【パーキンソン病すくみ足】それでも歩くことを諦めたくない
最寄駅で出会った【すくみ足】で立ち止まっていた彼
先月の話になりますが、、、娘との買い物の帰り道、70代くらいかな?の男性が歩行器を持ったまま駅前で立ちすくしていまして。
周りには30代くらいの男性1人だけで、おそらく彼も心配で気になったのか、そのおじいさんのところへいって「大丈夫?」と声をかけていました。
私たちも彼のところへいって、何があったのか聞いてみようとしたけれど、
「・・・」
返事をしてくれない。表情もかたい。とにかく動かない。
・・・ん?とそこで医療者の勘が働いたのか、彼の歩行器をふと見ると、ブレーキの横に緑のボタン。。。
「あぁー!なるほど!」←なるほどの使い方はおそらく間違ってます。笑
何の診断かはもちろん分かりませんが、パーキンソン病でみうけられる、いわゆる「すくみ足」で前になかなか進めなかったみたいです。
福祉用具大好きPTの私は思わず「あー!これ、パーキンソン用の歩行器ですよね!ほらここにボタンもついてる!」とベラベラ話し出す仕舞い。笑
すると、その話を聞いていたそのおじいさんも、かすかに、かすかにニヤリ・・・( ̄▽ ̄)仮面様顔貌でも一生懸命何かを伝えようとしてくれていることに感激するわたし。
「誰か家族に電話しましょうか?」という質問に顔を横にふって「いいえ」と一言はっきりおっしゃっていたので、そこでお別れすることに。
そのおじいさんは、多分その後1,2分そこに立ちつくしていましたが、そこからやっとこさ、第1歩を踏み出してとことこ歩いて帰っていきました。
前置きがうざいくらい長くなってしまいましたが。。。。
今回福祉用具がテーマです!!!!笑
Gemino 30 Parkinson|歩くことを応援するすくみ足用歩行器
パーキンソン病で「すくみ足」や歩く時の不安に悩んでいる方にとって、日常生活が少しでも楽になることは大きな支えだと思います。自分自身でコントロールが難しく転倒原因のひとつでもある「すくみ足」。ドイツに本社をおく、サンライズメディカル社のGemino 30 Parkinsonは、そんな不安をできるだけ軽くし、自立して外に出かけられるように作られた歩行器です。
ちなみにサンライズメディカル社さんの福祉用具はノルウェーでかなりあちこちで見受けられます。
Youtube動画(50秒です)を見つけたので興味のある方はこちらを見ると、以下の記事内容が理解しやすくなると思います。
普通の歩行器と何が違う?
具体的には3点、いわゆる普通の歩行器とは異なる点があります。「逆ブレーキシステム」や「レーザーガイド」「ドラッグブレーキ」といった工夫が施されていて、安全に歩けるお手伝いをしてくれます。
「逆ブレーキシステム」
通常の歩行補助具では、自分でブレーキをかける必要があることが多いですが、Gemino 30 Parkinsonは手を離すだけで止まってくれる「逆ブレーキシステム」を採用しています。これにより、例えば突然バランスを崩してしまった時でも、その場でブレーキへの力を抜けばしっかり止まってくれるので安心です。
「レーザーガイド」
歩こうと思っても、足がすくんでしまう「すくみ足」。Gemino 30 Parkinsonには、そんな時に前方に「ここに一歩!」という目印を示してくれる「レーザーガイド」が付いています。リハ現場でもレーザー使用はされているところは日本にも多いかと思います。このレーザーを見て、次の一歩はどこにするべきかが視覚で確認できます。
「ドラッグブレーキ」
Gemino 30 Parkinsonは、歩く速さが自分のペースに合うように「ドラッグブレーキ」を調整できます。これは歩行に「ちょっとした抵抗」をつけて、歩く速さを調整しやすくするものです。歩きすぎて転びそうになる心配が減り、スムーズで安定した歩行を続けられます。自分の好きなペースで歩けるので、より落ち着いて歩くことができ、安心してお出かけが楽しめます。
ちょっと文章だけだと説明が難しいですね💦動画は50秒ほどなのでぜひ見てみてください。
アセスメント時に確認すべきこと
私自身が患者さんにのために申請した経験
ただただ「これいい!100点満点!」な福祉用具は存在するわけがなく、どの福祉用具にも良い面・アセスメント時に気をつける点があると思います。
