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昭和の日本人の心は古典マンガの英訳で学べ。

(注:2年ほど前に長男の大学受験が無事成功裏に終わった時、海外で出産・子育て・教育・受験といういくつかのハードルを乗り越えた経験をどこかに書き記しておくべき、、と期間限定で始めたブログが予想通り中途半端に終わってしまったので、少しずつこちらにお引越し中です。)

マンガについては「りぼん」派で、全プレにいそいそ応募したり、「ときめきトゥナイト」とか「キャッツアイ」とか、あとはまあ普通にドラえもんとかサザエさんとか、そういう典型的な昭和の女子小学生でした。中学校くらいからちょっとサブカル寄りの子が吉田戦車とか読んでて、でもその頃は超体育会系な剣道部の部長として、年に5日(マジ)しか休みがない、という半端なくハードコアな生活を送っていたのでマンガを読む時間的余裕などなく、せめて宝島の「VOW」を兄と回し読みしながらぐひぐひ笑う程度のもので。

それから高校・大学に進学する中で出会った面白い人たちや、大人になってレコード会社に就職し、あまりまともとは思えない(褒めてます)、音楽やクリエイティビティに人生を捧げるファンキーでロックな先輩や同僚に囲まれて、彼らが過ごしてきた青春時代や趣味嗜好の話を聞くと、面白い人は当然ながら話の振り幅がとても広くて、しかもそんな彼らの持つたくさんの引き出しが、マンガやアニメに起因するものも多いことに気づいたのだった。


手塚アニメは鉄板


あ〜、もう!出遅れた〜!って感じでしたね。ぜんぜん追いついてないの。あの古典、この名作。あ、それでも「こち亀」「キン肉マン」「北斗の拳」とか「ベルばら」くらいは読んでたか。

なので、息子が小学校の高学年になった頃あたりから、割と意識して日本のクラシックな手塚マンガとか、中学生くらいからは水木しげるの歴史マンガなどをこまめに揃えて本棚に並べておいた。「ワンピース」とか「ナルト」みたいなイマドキのシリーズは、とりあえず本人がマンガ文化が気に入れば勝手にあとで手を伸ばすんだろう、と思って特に勧めず。それから、無理に日本語版を読ませようと、なんでも勉強にむすびつけようとするのではなく、あくまでも楽しく貪り読んでもらいたかったから全部英語版。

それがもう、思った通りの食いつきの良さ!

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「ブラックジャック」なんか、あの一見ダークで怖そうなトーンには裏腹に、正義とか平等、究極のヒューマニティで心が洗われるし、そんな道徳観を育んだり、自分のスキルを使って世直しをするブラックジャックのかっちょよさに憧れてほしいな、っていう期待もあったり。ピノコのキテレツな可愛さも共有したいし!定番の「ブッダ」から「アドルフに告ぐ」とか「海のトリトン」、「どろろ」、「きりひと讃歌」も網羅して、作者は違うが「美味しんぼ」も日本のグルメの文化や作法、極意なんかを楽しく学べる最高のシリーズだし、水木マンガの「コミック昭和史」は、全4巻のどれもが辞書のように分厚い大作だったけど、高校の最高学年の時に履修していた「東アジア現代史」のクラスで昭和について学んだ時に持参したところ、韓国人の教師からの依頼で教材として使わせてほしいと言ってくるほど意味深い読書体験になっているようだった。「はだしのゲン」に関しては、学校の図書館に英語版が全巻揃っていたそうで。当初息子が「『ベアフット・ジェン』ってすごいマンガがあるんだ!」って鼻息が荒かったのでピンと来なかったのだが、それが「はだしのゲン」の英訳と気づいてから納得。

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自らも医学博士だった手塚治虫の描く世界は、科学と人情が理想的なかたちで、でも正義に燃えながらも決して押し付けがましくない品のよさを感じさせる、とてもじゃないがアメリカ、しかもブルックリンの生育環境じゃなかなか育たないノーブルな方向性なんじゃないか、と思ったし、自らも熱帯ジャングルでの兵役という悲惨な戦争体験を送りながらも、戦後の混沌をたくましく乗り越え、さらには妖怪文化とか鬼太郎みたいな後の昭和の一大風俗を、マンガを媒介にして見事に一般的なものしてしまった怪人=水木しげるの存在は、まごうことなく日本、だろう。そういうものが、楽しくマンガを読んでいる息子の内なる日本人のたましいに継承されていくのだ。

また、感情移入しやすいというマンガの特徴を考えると、過去の歴史に対する日本人、もしくはアメリカ人としての当事者意識(注:息子は二重国籍保持者なので)とか想像力、共感力が育まれやすいということもあるだろう。実際、これまで息子を受け持った歴史の先生たちから、成績表代わりのレポート(注:息子の学校には数値などで生徒を評価するシステムがなく、成績表や通知表が存在しない。代わりに1教科1ページずつ、それぞれの教科の先生が生徒ひとりひとりに対するレポートを書いてくれる)に「歴史を記録する側=勝者のメンタリティだけでなく、迫害を受けたり、植民地として支配される側の立場をいつもリマインドしてくれるおかげでクラス内のディスカッションに深みと新たな視点が生まれるのでありがたい」と書かれることがよくあった。息子も再三「学校で習う歴史の授業は圧倒的に白人優位主義がベースになっているので、そこにツッコミを入れ、常識を疑うことを促すのだフフン」と、彼なりにミッションを持って授業を受けているらしかった。

秋からの寮生活には、本棚のマンガコレクションを全部持っていく、と言っている。持って行かれちゃう前に、私も読んでなかったシリーズを早く片付けねば!

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