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フレイル高齢者のリハビリ:時間と人材のない医療現場の困難と未来への提案

※この記事は2023年8月にXで投稿したものです。

🔶フレイル高齢者へのリハで、なぜ十分な【時間】と【人材】が必要なのかをアカデミックに紐解く🔶

数年前に看護師&ケアマネ同志と書いたリハビリ&コーポレーション&リーダーシップコースで書いた論文の中身を少し日本語で公開。

テーマはフレイル高齢者の患者さんに対して回復期&生活期リハビリに携わる医療者の経験談INノルウェー。人手不足・予算不足・業務の効率化がノルウェーの医療業界で叫ばれています。

「人口減少社会の流れは止められないから仕方ない」と思うか、それとも発展するテクノロジーと共存しながら時間・人材確保の重要性の視点を忘れずに医療者として働いていくのか。これによっても患者さんとのかかわり方・サービスの質は変わってくると私は思っています。

日々医療者が感じているであろう「もっと時間があったら…」の声なき声を、今回の論文で少しアカデミックな視点から考察しています。

🔶フレイル高齢者へのサポートで時間と人材が重要である5つの理由🔶

1⃣どうしようもなく無力な状態
リハビリテーションを必要とするニーズが大きく複雑なフレイル高齢者は、自分自身に対して否定的な見方をすることがある(ノルウェー保健総局, 2017)

そのため、リハビリ開始時期では、自分自身を無力な存在ととらえ、医療従事者に決定権や権力を移譲する傾向がある(Aasen et al, 2021, p.2326)

このような「無力」な状態において患者は、そばにいて対話と連携ができる医療従事者を必要となる(Aasen et al, 2021, p.2326)

2️⃣ 痛みや認知機能の低下などすべてが一度に起こる

ニーズが大きく複雑なフレイル高齢者は、痛みや認知機能の低下、不慣れな環境で短時間にたくさんのことが起こることに心身ともに影響を受ける。

Olsenら(2021)は、多疾患合併高齢者の病院から回復期施設への移動時期に関して、適切な時間とリソースを確保することの重要性を強調している。

3⃣継続性の欠如は、フレイル高齢者にとって多大なコストと弊害をもたらす。

Sogstad & Bergland (2021)は、患者グループが大きく複雑なニーズを持つ高齢者である場合、患者自身の価値観やニーズを考慮したサービスを多職種と連携をとりながら提供することの重要性を指摘している。

サービスの継続性を確保するためには、十分な時間をかけることが必要である。継続性の欠如は、高齢の患者にとって、コストがかかるだけでなく、健康弊害になる可能性もある。

4️⃣ "なんかいつもと違う… "を素早くキャッチする

患者をよく知ることで、高齢患者にとって "いつもと違う "ことを認識しやすくなり、それに基づいて臨床評価を行うことができる(Olsen et al.)このことはWhittemore (2000)によっても支持されており、患者を十分に理解していないと、健康状態の悪化の発見が遅れ、再入院につながる合併症のリスクにさらされる。

5️⃣ 患者をよく知らないことによる、専門家としての誤った判断

Whittemore(2000)は、医療従事者自身が「この決断は難しいな、判断が間違っていたな」と感じるのは、患者をよく知ることができなかった結果であると指摘している。複雑なニーズを持つ高齢患者に十分な時間と資源を割くことは、必ずしも一方的にコストがかかると考えられやすいが、再入院や不必要な転院を避けるという点で、社会経済的な利益をもたらす可能性もある。


いかがだったでしょうか?「時間と人材が必要なんて、そんな当たり前なこと・・・」と思われるかもしれませんが、意識的に重要性を認識していくことで患者さん一人ひとりとの時間の過ごし方は変わってくると思いますし、十分な時間が確保できない時のリスクや弊害も自覚できます。

ノルウェーの地方選挙が近づく中、私自身はこういう視点を持ってくれている政治家を全力で応援しています⚡️🔥少しでも社会が今よりもっと素敵な方向に進んでくれるために、自分に出来る努力をしながら、私はこのテーマを追求&発信し続けたいです。

参考文献
Helsedirektoratet. (2017, 21. november). Oppfølging av personer med store og sammensatte behov. Hentet fra https://helsedirektoratet.no/veiledere/oppfolging-av-personer-med-store-og-sammensatte-behov

Aasen, E, M., Nilsen, H,K., Dahlborg, E., Helberget, L, K & Kjelsvik, M. (2020). From open to locked doors- From dependent to independent: Patient narratives of participation in their rehabilitation processes. Journal of Clinical Nursing WILEY. 30(15-16) 2320 - 2330 https://onlinelibrary-wiley-com.ezproxy.inn.no/doi/epdf/10.1111/jocn.15771

Olsen, C, F., Bergland, A., Bye, A., Debesay, J & Langaas, A, G. (2021). Crossing knowledge boundaries: health care providers’ perceptions and experiences of what is important to achieve more person-centered patient pathways for older people. BMC Health Service Research,21(310) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33827714/

Sogstad, M. K. R. & Bergland, A. (2021). Sårbare sammenhenger i helse- og omsorgstjenesten til eldre pasienter. Tidsskrift for omsorgsforskning, 7(2), 9 – 28 https://doi.org/10.18261/issn.2387-5984-2021-02-02

Whittemore, R. (2010). Consequences of Not “knowing the patient”. Clinical Nurse specialist CNS. 2000 Mar;14(2):75-81.
https://doi.org/10.1097/00002800-200003000-00010

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