人に聞けない、葬儀とお寺とお金のこと。1
元葬儀社 1級葬祭ディレクターがお答えします
人に聞けない、葬儀とお寺とお金のこと。
第一話「家族葬」ってどうなの?
前置き
「家族葬」の歴史
「結婚式」も「ジミ婚」に
「葬儀のお金」
「家族葬」のデメリット
コロナウイルス以降の「家族葬」
「家族葬」と葬儀社
まとめ
*前置き
まず、私は葬儀会社を退職しています。だから、こうして皆さんに知りたいこと、本当のことをお話できるようになったので、ペンをとりました。
実は、以前、この業界、葬儀の現場の出来事があまりも面白く、興味深く、感動的であり、誰かにきいてもらいたくて、ブログを立ち上げたことがあります。
しかし、すぐにブログをやめてしまいました。
それはなぜか
それは「個人情報」だから
見知らぬ家庭の中に入り、その家族と親戚の関係を把握し、人には言えないことを聞き、葬儀を進めていきます。当然、その家族から信頼されなければなりません。同時にその家の個人情報、すべてに接します。
ちょうどそのころは、コンプライアンスや個人情報保護が言われ始めた頃でした。
ですから、少しでも個人を特定できるような情報は絶対に外部には出さないように、強く指示されました。
もちろん、これからみなさんにお話しすることは、個人や地域などが推定できないように、架空、仮名の人名、寺院名、地域名になることは御了解ください。
おまたせしました。
世の中は「終活」「エンディングノート」「樹木葬」
「墓じまい」といろいろな呼び名、テーマがあふれています。
その中でも、とくに この 👇
「家族葬」
この名称、あなたも聞いたことがあると思います。いまでは普通につかわれる葬儀の形態です。
なぜ、「家族葬」が注目されるのか
それは 簡単そうだから、
安く済ませそうだから
です。
最近、よく聞くし、流行っているみたいだから、、
なぜそう思うのか、本当にそうなのか?
その前に、
「家族葬」の歴史
変遷をご説明したいと思います。
少し昔、以前は「家族葬」という言い方はありませんでした。
なぜなら、葬儀、葬式はすべて「家族葬」だからです。
その対極にあるのが「社葬」です。会社が行う葬儀「社葬」にたいして、一般の葬儀は、家族が行うからみんな「家族葬」というわけです。
東京など、都会の一部で、今までのような葬儀ではなくて、家族だけで葬式をしたい、想いこめて故人を送り出したいと、大規模な既存の葬儀に反感を持つ人が現れました。
そして、その感動的な様子などを一部のマスコミが取り上げることがありました。新しい形態だと、取材の対象だとしたわけです。
とはいえ、この家族だけで葬式を行うというのは、ずいぶんと特殊で、一部の変わった人がやるものだという認識でした。まして、それは都会のような、隣の人が何をしているかわからないという、近所関係の希薄な、人的関係ないようなところだから、成立するようなものだったのです。
地方や田舎ではそうはいきません。
「結婚式」は「ジミ婚」になりました
それが、バブル時期のような派手でお金をかけた「結婚式」から、あまりお金をかけない少人数の、「ジミ婚」とよばれるような「結婚式」が増えはじめてきました。
儀式というものが簡素化され、若い人を中心に、次第に重きを置かない風潮がでてきました。
それはだんだん一般化してきて、芸能人でさえ「ジミ婚」になってきています。あの華やかな結婚式というものが、なぜか派手でないのが当たり前になってきました。
「結婚式」は親戚を呼ばないで、家族だけとか、友人だけとか、そしていまは役所への届け出だけ、という人も珍しくはありません。
ただ、結婚式をしない人が増えていく時代ですが、それでも葬儀だけは別もの、としていた風潮が多かったのも事実です。
特に、都市部ではいいですが、地方では葬儀の形態方法はかなり頑固に守られていました。
結婚しない人はいても、死なない人はいませんから。
そして、「葬式」は大勢の人が弔問に来て、その対応はかなり大変です。
まして、自宅で行う「自宅葬」などをすれば、あまりに大変すぎて、その家の人が葬儀を終えた後に過労で倒れるなんてことが、ほんとうにありました。
葬儀を自宅でしないで、業者である葬儀社の会館で行うようになったのも、葬儀を自宅でする事が大変だったからです。
日本が豊かになり、お金で済む事なら、お金を払って頼んだ方がいいわけです。
「葬儀のお金」
そうして、自宅で葬儀をしないことが多くなっても、葬儀が大変であることには変わりありません。
また、葬儀はお金がかかります。100万円以上はふつうにかかります。
200万円 300万円なんてこともざらです。
昔はそれが当たり前だったのです。
でも、今の若い人に「200万円かかりますよ」、といったらどうでしょう?
