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電車内でよく見かける「ほじほじ」について

 いきなり汚い話になって恐縮だが…と、断っているので、読んだ方は自己責任で。

 去年あたりから、電車内で鼻くそをほじる人を見かける機会がものすごく増えた。“定番の”中年おやじだけでなく、若いお兄ちゃんも。
 幸いなことに、女性がやっているのはまだ見ていないから、そこは本当に救われている(女性にかなり幻滅する機会が年々増えてはいるが、まだ女性に対して色めき立っていたい気持ちは少なからずあるのである)。

 1度なんて、新幹線のデッキで向かい合った60手前くらいのサラリーマンが、こちらが凝視しているにもかかわらず、延々とほじほじ続け、挙句の果てにはパクリ! なんてこともあった。
 ま、これはかなりレアなケース。「よっぽどお腹が空いてたんだろうなぁ」とか、「塩分欲してたんだろうなぁ」と解釈してあげるしかない。たぶん、小さいころはみんなパクリとやった。自分もやった。それはきっと好奇心が働いたから。でも、たいしておいしくもない。だからやめた。そしていつしか「人前で鼻くそをほじるのは恥ずかしい行為」という“規律”が自分の中で確立されていく…はずなんだけど。

 しかし、世間的にまったく話題にならないのがどうにも不思議だった。これだけの情報化社会、ネタに飢えているネット記者が、『公衆の面前で鼻くそほじる現象増加を考える!』なんて見出しを躍らせてもよさそうだろう。だが、いつまで経っても躍らない。だからしびれを切らして自分が書くしかない。ものすごい使命感を抱いて。

 だがなぜ、記事は書かれず、話題にすらならないのか。
みんな気づいていないからなのだ。ほじほじに。あんな目の前でやっているのに。

 ではなぜ気づかないのか。スマートフォンに夢中だからだ。

 自分は基本的に電車内ではスマホを見ない。外の景色を見たい、素敵な女性がいたら見たいというところから出発したのだが、車内のスマホ族の姿を見て怯えたというのが、現在の大半を占める理由。自分以外全員がスマホを見ているという光景に異常を感じたから。
 もちろん、その用途は違えども、一心不乱にスマホを眺める姿は同じ。それがなんとも気持ち悪い。同じことをしたくない。性格がひねくれているというのも多分にあるのだが。

 スマホについてはいろいろと思うところがあるので、それは追々書いていくとして、今回は「ほじほじ」がテーマだ。

 先日、車両最前にある3人掛けシート(シルバーシート)を独り占めしているじいさんがいた。シートのど真ん中に座って、足を組んで、ふんぞり返って。
 自分はやや遠めに乗ったのだが、乗った瞬間に気づいてイラっとした。で、そのままいつものようにドア際に立って、その爺を眺めていた。
 ジジイは左手にスマホを握り、右手人差し指で操作している。だが時折、その右手人差し指があらぬ方向へと進んでいく。そう、鼻の穴だ。

 ぐりんぐりんとこねくり回す。「おいおい、鼻血出ちゃうぞ!」って注意したくなるくらい。そしてやにわにパッと抜くと、足元に指を下ろして親指でねじねじしてパッパと。

 この一連の流れはよく見る光景だから、もううろたえない。だが、いつもそうしているように、このなんとも言えない気持ちを誰かと共有したいから、車内を見回す。しかし、誰ひとりとして気づいていない。下を向いて、スマホに夢中だから。

 ジイは、その流れを何度も繰り返した。もちろん、それでもだーれも気づかない。と、そうこうしているうちに、隣の車両から移動してくる人が、車両間の扉を開けた。きちんと閉めていかず、揺れでバーンと開く。
 じいさんは、それは気にする性質らしい。立ち上がって、取っ手を持って閉める。左手にはスマホを持ったまんまだから、もちろん右手で。

 じいさん、鼻くそほじる。また人が通る。ちゃんと閉めてかない。じいさん閉める。それが実にリズミカルに、何度も繰り返される。

 ちゃんと閉めてかない人もダメ。でも、あの人たちには、「じいさんが鼻くそを取った指が触った取っ手を持った」というバチが当たっている。事情をすべて教えてあげようかとも思うが、大きなお世話だからやめるけど。

 これはコロナ禍になる前からの話。
鼻くそをほじった手、咳を抑えた手、爪を噛んだ手で、そのまま吊革や手すりをつかむ人をたくさん見てきた。自分、決して潔癖症ではない(家の中を見てもらえばわかる。見せないけど)が、さすがにそれは汚いと思うから、以来、吊革や手すりをつかまないようにしている。なにも触らないで、バランスだけで立つというのは、それはそれでボクシング記者として勉強になることもあるから一石二鳥だったけれど。

 そうこうしているうちに新型コロナウイルス蔓延だ。そして、いままた感染者が増加している。自分は、電車の吊革、手すりからの感染が、いちばんの拡大理由だと考えている。

 先日、小田急線内で、刃物を持った輩が何人もを襲った事件があった。いきなり刺された方は無理としても、スマホに夢中で、襲われるまで気づかなかった人がたくさんいたと聞く。

 残念ながら、というか当たり前だが、一歩外に出たら、家とは違う。ある程度の警戒心は常に持っておかねばならない。それが刃物を持つ人間だろうが、鼻くそほじほじ鼻毛ブチブチおやじでも。
 パッと気づける態勢で常にいたいと、自分はいっそう気持ちを強くした次第だ。

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