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その一言で、私の心は救われました。🤗
私はどこにでもいる普通のサラリーマン。
27歳で結婚し、二人の子宝にも恵まれた。
あっという間に中堅クラスからベテラン域の人間になり、仕事も軌道に乗ってきた頃、念願のマイホームも手に入れた。
私は運がいい。サラリーマンという職種は転勤というイベントがついてまわるが、上の娘が大学へ入学する年まで、妻共々、同じ環境のもとで仕事ができた。
話し相手がいるというのは有り難いものである。仕事をするうえで、稀に自分が押しつぶされそうになった時、「家族」という存在は唯一、自分の味方になってくれる頼もしい応援団ともいえる。
しかし、突然転機は訪れた。マイホームを持ち、子供もある程度成長したこのタイミングで「単身赴任」の話が持ち上がったのである。
赴任先までは海を渡り、バスに乗り継ぐ道程で、片道4時間半のとてつもなく長い時間を要する。
この記事を書いている11/23は勤労感謝の日。連休となった週末を自宅で過ごした人は自分を含め、大変多く、それを証拠にバスの中は超満員であった。コロナ禍にも拘らず、思いっきり「3密」状態である。
私は座席に座ることは勿論、立っている場所もない程の混み具合に驚いていた。
「あ〜、やばいやばい。座席も他人同士が相席してるし、立っている人もギュウギュウじゃん!」
しかし、次のダイヤは一時間後。このバスには何が何でも乗らなければならない。私は車内の一番後ろへ移動し、通路で立ったまま40分間耐える覚悟を決めたのだ。
バスが発車した後、違和感を感じたのは右肩に重くのしかかる鞄だった。
ただでさえ、揺れ動く車両の中で両足のバランスをとりながら担いだ荷物を支えるという体位はかなりキツイものがある。
「あ〜、単身赴任で4時間半かけて、この苦しみか〜。」
私は気持ちが落ちていく自分に少々、滅入りながら「頑張れ!」と自分を励ましていた。
すると、私の後ろ。つまり、最後部の座席から誰かが私を呼んでいる声が聞こえた。
そこには看護学生と思われる女学生が3人座って、こちらを見ていた。
そして、蚊も殺さないようなか細い声で
「ここ、どうぞ。」と、自らの隣りに空き座席を設け、私に声を掛けてくれたのだ。
勿論、彼女達と私は面識はなく、声を掛けることも勇気がいったことだと私はすぐさま悟った。
こんな「3密」状態で、隣りに座るということは私も流石に申し訳ないと考え、右肩を苦しめていた鞄を座席に置かせてもらうことにした。
「ありがとうございます。とても肩が楽になりました。」
私はその瞬間、肩が楽になっただけでなく、心も軽くなったことを感じることができた。
このご時世、人の情けを感じることが希薄になってきた感があるが、私は今日出会った3人の看護学生がとても頼もしく、これからの医療を支える人材であることに嬉しささえも感じることができた。
ほんの些細なほっこりとした一言が人の心を落ち着かせてくれた。
私はとても気持ちがよく、その後の時間を過ごすことができた。
学生さん、ありがとう!仕事、頑張ってください!
声には出さなかったが、心の中で私はそう叫んでいた。