英→英→英→米→墨
1週間の疲れが溜まっていたために、0:25スタートの英・リバプール『BEFORE THE BELL』YouTube視聴は断念。0:00就寝で3:00前起床し、テレビのリモコンでDAZNに合わせる。
見た試合をちょこっとずつ(じゃないのもあるけど)振り返るが、デビューしたての地元選手に花を持たせるため&チケット売るための試合(どこの国でも手法は同じ)等は割愛。
10月21日(日本時間22日)
イギリス/リバプール/エコー・アリーナ(M&Sバンク・アリーナ)
プロモーション:mathroom boxing
配信:DAZN
◇スーパーライト級8回戦
〇カリル・マジッド(26歳=イギリス) GRANT白
●トム・ファレル(33歳=イギリス) RIVAL黒
TKO6回2分33秒
前後に重心を移動するマジッドに対し、ファレルはセンター重心で構え方が木村悠に似ている。ロングレンジからの左ボディが上手いマジッドは、長身ながら接近戦を仕掛けていき、ボディワークを使いながらの左右ボディ合わせが得意なようだ。
5回にマジッドが左右アッパーをみぞおちに決めてファレルを倒すと、続く6回にふたたびボディでダウンを奪う。ここも立ち上がったファレルがスイングをかけたが、マジッドはこれを下がりながらかわしてフックを顔面に、アッパーをボディに突きさす見事な左ダブル。これで都合3度目のダウンを奪い、スティーブ・グレイ・レフェリーのストップとなった。
3:30となり、SKY中継がスタートしたので、放送開始後1試合目の女子だけ見る。
10月21日(日本時間22日)
イギリス/ロンドン/ヨークホール
プロモーション:BOXXER
放送:SKY
◇女子フェザー級8回戦
○カリス・アーティングストール(28歳=イギリス) WINNING白
●バネッサ・ブラッドフォード(39歳=カナダ) WINNING白
TKO2回2分
アーティングストールの右リードは、左を出すためだけの前フリ。初回早々に左ストレートでブラッドフォードを倒すと、踏み込みの浅い1・1・2を軽くバックステップでかわす。2回にもアーティングストールがふたたびダウンを奪い、左狙い打ちオンリーの、試合にならない一方的な展開に。ラウンド終了後、ブラッドフォードのコーナーが棄権を申し出て、試合はあっさりと終わった。
これだけ見れば「さすがオリンピアン」となるのかもしれないが、アーティングストールは、粒ぞろいのUK女子選手の中で一段落ちる気がする。
ふたたびリバプールのDAZN配信へ。
◇コモンウェルス・スーパーフェザー級王座決定戦
○リース・ベロッティ(32歳=イギリス) GRANT白
●アキブ・フィアス(24歳=イギリス) GRANT赤
TKO8回3分
12勝1KO無敗のフィアスが後ろ重心、L字ガードでベロッティを呼び込んで右クロスをヒット。接近したいベロッティのサイドに回り込んでいなすなど、技巧派ぶりを発揮していた。が、距離が近づくと、鋭く威力ある左右フックを振っていたベロッティに「おもしろさ」を感じていた。
すると6回あたりからその攻撃が功を奏し始め、困ったフィアスが執拗なホールディング、クリンチを繰り返すようになる。マーク・ライソン・レフェリーは軽い注意こそするものの、甘い対応と感じた。
最終回、ベロッティが距離を詰めて左ショートフックでアゴを捉えると、フィアスはキャンバスにヒザを着く。勢いに乗るベロッティが連打で防戦一方にさせると、レフェリーのストップと同時にタオルが投げ込まれた。
17勝14KO(5敗)としたベロッティはフェザー級に続き2階級制覇。ホープの応援を、いつの間にか味方につけていた。
◇WBAコンチネンタル・スーパーバンタム級王座決定戦10回戦
○ピーター・マクグレイル(27歳=イギリス) GRANT青・白
●フラン・メンドサ(26歳=コロンビア) LEONE白
判定3-0(99対91、97対93、99対91)
昨年12月、井上尚弥vs.ポール・バトラーの前座に登場したマクグレイルが、初回にメンドサの風変わりなタイミングと軌道の右ショートを喰って動きを止めた。ダメージはあったと思う。17勝7KO無敗のメンドサも、この試合での浮上に賭けていることが窺えた。
しかし、マクグレイルは速いテンポで上下へ攻撃を散らし、左ボディアッパーのカウンターも巧み。速く体を動かして、位置取りも頻繁に変えて波に乗る。リズミカルだから傍目以上にスタミナを消耗していないようで、おそらく20ラウンドくらい動けるのでは? と思わせた。
