②Kieran O'Sullivan氏 腰痛セミナー
こんにちは!
ノルウェーの理学療法協会が、腰痛専門の研究者・教授・臨床者であるKieran O'Sullivan氏を招いてWebinarを開いてくれるということを知り参加してきました。
セミナータイトルはずばり!
Low back pain rehabilitation: how can ‘physical’ rehabilitation professionals address ‘non-physical’ factors?
「腰痛リハビリテーション: ‘物理的’リハビリテーションの専門家は、‘非物理的’要因にどのように対処できるのか?」
とても内容も興味深く、私自身講義の最後に聞いてみたかった質問なども聞けたので、数回にわけて投稿していきます。
前回の記事を見ていない方はぜひこちらからどうぞ♪
1.非物理的(Non physical)ってなに?
一般的なセオリーの続きとして、オサリバン氏は非物理的要因とは一体何かの説明もしてくださいました。
皆さんも、この画面をスクロールして【答え】を見る前に少し考えてみてください。非物理的って何だと思いますか?
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1.画像診断や薬物療法を除外(Leaving aside imaging and medication)
画像にうつる【身体のわるいところ】を焦点としていないということ
2.教育(Education)
心理的・社会的な側面が痛みの持続や増悪にどのように関与しているかを理解してもらうことだったり、ストレス管理の技術や適切な生活習慣のアドバイスなど
3.運動(Exercise)
特定の運動やアクティビティーなどのアドバイスなど、座る時間が多いのであればその部分を少し掘り下げていったり
4.ライフスタイル(Lifestyle)
睡眠、食事、アルコール摂取、薬物使用、喫煙といった生活習慣の改善など
5.心理的要因(Psychological)
ストレス、気分、不安、破局的思考(catastrophising)、過剰警戒(hypervigilance)、回避行動(avoidance)など
6.社会的要因(Social)
社会経済的状況(SES)、人間関係(relationships)、仕事と生活のバランス(work-life balance)など
近年の研究で、痛みと患者さんの人生を取り巻く非物理的な側面が関与しているのはだんだん明らかになってきているのですね。だから痛みを抱える患者さんに対して物理的アプローチのみをしても痛みは改善しないことが多々・・・
2.筋骨格系セラピストがもつ、非物理的アプローチへのためらい
オサリバン氏は、セミナー後半に向けて、多分この課題提起をしたかったのかなと感じます。
みなさんは、腰痛患者さんを受け持ったことがありますか?
どれだけ細かく丁寧に検査・評価・治療をしても一向に腰の痛みがなくならない患者さんを受け持ったことがありますか?
そして、もしかしたら「仕事でのストレス」が痛みと関係してるかもしれないけど「自分がどうこうできる問題ではない」と思ったことはありませんか?
3.【ためらい】を研究した論文
オサリバン氏は、非物理的アプローチを行うことにためらいを覚えているセラピストたちについての研究も紹介していました。
Synnott et al 2015(理学療法士対象):
非物理的要因は「部分的に認識」されているものの、腰痛(LBP)の機械的な側面を優先して取り組む傾向がある。
スティグマ(社会的偏見)や、必要なスキルと自信が欠けていることが、非物理的要因へのアプローチをためらう理由として挙げられている。
Zangoni & Thomson 2017(理学療法士):
「別のコースを受講する必要がある」と感じている。
理学療法士が、非物理的要因に対する十分な教育やトレーニングが不足していることを示唆。
Sampath et al 2021(オステオパス):
現在のオステオパシーの実践はバイオメディカルモデルに基づいており、心理社会的・生物学的モデル(BPSモデル)を取り入れる必要があることを認識しているが、さまざまな障壁が存在している。
理論的にはBPSモデルの重要性を理解しているものの、それを実際の臨床に取り入れることが難しいと感じている。
4.非物理的要因管理はそのままでいい?
続けて、セラピストが抱えがちな不安や懸念、ジレンマについても言及していました。
私の患者には必要ない?(Not in your patients?)
非物理的要因が自分の患者には該当しないと考えている?
すでに得意だからいい?(Already great at this?)
非物理的要因の管理において、すでに十分なスキルがある(から必要ない)と感じているかもしれない。
法的・規制上の制約?(Legal/regulatory constraints?)
非物理的な要因に関与することが法的・規制上の制約に抵触する可能性。単位だとか理学療法士の専門性を無視しているだとか。
スキルセットへの懸念?(Skillset concerns?)
スキル不足や、非物理的要因へのアプローチに自信がないと感じている。重要だと認識しているが、「誰かがやるべきで、私は違う」と考えることがある。評価: 難しい質問をする必要があり、それを避けたいと感じる可能性。治療: 非物理的要因を考慮しても、治療方針が変わらないのではないかという懸念。
非物理的要因の管理に対して、私たちセラピストが感じている障壁や不安が指摘され、個人的には法的・規制上の制約という部分はハッとしたものがあります。
皆さんはどう思いますか?同じようなことを疑問に思ったことありませんか?
今日はここまでにしたいと思います。
次回は、非物理的アプローチとして具体的にオサリバン氏が提案する内容をお話しさせてください。
前回の記事を見ていない方はぜひこちらからどうぞ♪
それではまた♪