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【ボクシング】中国のジャン、暫定ながらアップセットでWBOヘビー級新王者

☆4月15日(日本時間16日)/イギリス・ロンドン/カッパーボックス・アリーナ
WBO世界ヘビー級暫定タイトルマッチ12回戦
○ジャン・ジレイ(張志磊)13位
●ジョー・ジョイス(イギリス)暫定チャンピオン
TKO6回1分34秒

 2008年北京のジャン。2016年リオデジャネイロのジョイス。五輪スーパーヘビー級銀メダリスト対決は、アウェーに乗り込んだジャンが番狂わせの快勝──。

 リング登場の時点から、無敗(15勝14KO)ジョイスの不安気な表情が気になっていたが、開始と同時にその意味がはっきりとわかった。サウスポー、ジャンとの前の手の駆け引きに過剰反応を起こす。反応が良いというレベルではなく、それは明らかに神経質だった。

 試合前、控室のやり取りが映し出されていた。おなじみイスマエル・サラス・コーチとのミット打ちで、コーチの前の手(右)を払い落とし、バランスを崩させて攻める。そのパターンの確認を繰り返すシーンだ。対サウスポーには効果的なやり方だが、おそらくジョイスには「左構え」に対する苦手意識があったのだろう。

 ジャブというよりも、触角の突っつき合い。ジャンが右腕を立てる。それをジョイスも左腕で軽く叩く。そうして始まった198cm大男同士の対決は、ジャンが右腕をスッと下げ、それにバランスを崩されたジョイスの姿をもって、主導権が決まったように思う。

 ジャンの右が伸びる。続けて放つ左ストレートがヒットする。ジャンはモーション付きとモーションなしの左を使い分ける。そのいずれもがジョイスを混乱させる。ジョイスが左フックを引っかけて右を伸ばすものの、これは届かない。その返しに放つジャンの左がジョイスの顔面を浅くだが捕らえた。

 ゆるやかに、ジャンへと流れだした流れは、2ラウンドに入って一気に濁流となった。動きも緩慢。決してスタイリッシュではないジャンの動きだが、動きが少ないからこそ、突然放つ左が虚を突く。ジョイスがしきりに仕掛けていた逆を取り、ジャンが右フックを引っかけてから放った左ストレートがジョイスの顔面に炸裂。ジョイスは明らかにダメージを負った。続けて放つ左も正確にヒットする。早くもジャンにKOチャンスが訪れたが、しかしジャンはここで圧力を強めない。おそらくスタミナに不安があるために、一気に仕留めることを回避したのだ。

 こういうチャンスを逃してしまうと、試合の流れは瞬時に変わってしまう。足運びが不安定で、パンチに威力も伸びも感じられないジョイスだが、3ラウンドからは距離を詰めて左右でボディ攻めを敢行。4ラウンドには左フックでジャンの右腕を落として右を打ちこむパターンも実行できた。それにより、うっすらとリズムも出てきた。右アッパーをボディに打ち込んで、この日いちばんの強い右をジャンの顔面に打ち込んでもみせた。

 が、ジャンにはゆとりが見えた。敢えて手数を控え、最高のタイミングを待っている様子だった。そうして上下へ放つ左ストレートが、それまでのジョイスの状況逆転の目を一気に引っ繰り返す。2ラウンドには両目下を腫らしていたジョイスだが、特に右目の腫れが酷くなる。5ラウンドには鼻から血も流す。ダメージで動かない足を必死に動かして、不格好ながらサイドからの攻めも見せる。しかし、ジャンは距離を取って両腕を下げ、フリッカージャブを多用。左を打つタイミングを計り、ジョイスを牽制したのだった。

 6ラウンド開始早々、ハワード・フォスター・レフェリーがジョイスにドクターチェックを促す。ここは続行となったものの、ジャンの左が立て続けにヒットすると、ふたたび中断。右目のチェック後に、ドクターの進言を受け入れる形で、両腕が交差された。

 アメリカ・ニュージャージー州ブルームフィールドを拠点にし、長年腕を磨いてきた39歳のジャン。獲得したのは暫定タイトルで、このクラスの真のヘビー級トップとは一線も二線も画す。けれども、覚悟、決断、努力がひとつの大きな実を結んで形となったことだけは確かだ。

《ESPN+ライブ視聴》

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