{え!? そんにかかるの?}というでしょう。
基本、葬儀代はすぐに払わなければなりません。葬儀後1週間以内というのがふつうです。ようやく終わった葬儀の後で、お金の支払いが待っています。
年寄りは自分の葬儀代だと、お金をためて残している人も多くいます。
でも、昨今はそういう人は少なく、一部になってきています。
まして、遺族である若い人はそんなお金を用意していません。
「カードで払える?」「分割でお願いします」
というでしょう。
実は、葬儀業界は旧態依然で、現金一括の支払いとうものが強く堅持されています。
もちろんポイントもつきません。(ポイ活出来なくて残念です)
会社としては、即、現金で入金される方が一番いいわけです。
こうして、大変な葬儀、お金のかかる葬儀から
大変でない家族葬、お金のかからない家族葬へと人を振り向けたわけです。
みなさんの「家族葬」のイメージはどんなでしょうか?
家族親族だけで行う。
身内の者だけで暖かく送り出す。
家族の想いを伝える
少人数だけど心がこもっている
とてもいいイメージが多いのではないでしょうか
確かに、良い面もありますが、
実は、「家族葬」のデメリットもたくさんあるのです。
「家族葬」のデメリット
大変でないと思っていた「家族葬」は、実はやはり大変な「家族葬」で
お金のかからない「家族葬」は、お金のかかる「家族葬」 なのです。
まず、「家族葬」も今までの葬儀も、行う事はほぼ同じです。
「家族葬」だからやらなくていいことなど、ほとんどありません。
「家族葬」の参列人数は少ないですから、確かに出ていく経費は少なくなります。
ただ、その分、入ってくるはずの香典(お金)が入らなくなります。
昔の葬儀は大変だと言いました。
葬式になると、大勢の人が弔問に訪れます。近所の人、会社の人、友人、知人、よくわからない人まできます。でも、その人たちはみんな香典を持参します。
香典というものは、お返しをしないといけません。昔から半返し、三分の一返し、といわれています。
解り易く説明すると、友人が香典を持ってきます。その中身が「1万円」だとすると、半分を相手にかえします。「5千円」ぶんの物を相手に御礼として返すわけです。
そして、残りの「5千円」分を喪家(葬儀を出す家のこと)が受け取るわけです。この分の使い道は自由ですから、葬儀代などに充てることが出来ます。
ですから、前に葬儀代は200万円近く、かかる。と言いましたが、かなりの部分は頂いた香典からのお金で支払うことが出来ます。
昔は、葬儀を出して、もらった香典が多くて、黒字になった。なんてことが本当にありました。(相当、むかしでしょうね)
葬儀は「相互扶助」だったのです。
そして
今は、「家族葬」です。ほとんど喪家の負担、持ち出しです。
「家族葬」という言葉が頻繁に使われ始めたのは10年以上前くらいからでしょう。
だんだんと、都市部だけでなく、田舎でも使われ、興味を持つ人が増えてきました。
そして「コロナウイルス」の発生です。
コロナウイルス以降の「家族葬」
「密」にならない、人を集めない、大勢で行わない ことが求められました。
こうして、
一気に「家族葬」が浸透しました。
いまは、日本全国どこでも「家族葬」が当たり前です。
もちろん、いままでの一般葬を行う地域や人もたくさんいます。しかし、それはいずれ少なく、一部になっていくでしょう。
少人数で行う「家族葬」は葬儀を出す家の人にとって、煩わしい人間関係から逃げることが出来ます。
場合によれば、うるさい親戚を呼ばない方法にもなります。
お金はかかりますが、その方がよいと考える人が多いというのが私の印象です。
いまさらですが、核家族が進んでます。親とは同居していない人も多いと思います。自分たちは東京や大阪に住んで、両親は地方で暮らしている人もたくさんいます。
そうすると、親の人間関係というものがわかりません。だいたい子供たちは興味もありませんから、親が亡くなったときに、親の友人や知人関係がわかりません、誰に連絡をして、誰を呼ばなければならないのかもわかりません。
結局、「呼ぶ人と呼ばない人が出ても失礼だから」という、なんとなくもっともな理屈で、誰も呼ばない「家族葬」にします。
葬儀が終わってから、「連絡がなかった」「呼んで欲しかったが呼ばれなかった」という人の声がたくさんでてきます。
でも、子供たちはすでに都会に帰り、誰も住んでいない空き家だけがそこにあります。
「家族葬」と葬儀社
「家族葬」なら安くあがるはず たしかにそうです。
人間の数が少なくなるのですから、その分費用も少なくなるはずです。が、「家族葬」なのに、高かったという人も多くいます。
「家族葬」だから、安いと思うのは勝手ですが、どこにも安いですと書いていません。
葬儀社の立場からすると、どうでしょう?
