メルザックとの出会い
前回の記事3つでは、私自身が臨床実習を通して痛みを抱える方々との出会いから、【痛み】と【脳】の関係に引き込まれていくプロセスを話した。
前回の記事を読みたい方はこちらから↓
ノルウェーの精神科で実習したときの話~【痛み】の知識を深めたくなったきっかけ~
ノルウェーの神経科病棟で実習したときの話~【痛み】の世界へどんどん引き込まれていく私~
1.メルザックとの出会い
痛みについてどう理解を深めていいのか迷っている中、精神科実習中のバイザーに「メルザックの論文を読んでみて」と言われた。
たまたま当時母とメールのやり取りをしていた時のメール内容にもメルザックについて話していた私。
・・・どうでもいいけど、ラインでのやり取りでないところが時代を感じる・・・( ゚Д゚)
2.メルザックとは誰?
あまり医療関係に詳しくない方でも分かりやすいような説明がんばります
ロナルド・メルザック(Ronald Melzack)は、カナダの心理学者であり、痛み科学の研究ではパイオニア的存在です。彼の掲げた有名な理論は「ゲートコントロール理論」と「ニューロマトリックス理論」です。
3.メルザックの理論とは?
ゲートコントロール理論
彼は1965年にパトリック・ウォールと共に「ゲートコントロール理論」を提唱し、痛みの伝達が脊髄の「ゲート」によって調節されることを示しました。
どういうことかすんごーくかみ砕いて話すと、神経には「ゲート(門)」と呼ばれる仕組みがあって、このゲートが痛みの信号を通すかどうかを決めています。次の2つのことが起こります:
ゲートが開いている場合:
痛みの信号が脳に送られて、痛みを感じます。例えば、転んで膝を打ったとき、その痛みの信号が脳に届くと、膝が痛いと感じます。
ゲートが閉じている場合:
痛みの信号が脳に届かないので、痛みを感じません。例えば、膝を打ったときにすぐに優しくさすると、さすることで痛みの信号が弱まり、痛みが和らぐことがあります。
つまり、痛みの信号が脳に届くかどうかは、脊髄神経にあるゲートの開閉によって決まるのです。
この仕組みを利用して、痛みを軽減することができる!と、TENSとかマインドフルネスとかが生まれたといわれています。
ニューロマトリックス理論
さらに、メルザックは「ニューロマトリックス理論」を提案し、幻肢痛などの説明不可能だった痛みの原因を追究するため、痛みが脳の広範囲な神経ネットワーク(ニューロマトリックス)によって生成されることも説明しました。
こちらもかみ砕きまくって、かんたーんな説明をさせてもらうと、痛みが脳の中でいろいろな場所からの信号が合わさって作られるというものです。
例えば、コンロの火で右手を火傷したとします。その時感じる痛みは、コンロ火に手が当たったから痛い、という理論ではないと。
ニューロマトリックス理論では、手から火の熱さが脳に伝わり、コンロの火は危ないという大人たちからの教え、火傷したらすぐ冷やさないとだめだよとお母さんが教えてくれた言葉、実際に火傷した昔の経験や病院に行って処置してもらわなければいけなかった記憶があり、火傷という言葉が脳に浮かんだらそれだけで心臓がどきどきしたり、火傷への恐怖感が芽生えたり、もともと自分は痛みに敏感な性格だったり・・・とこれら全てが複雑に合わさって、最終的にアウトプットとして右手に強い痛みを感じて瞬間的に手を引っ込めたり考えなくても勝手にコンロの火を消すとかの行動をする。
4.幻肢痛や慢性の痛みへの理論
幻肢痛にかんしていえば、存在しない体の一部への痛みは脳内で生み出されるものであり、実際の身体の存在や外部の感覚入力がなくても感じることがある、というわけです。
慢性の痛みを抱えている人も、からだのどこにも特別な不調は見つからないのに痛み続ける理由が、この理論だと説明がつく、というわけです。とともに私たちのカラダは思っていたより複雑で色々なものが交差しあっているという難題を突き付けられたのだと思います。
メルザックの論文を読んでどんどん惹きこまれていくわたし。そこから次はノルウェー最大の痛み科学FACEBOOKグループやNOIグループにたどり着いていくのですが、、、、その話は次回。
ここまで読んでいただきありがとうございました!
参考文献
ゲートコントロール理論についてより深く知りたい方はフィジオペディアからの説明文やYoutube動画でも紹介されていますのでぜひ(*´ω`*)
フィジオペディア・ゲートコントロール理論について
ニューロマトリックスに関してはメルザックの論文が無料で見れます。
From the gate to the neuromatrix