【ボクシング】敵地に乗り込んだプラタが堂々の勝利。クラベルに3-0判定で女子ライトフライ級王座統一
☆1月13日(日本時間14日)・カナダ・ケベック州ラヴァル・プレイスベル
WBAスーパー・WBC女子ライトフライ級王座統一戦10回戦
○ジェシカ・プラタ(メキシコ)WBAスーパーチャンピオン
●キム・クラベル(カナダ)WBCチャンピオン
判定3-0(97対93、97対93、96対94)
これぞ王座統一戦だ──。
マルコ・アントニオ・バレラ対エリック・モラレス。いまや伝説のメキシカンヒーロー対決3合を思い起こさせるハイレベルな打撃戦に釘づけにされた。
昨年行われ、全世界を熱狂させたケイティ・テイラー(アイルランド)対アマンダ・セラノ(プエルトリコ)戦で点火したムーブメントは、確実に女子ボクシング界を燃え盛らせている。そんな思いに満たされた。
バランスを保ち、上体を上下させながら攻め込みたい地元のクラベルを、プラタはしっかりと迎え打つ構え。しかも、ただ待ち構えるのではなく、左足の踵を上手に機能させて距離のコントロールをする。そうしてクラベルの速いコンビネーションを、ステップバックと小さなスウェーバックでかわし、脇を絞って左フック、右ストレートを放つ。これが最短距離を通って打ち抜かれるのだから、クラベルにとってはたまらない。
しかもプラタは右をストレート、フックと折々で微妙に変えてみせる。いずれも肩の動作がなく、クラベルも前がかりになっているためにこれらに反応できない。さらに5ラウンド、連打の中、同じタイミングで発射しながら途中で軌道を切り替えた右ストレートアッパーがヒット。クラベルはこれで鼻を痛めたようで血を流し始めた。また、プラタはリズムや間合いが悪くなると、必ずダブルで強烈なジャブを放ち、これもクリーンヒット。鼻を痛めているクラベルには辛い一撃となった。
プラタは前に出ていくプレスのかけ方を敢えて取らない。ペースを取れずリズムの悪さも痛感したクラベルが、パッと離れたときだけ攻め込んでいくが、基本的には呼び込むかたち。地元の声援に加え、旗色の悪さを常に感じていたクラベルの心情を見透かす戦い方。上体を常に揺するクラベルとは対照的に、プラタは立ち気味だったが、要所で小さく動き、クラベルの動きをしっかりと観察する“見下ろしスタイル”が主導権を握り続けた要因だった。
鼻血も腫れも目立ち始め、一撃の威力だけでなく、連打のクリーンヒットも受け続けたクラベルのダメージは相当なものだったろう。しかし、距離を詰めるタイミングや打つパンチの変化、体を上下左右に必ず動かすなど、クラベルも常に工夫していた。だが、プラタの反応の良さ、ブロッキングの巧みさにかき消されてしまった。
ともに左ボディブローをよく放ったが、正確性と威力でやはりプラタが上回った。プラタの左フックは上下いずれに打つにしても威力抜群。クラベルはしかし、その脅威にめげず怯まず攻め続け、連打の回転力で上回ってみせるシーンも築いた。
バレラ対モラレスを想起させられたのは、猛烈な手数の応酬だけでなく、プラタのボクシングがバレラのスタイルに似ていたからかもしれない。
これで2団体王者となったプラタは、やはり同じくIBF・WBOを手にするヨカスタ・バジェ(コスタリカ)との4団体王座統一戦に向かうのだろうか。
男子だけでなく、女子にもその流れができつつあるのだとしたら、これはおもしろい。そして、明らかにレベルアップしている日本の女子選手たちも、ここに割って入っていく目標をしっかりと掲げてほしい。
前座試合では、女子フェザー級6回戦に出場したキャロリン・ベール(カナダ)が目を惹いた。肩やヒザ、体の各部位をちょっと動かすだけで、フェイントにもリズム構築にも防御にもつながるスタイルの持ち主。小さなステップバックでバランスを戻すかたちもしっかりと癖づいている。対戦相手のエステファニア・フランコ(メキシコ)も、常に相打ちを狙う好選手だったが、ベールは相手の意図を読み切って、素晴らしいボクシングを最後まで続けた。
34歳でこれがプロ2戦目。アマチュアキャリアが長い選手なのだろうが、6回戦のボクシングとは到底思えない技術の高さだった。
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暁視GYOSHI【ボクシング批評・考察】
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