人が少なく、規模が小さくなる分、売上も減ります。今までの葬儀の半分の規模なら、単純に売り上げも半分です。
会社としては死活問題です。はっきりいって、コロナのときはどこの葬儀社、冠婚葬祭業者も赤字でした。
旅行会社や、飲食会社とおなじです。
人は死にますから、葬儀はあります。
「家族葬」でもなるべく売り上げを減らさないようにあの手この手を繰り出しています。
今まで、他の人に使っていた分のお金を故人の為に、故人との思い出の為にというわけです。
基本料は安くても、そこに付随する経費は安くなく、あれもこれもと追加すれば以前の葬儀と価格が同じ、ということもよくありました。
(クレームのもとですね)
葬儀というのは大きくても小さくてもかかる手間は全く一緒です。
「小さなお葬式」としてCMを打っている業者がいます。ここにも消費者庁から「措置命令」の指導がはいったことがあります。
追加料金がかかるということを明示していなかった、というものです。
実は、ネットで、
お葬式の依頼をすると、その「小さなお葬式」の会社が葬儀をおこなっているわけではありません。
実際の葬儀は提携しているその地域の葬儀社が行っています。
ほぼ、そこの地域にある葬儀社に一任されていたわけです。
また、上からの指示とかでもめたりしてたようです。
葬式というものは、地域、地域でまるで様式が違います。
やり方、進め方、葬儀そのもの手順などもすごく違うのです。
ひどいと同じ町なのに、東と西でやり方が違うなんてこともあります。
全国一律の葬儀というのは不可能です。
だからこそ、その地域の葬儀社に任せるしかないのです。
いま、他業種から、「家族葬」への参入が増えています。
「家族葬」なら大規模な葬儀場や建物も必要ないですから、投資費用も抑えらます。また面倒な地域風習も無視できますから、自社の社員にも任せられます。
(以前は他の葬儀社から引き抜きや、辞めた人を再雇用していました)
「家族葬」に特化して進出してきています。
これからは、既存の葬儀社にかわって、本当に低価格の葬儀が行えるようになっていくでしょう。
たたし、故人への想いはその分、減っていくような気がします。
まとめ
「家族葬」はこれから主流になる。
「家族葬」はおもっているよりも、お金がかかる
「家族葬」を良くするのも、悪くするのも、そこの家族次第
(葬儀社ではないですよ)
なお、この葬儀業界というものは
「高くて良い葬儀」はありますが、
「安くて良い葬儀」というものはありません。
そして「高くて悪い葬儀」もあります。
圧倒的に起こりやすいのが「安くて悪い葬儀」なのです。
当たり前ですが、葬儀はもう一度やり直そうということは不可能です。
お金をかけたくないときは、葬儀をするまえに、きちんと相談することです。
よく考えて葬儀社選びをしてください。
なお、葬儀担当者には良い人が多いのも事実ですから、あまり心配しないでください。<最後にフォローさせてもらいました(汗)>
黒猫ひじき