて、すごく意外だったけど、
私がイメージしている世界じゃ、ないのかもしれない。
夢……、実現……。
●42コマ目
【場面】翌朝、アパレルショップにて。
美都「樹奈さん、おはようございます!」
樹奈「あ、おはよう~」
●43コマ目
樹奈「ん? なに?」
美都「樹奈さん、今夜、飲み行きません? あの件、教えてください」
●44コマ目
樹奈「そっか、いいよ。で、企画書は?」
美都「え……!? あ……!」
●45コマ目
樹奈「今日までって、言ったでしょ!!!」
美都「ご、ごめんなさーい……!」
(続く)