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ファントムペイン(幻肢痛)

その人は糖尿病と心不全が悪化して、右脚を切断しなければいけなかった。

古い義足がサイズが合わなくなって、新しい義足が届くから、実習生の私は担当を任された。

「痛いんです、右足首が。」

実習生だった私は言葉に詰まった。なぜならその人の右足首は数年前に切断されていて存在しないのだから。

「幻肢痛ですかね、、難しいですよね、、」

実習生の私はそんな言葉くらいしかその場ではかけられなかった。

「幻肢痛のメカニズムはまだ詳しく明らかにされてないから症状が改善する治療法も見つけるのが難しいですし、存在しない足首の痛みのために痛み止めは処方しないほうが、、」なんて言えるはずがない。目の前でその人は苦しんでいるのだから。

何しろ幻肢痛のリアルな症状を、目の前にして私は「痛み」に対してより前のめりで調べるようになった。理学療法の学校に通い始めて約2年目の頃だった。

シラバスに幻肢痛に関しての教材はなかなか見つからないし、ネットで検索しても、結局わからずじまい。

でもそのとき、ふと、以前の精神科での実習でバイザーの理学療法士が呟いていたことを思い出した。

「痛みに関しては時間があるときに、メルザックの論文読んでみてね~」

つづく

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