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愛のあふれる藍の前でド天然

 一昨日(8月30日)のこと。編集部から早めに退散して、目的地に向かった。有楽町駅前にある“はずの”日本スポーツスクエアに、大学からの友、大野圭介が理事を務める『社会福祉法人 藍』の『ファクトリー藍』が出展するというので駆けつけてみることにしたのだ。

“はず”と書いたのにはもちろんわけがある。
 有楽町駅でいきなり頓挫。Googleマップを開くと、東京国際フォーラムの裏手にあると出る。

「おかしいなぁ。駅から徒歩1分て書いてあんのに…」とぶつくさ言いながら、会社帰りの眼が血走ったサラリーマンの、「一刻も早く電車に乗りたい」という勢いある突進を、ジョーがまたがる豚に近づいてきた力石徹のように、ひょいひょいとかわしながら彼らと逆方向に向かった。しかし、ここでもだ。歩きスマホしながら突進してくるのもかなりいた。場所柄、エリートって思うけど、人としては。。。だね。

 10分は歩いたろう。どう考えてもおかしい。なので、至る所にいる警官の中のひとりに訊こうと思ったが、たまたま目の前にいた若い警官の腰には「神奈川県警」の文字。
 だから、隣にいるボランティアスタッフのような人に訊ねてみたのだが、この警官、ものすごく親切で「どこをお探しですか?」と首を突っ込んできた。

「自分、神奈川なので、あまりこの辺りには詳しくないんですが」と彼は頭をかく。「はい!さっき、神奈川県警の方とわかったので訊かなかったんですよ」とこちらも弁解。だが、彼はスマホをさっと取り出して地図で検索すると、あっという間に場所を理解して、ササッと案内してくれた。来た道を完全に戻る形。

 実はワタシ、地図の見方がまったくわからないのである。東西南北なんてさっぱりで、上か下か、右か左かしかないのである。スマホの上部が、自分の前という考え方。引っ繰り返して見るということができないし、その意味もわからないのだ。

 なんのこっちゃない。駅の改札を出て左に向かっていたのだが、右に行けば駅の真横と言っていいくらいの場所にあったのである。自分はいつも、こういう時間の無駄をするのである。

 走ってもいないのに汗みどろになって入館すると、検温、消毒、LINE登録をしなければいけない。さっそく、手の消毒の仕方からわからなかった。「あれ? 出てこねーじゃん!」ってぶつぶつ言ってたら、「あ、これは足でペダルを踏むんですよ!」とお姉さんがにこやかに教えてくれた。オレは必死に上の鉄板を押していたのである。

 LINE登録も、バーコードにスマホをかざしたまんま、立ち尽くした。「あれ? 動かねーじゃねーか!」ってまたぶつくさ言ってたら、「ここをこうやって、こうやるんですよ!」って、他人の知らないスマホを、いとも簡単に操ってくれた。

 汗はとめどもなく流れ落ちてくる。まるでシャワーでも浴びているみたいだ。だいぶ時間をロスした。ただでさえ、時間がそんなになかったのに…。

 とここで、大野がパッと見つけてくれた。状況を素早く察して、「俺も入ってからのやり方、全然わかんねーんだよ」とひと言。相変わらず、さりげなく良いやつだ。

「理事」なんてたいそうな肩書きだから、てっきりコールマン髭でも生やしてるのかと思ったら、昔からまったく変わらない風貌だった。でも、「おまえも変わんねーな」と返された。もう50目前になって、まったく変わらないというのは、女性ならいざ知らず、男ははたして喜んでいいものかどうか。

 ざっと、お互いの近況を話して、もう、すぐ閉館時間。

 人づきあいが悪く、誰かと一緒に行動するのが苦手なこのオレが、ローリング・ストーンズのライブをパサデナのローズボウル・スタジアムに観に行ったり、ホノルルマラソンに一緒に参加したりしたやつ、といえば、大野がどんな男かわかろうというもの。

 あいつとなら、まったく吞む気にならなくなった酒も、とことん吞めるな。

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