8. 一ノ瀬ゆま先生 『神様なんか信じない僕らのエデン』
花材:グロリオーサ ルテア、キウイのつる、ヒカゲノカズラ
花器:陶器
香りのカタチとは
においは目に見えないものですが、確かに「ある」ものです。
実際、嗅覚は五感の中で唯一、脳へダイレクトに伝わり、私たちの記憶や情動に作用すると言われます。
人類初のアルファとオメガが多感な高校生だったら...という設定で始まる本作は、人物の魅力、ストーリー展開や絵の美しさはもちろんですが、私にとっては嗅覚やオメガバースのあれこれを刷新する意欲的な作品です。
花の香りは想起できても、香りのカタチは思い浮かばないもの。
まんがに描かれた「香りのカタチ」を花にするには...としばらく悩みました。
官能の香りを絵にできる稀有な作家先生
オメガである西央くんが発する香りは、どれだけ魅惑的なのでしょう。
一ノ瀬先生の描かれる香りは、抗おうとしても引き止められ、まとわりつく魅惑の曲線!
この曲線を花にするとなんなのか......大きな問いでした。
先日、錦市場で見かけた黄色のグロリオーサ ルテアは、店先ではあまり見かけない品種。
見た瞬間、花の色と形が西央くんと重なりました。
別名「クライングリリー」。葉っぱの先の巻きひげで上へ上へと伸びる熱帯の花。
つぼみのカタチも「初夜の香り」として知られるイランイランにちょっと似ています。
地に這っても空へ延びても
キウイのつるは、ネコを惹き寄せるマタタビ科。
絡み合いながら、しなやかにどんどん先へ先へ伸びていく。
その姿を、アルファの喬くんに見立てました。
コケのような日陰蔓(ヒカゲノカズラ)は、その名に反して日向を好んで這い回る強い生命力があります。胞子を放出しながら増える姿は、作品の中で、世界各地でαとΩが増大する様子を想起させます。
と言うわけで、今回の花材はぐんぐん伸びる植物ばかり。地を這い、空へ向かう(けど官能的な)ハイティーンが表現できていたらうれしいです。
青い花器にハピエン妄想を託す
花器は青空色。宇宙につながる高い青空を花器に託しました。
今後、喬くん西央くんカップルがどう関係を深めるのか。
同級生や周囲の大人たちはもちろん、第二の喬くん西央くんがたくましく生きていく展開を妄想してしまいます。
時はホリデーシーズン。
どの若者もカップルもハッピーになりますように🪷