【ボクシングコラム2023-vol.6】女子選手もどんどん解説登用されてほしい

 日本時間の昨日、アメリカ・インディオで開催されたゴールデンボーイ・プロモーション主催興行。DAZNとともに同プロモーションのYouTubeチャンネルで配信があり、いずれも解説をWBC&WBA女子世界フライ級チャンピオン、マーレン・エスパルサ(アメリカ)が務めた。女子の試合も盛り込まれていたものの、男子の試合が大半。しかし、彼女はまったく臆することなく堂々と務め上げた。いや、英語はとんとわからないが、そのくらいは声のトーンでわかる。

 そして今日。大阪で行われたTMKジム興行は、U-NEXTでライブ配信されたが、こちらは所属フリーとなって、アメリカ・ニューヨークに拠点を移した元WBO女子世界スーパーフライ級チャンピオン吉田実代が解説を担った。

 DANGAN興行を中心に、各地の試合を配信しまくってくれるBOXING RAISEでは、“レジェンド”藤岡奈穂子(竹原慎二&畑山隆則)をはじめ、女子選手が解説を務めたことはこれまでに何度もあったが、いずれも女子の選手の試合だった(と思う)。私の記憶が確かならば、女子選手が男子選手の、しかも重要試合を担当するのはおそらく初めてではないか。そういった意味で画期的な試みで、聴いているだけのこっちがなんだかソワソワしてしまったが、全3試合、両選手の良いところをきっちりと拾い上げ(辛辣に見ていた私が肩透かしを食らうほど)、大役を果たしていた。

 かつて解説といえば、現役を引退した元世界チャンピオン、あるいはもっと昔の話を持ち出せば、郡司信夫さんをはじめとする評論家がするのが常識だった。が、近年は現役選手がどんどん起用されている。
 ゲストとしては以前から度々見かけたものの、メインで何試合もというのはこれもBOXING RAISEが始めたと記憶している。所属ジムが同じ選手だったり、階級が同じ、あるいは近い等で詳しかったりなどなど、試合する選手にまつわる人選は、ときに身びいきになったりすることもある。稀に「それはちょっと……」と感じることもないことはない。また、「やっぱり話し慣れていないから現役選手を起用するのは反対」など、懐疑的に思う向きも少なからずあったよう。
 けれども概ね好評。やはり、リングで戦ったことのある者にしかわからない“戦い”がある。同僚にしか話せないエピソードもある。それを瞬間的に、リングで振る舞うが如く瞬発力を発揮して話してくれる。こんなにありがたいことはない。
 個人的にはABEMAで何度か解説している谷口将隆(ワタナベ=前WBO世界ミニマム級チャンピオン)、U-NEXTの小國以載(角海老宝石=元IBF世界スーパーバンタム級チャンピオン)がお気に入りだ。女子ではやはり藤岡が「なるほど」と思わせてくれた。

 ケイティ・テイラー(アイルランド)、アマンダ・セラノ(プエルトリコ)というスーパーヒロインを筆頭に、イギリス、アメリカ、メキシコなどでは、女性選手が大会場を超満員の観客で埋める。男子のスーパーファイト顔負けのメガ興行のメインイベンターを堂々と務めている。そして、冒頭に上げたエスパルサだけでなく、現役女子世界チャンピオンたちは、滑らかな口調で男女関係なく試合解説を演じている。そんなところにも、女性トップボクサーへの憧憬の強さを感じさせられる。

 日本国内では残念ながら、女子の試合、女子選手へのリスペクトは男子に大きく劣っている。やはりまだまだ「ボクシングは男がするもの」という考え方が根強く残っているのがひとつ。あとは、「食わず嫌い」、つまり試合を見もしないで決めつけている風潮も強く感じる。
 実際、海外の映像を男子同様に目にする機会が圧倒的に増え、4回戦6回戦の試合でも、レベルの高さを痛感することも多い。その部分は、国内女子選手たちの奮闘を促すしかない。けれども、あちらの試合と比べても何ら遜色のない、立派な試合もあり、選手もいることを私は知っている。

 女子も現役、OGにかかわらず、どんどん解説登用されてほしいと思う。男子の試合を論評することも、まったく遠慮することはない。だって、こんな一介の記者ですらいつも偉そうに書いたり言ったりしてるんだから。解説、昔何回かやったことありますが、言いたい放題でもう2度と呼ばれなくなっちゃったけど(笑)。
 解説は、目の前の試合を批評するだけでなく、自身がどうボクシングと向き合っているか、アピールできる場でもあるのだから。

ここから先は

0字

観戦した国内外の試合開催に合わせ、選手、関係者、ファンに向けて月に10回程度更新。

ボクシングの取材活動に使わせていただきます。ご協力、よろしくお願いいたします。