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コロナ前後の回復期の現場を肌感で解説

※まずはじめに私の働く回復期の定義

病院から退院した高齢患者さんの、自宅退院までのサポートをする、いわゆる回復期リハで働く私ですが、最近「回復期リハ」という言葉を使うことにとても違和感を感じてきました。

理由としては、

1.おそらく日本の介護保険制度下の回復期リハビリの定義とノルウェーの定義が若干システム上違う

2.コロナ後の患者さんの【病状・症状の重症化】の顕著さ

3.いわゆる「リハ」が可能な患者さんはほぼ全員自宅へ退院して地域リハサービスをうける

これらの点を含めたうえで、私の肌感で感じる「回復期のこれから」をつらつらと書かせていただきます。


1.「ヘルスハウス」~減るセラピストへの人件費・増える要リハ患者数~

正確には私の職場は「回復期」や「短期リハ」ではなく、「ヘルスハウス」という名称を持っています。オスロ市の老人ホーム局の管轄下にあります。次回「ヘルスハウス」の歴史についてもう少し詳しくお話しします!

現在の職場で働き始めて6年弱(現在は育休中)ですが、ここ数年、特にコロナ明けから少し考えることがあります。

それは、いわゆる回復期リハで働く理学療法士の人件費削減、それに見合わない、理学療法が必要なとてつもなく多い患者数

それに追い打ちをかけるような(本来なら本当にとっても有難いことです!)患者さんや家族の理学療法士への機能回復やトレーニングへの期待。

セラピストの人手不足解消を求める声(理学療法士のオスロ市での就職競争率は他の地域に比べていまだにとても高いです!=たくさんのセラピストがオスロの病院で専門療法士としてや、オスロ市・自治体セラピストとして働きたい傾向)。

忙しい毎日で、考えたくても考える余裕がない:そんな日々を日本の回復期や老健短期リハの方々は感じている方は多いのではないでしょうか。

今回は、私の肌感で感じることを、データや参考文献を交えながら緩く書いていこうと思います。

2.2019年と2024年の状況比較

高齢化社会真っ只中で追い打ちをかけるように起こってしまったコロナ。

コロナ前年の2019年から現在の職場へ転職をしました。いわゆるコロナによる規制がほぼ無くなり《通常営業》に戻ったのですが、明らかに患者さんの退院時の病状の重症度やフレイル度がコロナ前より悪化していることに同僚もみな気づいていました。

「患者さんが前よりもかなり症状が重い状態でうちに来るね・・・」

そんな会話があっちこっちで、メディアでも取り上げられるようになりました。

しばらくすると、リハビリユニットのみでなく、ヘルスハウスの建物内での以下のような短期入所ユニットもぽんぽんぽんっと作られていきました。

〇緩和ユニット(主に痛みの激しい癌末期の方)

〇特別ユニットケア(主に認知症の方)

〇短期判定ユニット(退院後や在宅療養中の患者が短期間の入所を通じて機能回復や今後のケア方針を判断するためのユニット)

〇若年認知症ユニット

〇薬物依存ユニット(合法的な薬物の使用が許容されているユニットも有)

〇精神科ユニット(高齢者の精神的な課題に対応するためのユニット)

などなど、他にもあります。

以前までは、肌感で言うと、「うちにきたらトレーニング!」という印象を持つ方が医療者・患者・家族はじめ多かったのですが、先日オスロ市のHPで確認をすると、以下のようにまとめられていました。

ヘルスハウスと老人ホームの違いは何でしょうか?ヘルスハウスは、強化された老人ホームの一種で、医師、理学療法士、作業療法士、看護師など、さまざまな専門職による高度な専門知識とリソースを投入したケアが提供されます。ヘルスハウスの主な役割は、介護、リハビリ、機能回復訓練、フォローアップケアです。

オスロ市HP https://www.oslo.kommune.no/helse-og-omsorg/omsorgsbolig-og-sykehjem/sykehjem/sok-sykehjemsplass/#gref


3.病院の負担を減らすための、もはや、いわゆるミニ病院

病院への不要な入院を減らす役割も持つ職場なので、急性・亜急性・慢性すべてのタイプの患者さんが転院してきます。

治療方針が緩和中心決定になった患者さんは、体調が急変しても、こちらで最期を迎えることも多くなりました。いわゆる看取りです。

基本的に体調急変で病院へ≪舞い戻る≫パターンは心臓血管系や、うちでは治療不可能な場合の呼吸系のみです。

感染等による抗生物質治療の必要性のみなどは、病院への入院理由となることはほぼないです。

4.回復期リハ《ヘルスハウス》の変わりゆく役割

そして、もうひとつ、明らかに変化していること、それは

そもそもADL基本動作が出来る患者はうちに来なくなった。

良い意味で言えば、

・地域リハビリテーションの促進の発達
・病院と地域自治体の連携の向上
・患者さんの診断名ではなく、リソースや機能に焦点を置くようになった
・多職種連携の必要性を感じざるを得なくなる

クリティカルに考えるのであれば、

・じゃあ、私たち理学療法士はこれからここで何をどうすればいいの?
・フレイル度がめちゃくちゃ高い患者さん≪しか≫来ないなら、短期で機能回復を目指すという意義は?エビデンスは?
・減らされていく人材と周りからの期待のGAPをどう埋めるの?

などなど山ほど議論したいことはあるのですが、今日はここまでにします。

最後に

皆さんお気づきかとは思いますが、私の記事は最後のまとめ・完結系の記事は少ないです。どちらかというと、きっかけのテーマを投げて種まきしているかんじです(笑)

今回は、私自身は理学療法士としての役割を考えるきっかけになったこの社会動向(コロナ)や患者さんのタイプの変化など、シェアして、同じような立場にいる方とシェアしたいなぁと思って書いてみました。

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それではまた!


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