目まぐるしいマクグレイルの動きにメンドサはについていけず、左フックのリターンだけを狙うのみとなっていた。マクグレイルの攻撃は、考えて空いたところを打つのでなく、様々な部位を3発4発と打ち分けるのがワンセットで体に刷り込まれているが、いずれも軽打。速さの中に緩急がつけば、強弱も付随され、KOも増えるのではないかと思う。
9回に見せた、危険な空間でメンドサの連打をひょいひょいとかわしたボディワーク、そこから流れるように移行する攻撃は秀逸。最終回は左ストレートのリターン、右フックのカウンターでメンドサにダメージを与えたが、コロンビア選手も得意の右ショートで食い下がった。ポイントは大差がついたが好ファイトだった。
◇WBAインターコンチネンタル・スーパーライト級タイトルマッチ12回戦
○ジャック・カテラル(30歳=イギリス) FLY黒・青
●ホルヘ・リナレス(38歳=ベネズエラ/帝拳) VENUM黒・赤
判定3-0(117対111、116対112、116対112)
繊細で几帳面な性格のリナレスは、前足同士がぶつかってしまうサウスポーがどうにも苦手なのだろう(長年見てきて心底感じる)。この日は左足でカテラルの右足を踏みつけること再三だったがこれを利用せず、過剰に意識。最も得意の左ジャブも、サウスポー相手には機能させられず、むしろ捨ててさえいるように思われた(本当にもったいない)。
それでも序盤こそ、右リードをストレート、オーバーハンドと使い分けて効果を発揮していたが、カテラルのスローテンポに合わせて抜け出せない。そして、入り際にカテラルが時折狙うワンツーを軽く合わされていた。
5回にテンポを上げたリナレスだが、ボディムーブのみで攻撃にシフトできなかったため、カテラルもそれについていきやすく、左を狙い打たれて後退してしまった。これが試合の流れをはっきりとかたどってしまった。
ジャブを打てないから足が動かないのか。それとも足でリズムを取れないからジャブを打てないのか。いずれにしても、「ジャブなし」のリナレスは、攻撃の幅が極端に狭まる。右ブローから入る攻撃は、踏み込みがないから距離が遠く、カテラルが動かなくても届かなかった。それでさらにリズムを崩し、リナレス自身のフラストレーションも溜まっていったのだろう。
そんなリナレスに時折左をヒットしてグラつかせたカテラルだったが、最後の最後までリナレスの右を警戒しすぎて、大きなヤマを作れなかった。
10月21日(日本時間22日)
アメリカ/カリフォルニア州イングルウッド/キア・フォーラム
プロモーション:GOLDEN BOY
配信:DAZN
◇IBF女子世界フライ級タイトルマッチ10回戦
〇ガブリエラ・フンドラ(21歳=アメリカ) RIVAL白
●アレリー・ムシーニョ(34歳=メキシコ) REYES黒
KO5回1分18秒
兄セバスチャン同様に、175cmと長身サウスポーのフンドラ。160cmの王者はこれをことのほか意識しすぎ、いきなり左右スイングで迫っていった。けれども、ムシーニョは足が上体の動きについていかずバランスを崩し、フンドラに軽くかわされいなされて左ストレート、アッパーを浴びる。初回終了間際にはフンドラにボディを刺されて後退し、辛くもゴングに逃れた。
初挑戦のフンドラは、初回のムシーニョの勢いに決して飲み込まれず、フルスイングの連打に同調せずに、自身のリズムをしっかりと保っていたのが何より素晴らしい。2回以降もそれを続け、完全に王者を見下ろし、見定めていた。ムシーニョも思い出したかのように時折左右でボディを攻めて、苦しい局面の打開を図ったが、初回に受けたダメージを引きずり、フンドラの左を受け続けてさらに溜まってしまった。5回に左フックでダウンしたときに、ジャック・レイス・レフェリー、もしくはセコンドが止めてもよかった。右フックを受けてフラつき、左を受けてロープによろめくなどは、余計なシーンだった。レフェリーがふたたびカウントを数えたが、コーナーから棄権の意思表示があって、ようやく終わった(※カリフォルニア州ルールで「TKO」でなく「KO」となる)。
◇フライ級10回戦
○リカルド・サンドバル(24歳=アメリカ) EVERLAST銀
●ビクトル・サンドバル(26歳=メキシコ) REYES白
判定3-0(97対93、96対94、97対93)
同性対決は、しっかりと下半身を安定させて打つパンチの効果で世界上位ランカーのリカルドに軍配。しかし、ビクトルは常に打ち終わりに「動く」ことを意識したボクシングの組み立てで、それはそれで有効だった。惜しむらくは、動く前提で打っているために、威力が逃げてしまう点。だからクリーンヒットを奪えても、見た目以上のダメージを与えられない。
