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期待値がプラスのギャンブルで勝利確率を最大化する賭け金を数学的に求める
世の中の資金管理システムは、最終的な資金を最大化することを目的に計算されていることが多いです。今回の検証では、最終的な資金を最大化するのではなく、勝利確率(最終的に資金が増えているかどうか)を最大化する掛け金を求めてみます。
いきなり抽象的な話に入る前に、簡単なところからスタートします。まず、51%の確率で1倍勝つ(2倍になる)ギャンブルをケリー基準に基づいて行うことを考えてみます。ケリー基準については、こちらで導出しているので、宜しければご覧ください。期待値は2%なので、ケリー基準によると最適な掛け金は資産の2%です。
このギャンブルをn回行った時、最終的な資金が元より増えている確率はどれくらいでしょうか。賭けで勝った回数をm回とすると、最終的な資産は以下の式で表せます。
$$
G=(1.02)^{m}(0.98)^{n-m}
$$
最終的な資産が1を超えているために必要な勝利回数の割合をy=m/nとすると、その値は以下の式で求められます。
$$
1=(1.02)^{y}(0.98)^{1-y}
$$
計算が面倒くさいのでwolfram alphaに突っ込みます。
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もし1000回賭けたなら、1000回の内505回勝利していれば良いらしいです。じゃあ1000回の内505回以上勝利する確率ってどんなもんでしょうか。今度はこいつに計算してもらいます。
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どうやら37%の人は最初の資金より増えないようです。
少し脱線しますが、ギャンブルの勝率が55%の時についても求めてみます。
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最初の資金より減る人は僅か5%しかいません。51%のギャンブルより圧倒的に損する人が減っているのは非常に興味深い事象です。
確率の低い賭けに対し、ケリー基準のようなベッド額が資産の割合に基づくシステムを使った場合、最終的に損する人がかなりの割合でいるという結果が見えてきます。
一般化する
上の計算から、勝利確率を最大化するには、$${y}$$を最小にするような掛け金を計算すれば良いことが分かります。ではそれを求めてみましょう。任意の掛け金$${x}$$の場合、式は以下のようになります。
$$
G=(1+x)^{m}(1-x)^{n-m}
$$
$$
1=(1+x)^{y}(1-x)^{1-y}
$$
式をwolfram alphaに突っ込みます。
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この式を解析します
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多分wolfram alphaがバグってますけど、微分を見たら全範囲で正だったので、単調増加です。つまり、できるだけ少額なベッドにする方が勝利確率が高いということが分かります。
ちなみにですけど、$${(1+x)}$$と$${(1-x)}$$の対数比$${\frac{log(1+x)}{log(1-x)}}$$を考えるというアプローチでも答えは出そうです。今回はやりませんが。
結論
賭け額を小さくすればするほど最終的に資金が増えている確率を向上させられることが分かりました。
それから、今回計算したような、51%でしか勝てないような期待値の低い賭けに対してケリー基準のようなシステムを使うと損する確率が割と高いです。
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