【ボクシング】阿部麗也の標的ロペスがコンランを壮絶に打ち倒す
☆5月27日(日本時間28日)/英・北アイルランド・ベルファスト/SSEアリーナ
◇TOPRANK、QUEENSBERRY
IBF世界フェザー級タイトルマッチ12回戦
○ルイス・アルベルト・ロペス(メキシコ)チャンピオン
●マイケル・コンラン(アイルランド)
TKO5回1分14秒
サウスポースタンスのコンランは、後ろ足(左足)に重心を置きつつ長い距離を保ち、左ストレートをボディに送る。前足(右足)がロペスの侵入や立ち位置を邪魔する場所にあり、スピードで立ち遅れてしまうロペスにやりづらさを感じさせるポジショニングだった。
けれども、右でボクシングを形成するよりも、左を強く当てようという意識が強いあまり、せっかく利かせていた右足を有効に活用できない。ロペスは左を打ちこんでくるコンランを待ち構え、初回から右アッパーを狙っていた。コンランが右ブローを活用できないのは、不規則に飛んでくるロペスの左フックを警戒してのことだったのかもしれない。そう考えると、ロペスが周到に張った“伏線”だったということになる。
スピード、距離の取り方、技術。一見すると、総合力ではコンランが上回っているように見える。だが、“この試合”に勝つための戦術、勝負強さという点でロペスが1枚上だった。いかにも鈍重なロペスだが、瞬間スピードではコンランを上回り、この不一致こそがコンランを惑わせた。
それでも「打てば当たる」という意識、「打ってダメージを与えたい」という気持ちがコンランを前がかりにさせた。それもきっとロペスの策略だ。おそらくサウスポーに苦手意識があるはずのロペスだが、それを意識から取り払う罠を巡らせていたというわけだ。
3ラウンド、左アッパーをボディに差し、続けて左ストレートを顔面にヒットさせたコンランは、まんまとロペスの思惑にハマった。一瞬気を緩めたコンランに、タイミングをずらして放つロペスの右アッパーがヒット。これでよろめいたコンランは後退し、ロペスが猛攻を仕掛けた。
そこを辛くもしのいだコンランは4ラウンド、右ジャブからの立て直しを図ったものの、ロペスは悠然と左ショートフックを合わせ、体全体の鈍い動きに反して速いコンビネーションを打つ。5ラウンドには右アッパーをボディにめり込ませたロペスは、コンランが右フックを放ち、左を追撃する“タメ”を作ったところへ左フックから右アッパーをワンツーのタイミングで打ち込む。まともにアゴをかち上げられたコンランはキャンバスに大の字となり、コーナーからタオルが投げ込まれた。
キコ・マルティネス(スペイン)に快勝し、挑戦権を手に入れている阿部麗也(KG大和)にとって、有効な戦い方、ロペスの恐ろしさ、その両面がくっきりと見える試合になった。
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