キャラクター三人構成による恋愛物語のつくりかた
萩ゼミという名前で創作技法に関する一時間のSkype講義とnoteマガジン販売をやっておりまして、この記事はそのお試しのための無料のものです。
今のところ、基本的には、物語類型を使用したプロット展開についてお話しています。
物語類型にはいろいろなかたちがありますが、たとえば「騎士とドラゴン」が、恋愛物語においては有効ではないかと常々考えています(ゼミの受講者さんは大抵二次創作BLを書いている方ですので、恋愛物語に適用可能な話題をチョイスすることになります)。
騎士は王からの命を受けてドラゴンに立ち向かい、打倒して帰ってくると、財宝と姫を得ます。ドラゴンが姫を幽閉していることもあります。姫=財宝ですから、どちらでもあまり違いはありません。ここに騎士に手助けをしてくれる第三者が往々にして存在します。部下であったり、馬であったり、魔法使いであったりします。
さて、恋愛物語にこれをあてはめた場合、騎士と姫の関係に焦点が当たることになります。主人公である騎士が欲しいのは姫との関係、もしくは姫の心を勝ち得ることです。
恋愛物語において、「王からの命」というモチベーションは必要ありません。あるいはモチベーションを生み出すのは必ずしも「王からの命」という形で命じられる必要はなく、何らかの事件によるものでしょう。
また、「ドラゴン」つまり敵対者にあたる存在は、恋のライバルという形で存在することもありますが、必ずしも必要ではありません。恋愛物語において最大の障壁となるのは主人公もしくは「姫」の心理的な問題です。
つまりこの二点に関しては、キャラクターとして配置する必要は必ずしもありません。「騎士」と「姫」(※これは性別を規定するものでも性格を規定するものでもなく、求める側と求められる側を示す概念です)の関係の緊迫と、その緊迫を超えて結ばれる、あるいは恋に破れるときのカタルシスを生むために、「モチベーション」と「障害」が必要である、という話です。
というわけで、五人必要だった登場人物が三人まで減らせました。キャラクターが多いと設定をひとつひとつ作ったりキャラクターを掘り下げたりするのが大変ですし、それに手抜かりがあると幻滅の理由になりがちですし、キャラクターが多すぎると覚えられなくて話がわかりづらくなる理由になりがちですので、減らせるなら減らすにこしたことはありません。
ここで三人目である助力者を削ることも可能です。が、三人目は用意しておいたほうがよい、という認識をわたしはしています。
なぜなら、三人目を用意することで、サブプロットが作れるからです。
サブプロットとは、主軸になる物語(ここでは騎士と姫の恋愛)のわきにある、メインプロットに絡んでいく別の物語を指します。これは全くかかわりのない物語であってはいけなくて、あくまでもメインプロットを引き立て、相互に絡み合ったものである必要があります。
騎士と姫が出会い、ふたりの間の精神的な距離感を克服し、結ばれる、という物語は、恋愛物語としては普遍的なものであり、逆に言えば単調です。おそらく結ばれるか破綻するかどちらかであろう、ということは、読者はわかって読んでいます。恋愛物語はいつも少しマンネリです。もちろんそれがよいという側面もあるのですが。
ここに第三者を用意します。たとえば騎士の親友が事件に巻き込まれ、その事件にかかわる形で、騎士は姫との関係を混乱させてゆく、というような物語が作れます。親友の立場を考えて姫に秘密を作った結果、姫と作り始めていた密接な関係が崩れ始める、というようなお話にもできるかもしれません。
また、騎士と姫の関係がうまくいかないとき、第三者が助言をする、あるいは引っ掻き回す、というのも、恋愛物語においてはよくある構造です。そこでは騎士と第三者、あるいは姫と第三者の関係が描かれることになり(あまり描かれないものもありますが……)これもサブプロットといえます。
というわけで登場人物はとりあえず三人でお話を作ってみると、かなり広がりが出てきます。マンネリに悩んでいる方はお試しください。
ただ、第三者が「都合の良い発言をするだけの装置」として機能してしまうと話はまったく広がりませんので、あくまでも第三者もひとりのキャラクターとしてキャラメイクし、ひとりの人生のあるキャラクターとして扱うことが求められます。
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