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ノルウェーのヘルスハウスとは?~医療界のミニ病院~
前回の記事はこちらから♪
前回の記事で少し紹介しました、私の働くヘルスハウスのもう少し分かりやすい説明を参考文献をもとに紹介させてください(*^-^*)
1.ノルウェーにおけるヘルスハウスの設立背景
ノルウェーでヘルスハウスが設立された背景には、2000年代頃から世界各地で課題となっている、病院と自宅ケアサービスの間をつなぐ包括的ケアの必要性があげられます。近年、特に高齢者や慢性疾患を抱える患者が増加し、病院は過剰な負担を抱えるようになりました。ヘルスハウスは、この問題を解決するために生まれた比較的新しい取り組みであり、短期間の入院、リハビリ、緩和ケアを提供する施設として機能しています。患者は退院後、自宅に戻る前にヘルスハウスで回復と準備を整えることができ、安全で包括的なケアが提供されます。
時系列で説明すると以下のようなかんじです。
2012年: ノルウェーで「連携改革(Samhandlingsreformen)」が施行され、地域医療と病院間の連携が強化される。これにより、ヘルスハウスの設立が本格化。
2010年代中期: ノルウェー国内でヘルスハウスの需要が拡大。複数の医療職が集まることで専門的なケアが提供でき、早期治療や在宅復帰を促進する施設として認知されるようになる。
2014年: オスロやその他の主要都市で、短期入所やリハビリ機能を備えたヘルスハウスが開設され始める。緊急時のケアや在宅医療のサポートとしても機能する。
2020年代: ノルウェー全土でヘルスハウスが普及し、急性期ケア、リハビリ、予防医療の役割を担う。病院や自治体との連携強化を図り、患者の退院後ケアや短期入院の需要に対応する施設として発展。
2.オスロ市におけるヘルスハウスの役割
オスロ市が運営するヘルスハウスは、市内の患者に短期ケアを提供する公共施設です。ヘルスハウスでは、特にリハビリや医療支援が必要な患者を支援しますが、緩和ケアなど提供します。オスロ市内には4つのヘルスハウスがあり、それぞれ異なる自治体の患者を受け入れ、地域社会での健康支援に貢献しています。
3.ヘルスハウスの運営組織
オスロ市のヘルスハウスは「老人ホーム局(Sykehjemsetaten)」という行政部門によって運営されています。この部門は、オスロ市の長期療養施設や短期ケア施設を運営しており、年間約8,000人の患者が利用しています。各施設では、看護師、理学療法士、医師、その他の医療専門職が協力して患者に最適なケアを提供しています。
4.ヘルスハウスの主な業務
ヘルスハウスの主な業務は、以下の通りです:
リハビリ:退院後に身体機能を回復させるための支援を提供します。
病院の負担軽減:病院から退院可能な患者に対し、引き続きケアが必要な場合に対応します。
緩和ケア:終末期の患者に寄り添い、快適な環境でのケアを提供します。
ニーズ評価:今後必要なケアの内容を評価し、自宅ケアや施設入居の準備をサポートします。
5.ヘルスハウスで働く人々
ヘルスハウスは、様々な専門分野の医療スタッフによって支えられています。主に以下のような職種がチームとして働き、患者の回復を助けています:
看護師・専門看護師
医師
理学療法士
作業療法士
介護士
栄養管理士
牧師
6.ヘルスハウスに訪れる患者
ヘルスハウスには、特に高齢者や慢性疾患の患者が多く利用しています。主なケースには以下が含まれます:
病院からの退院後ケアが必要な患者:手術後や病気の回復期に、日常生活に戻るための支援を受けます。
リハビリが必要な患者:体力の回復や機能の向上を目指し、短期間の集中リハビリを受けるための施設です。
緩和ケアが必要な患者:終末期のケアを求め、症状緩和や快適な環境でのケアが提供されます。
包括的医療サービス、という言葉が一番合っているのかなぁと思いつつ、でもヘルスハウスの役割はその地域・自治体のニーズによっても異なります。
なので、具体的にオスロ市はヘルスハウスのリクルート募集で、自分たちの組織をどう説明しているのか、見てみましょう!