対するリカルドは、足を根づかせて打つブローは威力があるが、ビクトルのように打ち終わりに動かないために、まともに打たれるスタイルだ。両者の良い部分が融合されると、とても強くなるのでは……と思いながら、接戦を楽しんで見ていた。
◇WBAスーパーフライ級挑戦者決定戦12回戦
○ジョン・ラミレス(27歳=アメリカ) JAXON金・赤
●ロナル・バティスタ(26歳=パナマ) REYES黒
KO4回2分33秒
自信満々だったラミレスの表情は一変していた。広いスタンスと、前足を極端に内側に絞って置くバティスタが、左ジャブと右ストレートで執拗にラミレスのボディを差してきたからだ。
バティスタの左足は、ラミレスの左足の侵入を防ぎ、ロングレンジからのストレート系ボディ攻撃もまた、前に入ろうとするラミレスの心にストップをかける。威力こそ欠くものの、バティスタの上下へ散らす波状攻撃も、Tラミレスにとっては鬱陶しいものだったに違いない。
しかし、コーナーからの叱咤と冷静な指示により、ラミレスは踏みとどまったように見えた。バティスタのボディジャブに右を重ねて打ち下ろし、これをきっかけに一気に距離を詰めて捕まえた。
それまでにも何度か距離を詰められていたバティスタは、リズムに乗っていたがゆえにボディワークでかわしながらショートの軽打を返していた。が、リズムを崩されてからのラミレスの攻撃の圧力を食い止めることはできなかった。左ボディカウンターを差し込まれてヒザを着き、猛然と襲いかかるラミレスに左右フックを打ち抜かれて再ダウン。ジャック・レイス・レフェリーが試合を止めた。
打たれ脆さが際立ったバティスタだが、戦略はおもしろかった。ラッシュの鋭さで興味を惹きつけるラミレスは、アームブロックの上手さは見せたものの、ボクシングの幅という点で、世界上位ランカーとしては依然として物足りなさを感じさせた。バティスタに一撃でも強打があったら、試合はどうなっていたかわからない。そんなふうに思わされた。
◇NABOウェルター級タイトルマッチ12回戦
○ジオバニ・サンティヤン(31歳=アメリカ) EVERLAST緑
●アレクシス・ロチャ(26歳=アメリカ) GRANT赤・金・黒
KO6回1分13秒
サウスポー同士の世界ランカー対決は、サンティヤンが初回からサイドからの左クロスでテンプルを打って効かせ、左右アッパーから右フックでロチャに鼻血を流させて主導権。ハイガードは要塞のように堅牢で、ロチャの強打をがっちりと受け止めて、ブルドーザーのようにプレスをかけて下がらせた。
しかし、ファイタースタイルであっても緩急や強弱、打ち分けが実に巧み。ロベルト・ガルシア・トレーナーの訓練をしっかりと身に着けて、長所を伸ばしてもらっているのだろう。ジリ貧のロチャを一気に攻め落としに行かず、じわりじわりと痛めつけていく戦略も見事だった。
3回になって、左右ボディブローに活路を開こうとしたロチャ。だが、サンティヤンの左右フックはタイムリーかつ威力溢れており、4回にロチャはふたたびずるずると後退する。
左右フックは的確にテンプルを捉え、これを多分に意識させながら連打に左アッパーを混ぜたのは5回。アッパーは、2回から隠していたようで、コンビネーションの中に差し込んだ一撃は実に効果的だった。
サンティヤンは右フック7連打などでロチャを2度倒した。大量の鼻血も流すロチャのダメージは深刻だった。
6回、サンティヤンは右フックと左アッパーをまともにヒットして、みたびロチャを倒すと、レイ・コロナ・レフェリーはようやくこの凄惨な試合を止めたのだった。
同じカリフォルニア州出身同士ながら、より地元に近く、GBP興行ということもあって、サンティヤンにとっては完全アウェーの雰囲気、状況。だが、それを見事に覆す、サンティヤンの素晴らしいパフォーマンスだった。
余談だが、ロチャは音楽がかかって入場するまでに、かなり長時間を要し、先にリングに上がったサンティヤンを長らく待たせる形となった。意図的ではないのかもしれないが、私の経験上、入場にたっぷりと時間をかける選手は、おしなべて好結果を残せていないように記憶している。相手を怒らせるとかそういうことでなく、自らのリズムを壊してしまっているような気がしてならないのだ。
やはりDAZNで後から始まっていたメキシコ興行(MIURA BOXING)は、ちょうどメインイベント。「これだけ見よう」と思ったら、仕事依頼の電話があったので、音声を消して、電話しながらちらちらと。両者とも、メキシコフリークの私の興味をそそる動きをしていたが、最後は鮮烈なKOに。後日あらためてしっかりと見ることにする。
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