【日記】処世/2022年12月21日(水)
コオロギにしてはデカいなぁ。クモにしては腰高だ。
その虫を発見したのは昨夜のこと。冷蔵庫の裏の壁をよじ上ったかと思えば、今度は下りてきて、フロアをのしのしと闊歩している。ああ、カマドウマだ。いまからまた雨戸を開けるのもめんどくさいし、ひと晩だけどうにか我慢してくれよ、と念じて寝た。
朝。あいつどこ行ったかなぁ、と見回してみるものの姿がない。いろいろなものが入ってるポケットから、いま必要な物に限ってなかなか見つけ出せない、それに似た感覚。人生とは常にそんなものなのだろう。
やつのことはすっかり忘れて数時間を過ごしていたら、部屋を歩く足にこつんとぶつかる感触があった。あ、もしかして踏んじゃったかな……と恐る恐る屈んでみたら、いた、あいつだ。パッと手で覆い被せてみるものの、予想したような、跳ねる動きは一切なし。いや、マジで踏んじゃったのかなぁ、でも、潰れてはいないしなぁと逡巡しつつ、小魚用のすくい網に引っかけて、庭にひょんと落としてみた。長方形の植木鉢の中にスポンと入ってしまった。しかし、やはりそのまま微動だにしない。いやぁ、やっぱり死んじゃったのかなぁ、申し訳ないことしたなぁ、と心の中で念仏を唱えた。
30分ほど経って、やっぱり気になって植木鉢を覗き込んでみた。すると、その姿は跡形もなく、消え去っていた。
はは~、さては死んだフリをしてたんだな。寒空の下だけど、食料のないわが家の中よりはマシだろう。カマドウマの意外な利口さを知ると同時に、処世術の巧みさに胸を打たれた。
詳細はまだ語るに及ばないが、計画していることに少しずつ、進展があった。湯船に浮かべたおもちゃの船のように、浮かんでは沈み、沈んでは浮かぶ。気持ちの揺れ動きは毎日激しく、どうにかなりそうな日もなくはないが、未来を信じて、自分を信じて、どうにか保っている。
『ボクシング・ビート1月号』が届く。島篤史編集長の温情を受け、田中恒成vs.ヤンガ・シッキボと井上拓真vs.ジェイク・ボルネアを書かせていただいた。そのために、どちらも現場に足を運ぶことができた。
前身の前身、『ワールド・ボクシング』にいたのが2004年5月号までだったから、およそ19年ぶりの復帰。そんな個人的感慨はさておき、『ボクシング・マガジン』なき今、国内唯一のボクシング専門誌、この貴重な1冊は、相変わらずどのページも熱意と愛情に溢れている。ファンの皆さんにはしっかりと毎月堪能していただきたい。
『蟻の階段 警視庁殺人分析班』(麻見和史、講談社文庫)を読み始める。WOWOWの連続ドラマWシリーズ(3作+スピンオフ+公安分析班)はすべて観ており、その原作シリーズの2冊目を手に取ったという次第だ。
文体は滑らかで、漢字も難しいものはほとんど使われていないので、非常に読みやすい。