見出し画像

ノルウェーでの9週間実習指導体験 ~第6・7週~ 実習指導とリハビリは似通ったものがあると思っている私です

ノルウェーの理学療法学科では、最終年度に3か月間の実習期間があります。私も現在の職場である回復期リハビリ施設(ヘルスハウス)で4〜5人の実習生を担当させてもらいました。

ここでは、ノルウェーでの理学療法実習指導の体験を数回に分けて紹介します。

前回の記事はこちら →
[第1週: 「はじめまして」の週]
[第2・3週: 患者さんを受け持ち、トライ&エラーを繰り返す週]
[第4・5週~ 中間実技試験とレポート提出]

後半戦スタート


この時期の学生は中間実技試験・レポート提出も終わり少しほっとしている時期です。学生によってはレポート再提出(不合格とかではなくよくあること)もありますし、そのままパスして実習に集中できる場合もあります。

私が指導者として心がけていることは、中間実技試験で学生がもらった大学側からのフィードバックをメモしておいて学生がレポート提出を大学側にする前に1,2度一緒に見直してアドバイスをするようにしています。

アドバイスの内容はほとんどの場合が「レポートの全体の流れに一貫性をもつこと」です。臨床的推論および専門的根拠の部分で学生はよくつまづきます。でも私個人の経験としては、ほとんどの学生は頭の中では理解できていて、それが言語化できていない、という印象があります。

例えば歩行観察をして、そこから分析・理由づけしないまま、下肢筋力テストをする…ということはあるあるです(私もそうでした、今もたまにそうなることもあります💦)。歩行分析のどのフェーズをみて、おかしいと思ったのかという点を指摘してみて、そこから議論を一緒に深めてレポート全体に一貫性をもたせる作業を地道にします。


指導者としての現実は、時間に追われる日々の連続


スーパーバイザーを受け持たせてもらえることはとても有難く、自分自身にとってとても良い刺激になっています。しかし私の職場ではバイザーをするからなにかタスクが減ることはなく、臨床と両立しながら行わなければいけません。ちなみにお給料も特に上がることはありません(笑)(他の職場はスーパーバイザーとしてのポジションが存在したりします)。大変と言えば大変ですが、私はそれ以上に、学生が将来ここで実習した時のことを思い出して励みにしながら理学療法士として働いてほしいという気持ちが強いのと、やはり自分自身がとても学生からの質問に刺激を受けるのでWin-Winじゃないかなぁと思っています。

あとは学生と9週間を通して距離を縮めていきながらお互いを理解していく、学生の成長を忍耐強く見守りサポートする、そのプロセスも、医療者として必要なセンスではないかと感じています。というか、患者さんのリハビリのプロセスと似ているなぁと感じます。目標設定をしてその人の良い部分(リソース)を引き出しながらモチベーションをキープしてもらいつつ、トライ&エラー&エラー&エラー&トライ&エラー(笑)でアップダウンを経験しながらゴールへ近づいていく

そしてなにより、これからの少子化・人手不足が加速していく中で、医療者としてやりがいを感じてもらい理学療法士として社会に貢献したい、と実習を通してより強く感じてもらうことは、指導者としての一つの使命なのかなぁと思う部分もあります。

苦手分野を克服してもらおう!

ではでは、話を今回のテーマに戻します。第6・7週では、中間実技試験で学生が残りの実習期間フォーカスしていく分野をもとに担当患者さんを受け持ってもらいます。神経疾患系の患者さんをまだ受け持っていなかったら脳卒中やパーキンソン、呼吸系だとCOPDや肺がんなど、学生のニーズに応じて出来るだけ適切に担当をふりわけます。この時期になると、必要であればより専門的な技術や道具・ハンズオン理学療法の特訓など前半戦で間に合わなかった部分も補うようにします。

そして学生に自分はこのチームの一員なんだという認識・責任感をもつ経験をしてもらうために少しずつ、適度にタスクを増やします。例えば担当患者さんの転院から退院までの全ての流れを1人で受けもつ場合もあります。

一連の流れの例
1.患者さんが転院して来る日もしくは翌日に挨拶
2.患者さんへの問診・ゴール設定
3.ADLの分析
4.患者・家族・ケアワーカ―とのミーティング
5.理学療法・トレーニング・ジャーナル記録
6.必要であれば作業療法士と協力して自宅訪問
7.ケアワーカ―との毎週のミーティング参加
8.退院準備(福祉用具は自宅に揃っているか、目標を達成したかの検査・評価)
9.必要であれば自治体・地域リハの担当理学療法士へ連絡を入れ情報交換

この一連の流れを実際に経験してもらうことで、より多職種連携の大切さを実感してもらったり、理学療法士として自身がどのように貢献できるか、そこに存在するジレンマを実感してもらいます。

ほとんどの学生はこの経験をすることによって、現場で働く理学療法士がどれだけの仕事量を一日でこなしているかを理解して、ほとんどの学生は「こんなにすることあるんすか・・・」と驚いています。

私の職場は一人の理学療法士は約10人前後の患者さんを担当しているので、そこでどう優先順位をつけながら仕事をこなしていくかの経験もしてもらいます。

この時期になるとバイザーとして、私は学生によく「あなたの患者さんについて教えてもらっていい?」と、学生に丸投げ(のように話しかけますが実際はきちんと陰でフォローアップをしています)して、症例紹介のプレゼン・言語化をがんがん練習してもらいます。あとは、私自身の担当患者さんについて「こういう患者さん担当今しているんだけど、どうアプローチしていいか色々考える部分があって、あなただったらどうする?」と逆パターンで学生にアウトプットの練習や同僚との議論やアドバイスの仕方、熟考のトレーニングをしてもらうようにしています。


いいなと思ったら応援しよう!