私自身7,8回くらいこの歩行器を患者さんのために申請した経験があります。その中での経験談を少しここで。。。
1.本人に歩きたいという意思があるか
ここは一番大事です。
回復期リハで90代の自宅に戻りたい患者さんが以前いて、身体がと~っても硬かったですが、歩行もまだ可能で、認知低下も全くなく(!)、操作も理解して、何よりご本人自身が歩きたい!という意思が非常に強く試してみたいということだったので申請して使ってもらうことに。結果的にご本人はとても満足して自宅でしばらく暮らしされていました。
もうひとつ。。。以前Gemino Parkinsonをもともと使っている70代患者さんが転倒し自宅退院が困難なため、回復期にこられた時の話ですが、、、その方は病状の進行がとても早く、薬も残念なことにあまり効果がなく、歩行が誰かのアシスト無しでは不可能な状態でした。トレーニングが本当に大好きで、歩けるようになりたいとお話ししていたものの、前脛骨筋の緊張が今まで見たことないくらいすごく、「すくみ足」のときの身体全体のこわばりもすごかったです。ありとあらゆるバランステストも全ての結果は「転倒の可能性大・大・大」トレーニングベルトは必ずつけながらの歩行トレーニングでした。
退院後の参加や活動をどうしていくかという話がでてくるなか、信頼関係を築いていく中で、その方の考える「自立」の本質を理解しようとしたとき、その方が一番大切にしていることは「歩く」ことではなく「自分で作業したい」ということでした。
誰かに頼ることなく、
自分でトイレにいきたい
自分で娘や孫のところへ行きたい
自分で本を読みパソコンで仕事をしたい
あと、すっごくせっかちな性格の方だったので(笑)「誰かが来るまで待つとか無理、さっさと自分でやりたい」とよくおっしゃっていました。
結果的には、もともと予定していた引っ越しの時期を早め、ユニバーサルデザインが優れている高齢者向けマンションへ引っ越し、手すり等がない場所での一人での移動・移乗は車いすもしくは誰かと一緒に歩行器を利用し、歩行トレーニングは理学療法士と一緒に今後も続けていく、という形で退院されていきました。
2.認知機能はどうか、操作を理解できるか
上記で話した90代と70代の方もそうですが、認知機能は低下がみられず操作も十分理解されていました。Gemino Parkinsonはボタン操作などの点も含めて認知機能のアセスメントは欠かせないと思います。特に、今まで普通のGemino歩行器を利用していたけど、そこからGemino Parkinsonに移行する場合などは特に要チェックしています。理由は、形が似ていて操作ミスを起こしやすいからです。
3.メンテのフォローアップは誰がするのか
基本的には利用者さん本人からメンテ担当の方に連絡を入れる、という形が望ましいですが、特に高齢の方になると認知機能がじわぁっと低下していき何か用具に不調があるとき、メンテまで手が回らなくなるなったり、そもそも気づかな方が多々です。ノルウェーでは基本的にはこういう福祉用具は作業療法士の同僚もしくは理学療法士が担当することが多いです。上記の駅前で出会った70代の方のボタンがすぐつかず、おそらくメンテしてもらった方が良いレベルでした💦
4.なぜGemino Parkinsonでなければならないのか
すくみ足等の症状の進行具合にもよると思いますが、パーキンソン病を患っていても、普通の杖や歩行器を利用している方はたくさんいます!ただ単に「パーキンソンだからパーキンソン歩行器ね〜」ということではなく、理由付けはかなり大切だと思います。
5.日常生活での環境設備はどうか
他の歩行器でもそうですが、使用の際は、杖と違って幅を取ります。その方のお家のことを十分に理解した上で最終的にどれが一番日常生活の質を良くできるかを考えないといけないと思います。
長々と書いてしまいました💦すくみ足って、多分本人じゃないとわからないくらい、歩行への不安が高まる症状だと思うんです。だって自分でコントロールが効かないのだから。でも、それでも歩きたい!って思うその尊敬に値する気持ちを少しでもサポートできる福祉用具の一つだと思います。
ここまで読んでくださりありがとうございます!