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ノルウェーのPT実習指導法:スーパーバイザーとしての経験談

現場で活躍する理学療法士の中には、実習生の指導を受け持った経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか?指導において悩んだことや、学生の成長をどう促進すればよいのか模索した経験をお持ちの方もいらっしゃることでしょう。

ノルウェーの理学療法学科では、最終年度に3か月間の実習期間が設けられています。私自身も、現在の職場である回復期リハビリ施設で4〜5人の実習生を担当した経験があります。今回は、ノルウェーでの理学療法実習指導の実体験について、ご紹介いたします。

ノルウェー式の理学療法実習の内容

ノルウェーの理学療法実習では、スーパーバイザーとしての役割と責任が明確に定められています。ここで重要なのは、学生の指導を受ける権利が明記されており、将来の理学療法士を育てるためのサポートが重視されている点です。

大学から期待されるスーパーバイザーの責任

大学側から期待されるスーパーバイザーの責任は以下の通りです:

  • 大学側が用意しているカリキュラムを把握しておくこと。

  • 大学側が開催する実習指導者会議に参加すること。

  • 実習場所で多様で良質な学習環境を整えること。

  • 学生に対して継続的な指導とフィードバックを提供すること。

  • 学生の学習成果記述の達成度を評価すること。

  • 実際の患者さんから同意を得たうえの実技試験をオーガナイズすること。

  • 大学側と随時連絡がとれる体制を整えておくこと。

  • 理論的、実践的、教育的に最新の情報を維持すること。

  • 実習場所に、学生がアクセスできる最新の専門文献が利用可能であることを確認すること。

大学から推奨される「期待会話」とは?

大学から推奨される「期待会話」では、お互いの期待や目標を明確にすることが目的です。実習スタートの週に、学生との対話の機会を設けて以下の事をクリアにします:

  • 臨床実習でうまく機能するためのあなたの強みは何だと思いますか?

  • これまでの科目や過去の実習期間で何が難しかったですか?

  • 今回の期間でのあなたの目標は何ですか?

  • 上記の目標に対してあなた自身はどのように進めていけばいいと思いますか?

  • スーパーバイザーは、あなたの学習プロセスにどのように貢献できますか?(例:実践的な観察、特定の分野に対するフィードバック、フィードバックの形式、希望する協力形態)

  • スーパーバイザーに対する期待は何ですか?

  • 同期の学生(もし学生が2人以上なら)に対する期待は何ですか?どのように共に学んでいきたいですか?

  • 指導教員が知っておくべき特別な事情はありますか?

  • どのような理学療法士になりたいかについての考えはありますか?(専門的または個人的な観点の両方が含まれることがあります)

  • その他のコメント

指導方法の例

大学が推奨する指導方法の一例として、「事前指導→観察→事後指導」があります。具体的な手順は以下の通りです:

1. 事前指導
学生はまず口頭もしくは筆記で、具体的に何の指導をうけたいかを伝える。患者さんの状態、抱えている問題・疾患、本人のもつリソースを確認し、学生自身は今から向き合う患者さんとの時間で目指すゴールはなにか、具体的にどのような検査・評価・治療・トレーニングをしたいと考えているのかを明確に伝える。実際患者さんといる間、指導者は具体的にどのような役割を果たしてほしいかも共有しておく。

簡単にいえば、学生は患者Aさんのことを事前にどれだけ把握していて何を自分がしたいと思っているのかを伝え、指導者は学生が患者Aさんを担当する間、どのような立ち位置でいるか・途中フォローアップが必要か、黙って見ていてほしいか、途中評価のためのメモをとってもいいか、途中口をはさんでいいのかなどを出来るだけクリアにしておくということです。

2. 観察
指導者は、患者/クライアントとの状況で学生がどのように行動するかを観察し、必要であれば簡単なメモなどをとり事後指導に備える。メモ内容は、≪期待会話≫で明確にした学生のゴールや大学側が求める学生が学ぶべき項目をベースにする。

ここで注目した方がいい点としては、「個人的にもっとこうした方がいいと思うけど、、」というような大学のカリキュラムに書いていないことや≪期待会話≫で話していない、いわゆる関係ないことは話さないことです。

3. 事後指導
事前指導と観察でとったメモをもとに指導する。流れとしてはまず学生が、自分自身は患者さんとの時間はどうだったか、計画通りにやれたか、患者さんの反応がどうだったか、もっとこうやればよかった点などはあるかを指導者に伝える。そのあと指導者は、学生のコメントと自分のメモを基に学生に対する具体的なフィードバックをつたえる。事後指導で明らかになったことは、専門的な議論の出発点として使用することができます。

事後指導で例えば患者さんの歩行障害がフォーカスになったとしたら、それを基に理学療法的歩行分析・もしくはどのような検査や評価・トレーニングなどができるか、それはなぜかなどを議論します。ここで重要なのは、一方的に指導するのではなく、学生と共に≪議論≫していくという点です。

次回は、実際に私が担当した学生の指導内容や指導の流れを具体的に書いてみたいと思います。どなたかおひとりでもこの記事が役に立てたらと思います!!お楽しみに~!


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