シェア
哉村哉子
2016年2月16日 22:29
ときどきわたしは病気になる。 わたしは出口のない部屋にいる。体全体が痛く、なかでも脇腹が痛い。喉の奥につかえているものがあり、水を飲んでもそれは落ちていってくれない。夢の中でわたしは森の中にいて、そこは湿っていてどこまでも歩いて行ける。けれどすうっと空が見えてわたしは目をさます。そこはベッドの上で、腕を持ち上げると冷たい空気がある。「何時?」 わたしは尋ねる。「八時」 驚くほ
2016年2月8日 17:07
引っ越しなんてできないと思っていた。 都会と田舎どちらが好きかと尋ねられたら、都会は素晴らしい場所だけれど田舎に住むことしかできないだろうと答えていた。三十年間ずっと。でも実際のところわたしは田舎に住んではいない――都会にも住んではいない。わたしは海のそばの、街と呼んでいいのかわからない程度の、中途半端な場所に住んでいる。八百屋と肉屋と魚屋と米屋があるけれどそれが商店街を作っているわけでもな
2016年2月3日 22:03
梨が食べたいと同居人が言うので、神社を抜けて八百屋に行く。八百屋は神社を挟んでマンションの向かい側にあり、コンビニエンスストアに行くよりよほど近いので、わたしたちはコンビニスイーツやアイスを買うくらいの感覚で、頻繁に果物を買う。 この文章を書いたとき、まだ秋だった。梨のシーズンだった。梨はさほど安くはないので、それは若干手痛い出費だ(なにしろわたしたちはとてもとても貧乏だ)。でも同居人は小鳥