現在募集されている作業療法士(私の同僚が引っ越すため辞めることになりました(´;ω;`)悲しい💦)のフルタイム枠
作業療法士募集
職場紹介文
このヘルスハウスは、オスロにある4つのヘルスハウスの1つで、現在77の短期ケアベッドを備え、主に患者の状態確認、リハビリ、専用ユニットに分かれています。患者は主に病院での治療を終えた後に、さらなる状態確認、治療、リハビリを目的として入所し、自宅への復帰を目指しています。患者層は年齢、診断内容、健康課題などが多岐にわたる多様なグループです。
このヘルスハウスでは、医師、看護師、介護職、作業療法士、理学療法士、栄養士などによる多職種のサポートが行われています。また、各部門には食事の準備や提供を担当するサービススタッフが配置されています。日中は受付にスタッフが常駐し、面会時間には訪問者を迎える専用スタッフもいます。
当施設では、技術やデジタルソリューションの活用に積極的に取り組み、未来志向のサービス提供を目指しています。スキルアップと改善活動が重視されており、各部門には専門看護師が配置され、さらに、複数の部門を横断して働く高度な臨床看護師も在籍しています。
ヘルスハウスで作業療法士として働くことは、病院勤務に近い環境です。広範な多職種ネットワークの中で高度な臨床スキルを伸ばす機会があり、専門性の高い患者層と頻繁な患者の入れ替わりにより、充実した専門的な経験を積むことができます。
作業療法士としての役割
・患者への作業療法の提供
・患者の身体的および認知的な機能レベルの評価
・患者と共に目標や対策を計画し、実施
・個別トレーニングの実施
・福祉用具の提供と調整
・居住環境の評価のための訪問
・多職種連携の推進役として活動
・必要に応じて、施設内の他部門を横断して作業療法を実施
・同僚や学生への指導および教育
・自治体や専門医療サービスなどとの連携
老人ホーム局の紹介
私たちSykehjemsetaten(老人ホーム局)は、ノルウェー最大の長期介護施設とヘルスハウスの運営者です。毎年、9,000人の患者が、10,000人の優れたスタッフによって治療を受けています。
私たちのビジョンは、安全な環境の中で人生の豊かさを享受できるよう支援することです。私たちの長期介護施設では「毎日」が、ヘルスハウスでは「毎時間」が重要だと心にとめてサービスを提供しています。オスロ市の24時間介護、リハビリ、ケアを必要とする人々に最高のサービスを提供することを目指しています。また、サービスの質の向上、専門分野の発展、革新に取り組み、将来のニーズに応えることに注力しています。
オスロ市の職場環境は多様性を重視し、スタッフは市民の多様性を反映するべきと考えています。年齢、障害、性別、性的指向、宗教、民族的背景にかかわらず、資格をお持ちのすべての方にご応募を推奨しています。
皆さまからのご応募を楽しみにしています。
7.変化するヘルスハウスの役割
上記の内容で、私が明らかに今までと変わっている紹介文内容は
ヘルスハウスで作業療法士として働くことは、病院勤務に近い環境です。
という部分です。以前私が求人募集に応募した時にはかかれていなかったと記憶しています。
前回の記事 コロナ前後の回復期の現場を肌感で解説 にも書きましたが、コロナ前後での患者さんのタイプが変わっています。フレイル度が高い患者さん≪しか≫来なくなった印象があります。疾患名診断名もありとあらゆる患者さんグループが来ますし、もはやミニ病院だと思っています。うちで最期を迎えるかたもたくさんいらっしゃいます。
このことは、良い意味で、地域リハビリテーションが上手く機能している(病院からの自宅退院と連携やフォローアップが可能になってきている)ともみれます。
8.変化する理学療法士の役割
と同時に、理学療法士の私も、「じゃあ、私の役割ってなに?」という課題が見えてきます。基本的にヘルスハウスで求められているニーズはフレイル高齢者に対するADL超基本動作のトレーニングや福祉用具有無の評価です。
ここまで分かっていてじゃあなんで、ぶつぶつ言ってるの、と思われるかもしれませんが・・・
何が言いたいかというと、現時点でノルウェーでは、
多疾患の要介護がとっても高い超フレイルの高齢者の方への理学療法士としてのADLアプローチが確立されていない現状。
多疾患の要介護がとっても高い超フレイルの高齢者の方へ理学療法士アプローチのエビデンスが倫理的観点から(研究への同意が得られない等の理由)あまりにも少ない。
いわゆる、問診をして、検査して、評価して、治療やトレーニングを開始して、再評価して、、、、という一般的な流れでの理学療法は難しいことが現状だと個人的に感じています。
かといって別に絶望しているとかではなく、年々変わりつつあるヘルスハウスの動向を追うこと自体、私自身とても興味深いと思っているので、これからも自分なりにみんなと議論しながら携わっていければなぁと思います。
長くなりすみません。ヘルスハウスの簡単な説明でした!それではまた!