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「フローになれば成功するでしょうか?」について考えた

自分の持っている能力以上の能力を発揮したい!

なんとも都合のいい話だと思うのですが、ニーズがあれば応える人はいるものです。「あなた史上、最高のあなたになる」的なメソッドと同じように、誤解されがちなのが、「フロー」や「ゾーン」です。


スピードスケートの金メダリストの清水宏保さんはスタートの前に「ゾーンに入る」という表現を使っていました。ハンマー投げ選手の室伏広治さんも『ゾーンの入り方』(集英社 2007年)という書籍を出しています。

ゾーンとは、集中力が高まった状態のことを言います。ゾーンに入れば、人は驚くほど高いパフォーマンスを発揮できます。

日頃から、トップアスリートは自分を極限まで鍛え上げています。それでも体調やメンタルの状態によって、最高のパフォーマンスが出せないことがあります。逆に、本番で最高記録を樹立することもあります。こうした場合、「ゾーンに入った」という表現が使われます。

と言っても、自己新記録を何秒も上回ったり、ハンマーを何十メートルも遠くへ投げることができるという話ではありません。

ゾーンは集中力を高めるけれど。。。

ゾーンは心理学や脳科学の世界では、「フロー」と呼ばれており、ポジティブ心理学の研究者が喜びの研究の題材にしています。

フロー状態(ゾーンに入る)になることで、集中力が高まり、パフォーマンスが上がることは間違いないようです。また、天外伺朗さん(元ソニー役員の土井利忠氏のペンネーム)の著書にもあるように、フロー状態は、組織の機能としても活用できるようです。著書では、ソニー時代、画期的な開発を行ったチームのフロー状態が分析されています。

フロー状態で集中力を高める方法は、各種のノウハウ本を参考にしていただきたいと思います。


ここで考えたいのは、フロー状態で発揮できるパフォーマンスのレベルについてです。

フロー研修の第一人者であるチクセントミハイ博士は、TEDの講演の中で「創造的な活動や高い技術力を必要とする仕事などに没頭しているとき、人々は疲れをしらず、時間の過ぎるのも忘れ、活力と喜びと永続的な満足を体験することがある」とフロー状態について解説しています(TEDカンファレンス、2004年2月)。

ただし、「創造的な活動や高い術力を必要とする仕事」ができるスキルをあらかじめ持っておくことが、フロー状態で高いパフォーマンスを発揮する前提になるでしょう。

フロー状態に入ったからといって、スケートをしたことがない人がオリンピックに出ることはできないでしょう。エンジニアでない人が集まっても、発明品は生まれることはないでしょう。

また、フロー状態の時は、集中力が高まり、感情はない。フロー状態で幸福を感じるのは、高いパフォーマンスで成果を出したあとです。

そう考えると、フロー状態で成功する方法は、普段からスキルを磨くこと、達成するべき明確な目標を持っておくことが前提になりますね。高いスキルと高い目標をフローによって達成したときに幸福感が生まれます。

フローやゾーンは集中力を高める技術論であり、それ自体が成功を約束する法則ではありません。

没頭できるくらいに仕事に取り組むこと。

集中力を阻害する要因はたくさんあります。また、没頭できるだけの仕事に出会うことも大切でしょう。

いやいややりながら、ゾーンに入ることはできないでしょう。

ゾーンやフローは魔法ではありません。


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