【ボクシング】WBCヘビー級ランカー対決は終始盛り上がり欠いたままアジャグバが僅差制す
☆1月14日(日本時間15日)/アメリカ・ニューヨーク・ターニングストーンリゾート&カジノ
ヘビー級10回戦
○エフェ・アジャグバ(ナイジェリア)WBC16位
●ステファン・ショウ(アメリカ)WBC27位
判定3-0(96対94、96対94、96対94)
ともにバランスを整えた立ち姿。丁寧に左ジャブを差し合いながらスタートしていくが、ショウは引き気味でアジャグバを迎えうつかたち。早々に出来上がった両者の戦い方は、最後の最後まで変わることがなかった。
丁寧に左ジャブを上下に散らしていくアジャグバ。時折ロープを背負いながらそのジャブに反応し、左フックを合わせにいったり、右カウンターを狙ったりするショウ。実にスムーズにリラックスしてジャブを放つアジャグバに対し、手数が極端に少なく単打のショウの一撃は、より迫力があった。
だが、右を痛めているのではないか? と勘ぐってしまうほど、アジャグバは右へつなげない。つないだとしてもツーパンチ止まり。また、会場のブーイングに乗せられるようにして稀に攻めるショウの一打は迫力こそあるものの、やはり単打で終わってしまう。
ともに防御技術があって、クリーンヒットも少ない試合。ダメージこそ与えられなかったものの、ジャブを差し続け、手数でも上回ったアジャグバの手が挙がったが、いずれも「絶対に勝った」と言えるようなアクションを欠いた。そういう気持ちを見せられなかった。
かつてのヘビー級の凡戦といえば、太った大男がブン回し合って倒し切れず、疲労にまみれてクリンチの連続……という展開だった。が、アジャグバ対ショウは、スタイルこそしまり、技術の高さもあったものの、あまりにスマートすぎて「ヘビー級ボクシング」のインパクトがまるでなかった。ともに相手を倒し、圧倒するという意識がなく、「負けないボクシング」に徹しているようで、マススパーリングを見ている気持ちになってしまった。
☆1月14日(日本時間)/アメリカ・ニューヨーク・ターニングストーンリゾート&カジノ
ヘビー級10回戦
○ジョニー・ライス(アメリカ)
●グイド・ヴィアネロ(イタリア)
TKO7回40秒
左ジャブ上下主体に、徐々にテンポアップしていったヴィアネロに対し、ライスは完全に受け身になりながら右リターンを狙う。だが、ヴィアネロは速いステップバックでこれをかわす。
3ラウンド、ジャブの相打ちから右を打ち下ろし、ようやく攻めの姿勢を見せ始めたライスは、必ずワンツーのつなぎに半拍置くヴィアネロのその“間”に体を寄せて、右を打たせなかった。
5ラウンドに入ると、静かなる展開にしびれを切らした会場からブーイングが起こり始める。ジャブベースで、ワンパターンの攻めしか見せられないヴィアネロに対し、ライスは6ラウンド、受け身の姿勢から一転、鋭い踏み込みからのワンツーを深く突き刺した。この右ストレートがヴィアネロの左目上をザックリと切り裂き、大量の出血が起こる。
続く7ラウンド、なおも出血は収まらず、ベンジー・エステベスJr.レフェリーはドクターチェックを要請。カットはヘッドバットによるものと判断していたのだが、インスペクターとの長い協議の末に映像確認を行い、パンチによるものと翻意。ライスのTKO勝利を宣告した。
《その他の試合より》
スーパーフェザー級10回戦は、前戦でロベイシー・ラミレス(キューバ)に敗れて初黒星を喫したエイブラハム・ノヴァ(アメリカ)が、井上尚弥のスパーリングパートナーを務めたアダム・ロペス(アメリカ)から2度のダウンを奪い、97対91、98対90、98対90の3-0判定勝利。
右へ右へと回り込みながら右をかぶせていくロペスに、ノヴァは出遅れたスタートだったが、4ラウンドに手数を減らしたロペスに左右ボディを決めると5ラウンド、ロペスの仕掛けで始まった右、左フックのカウンター合戦に優って左フックで倒す。
さらに続く6ラウンド、ロペスがやはり仕掛けたものの、ノヴァが左右をヒットするとロペスは取り乱し、両腕を絡めてきたロペスをノヴァが引き倒したのだが、マーク・ネルソン・レフェリーがカウントを数えた。
独特のテンポから中へ入り、ボディワークと下から上へのコンビネーション。味わいあるボクシングを見せたロペスは8ラウンドに右ショートカウンター2発を決め、さらに左ボディアッパーを入れてノヴァを慌てさせたが、グイグイと入り込んでくるロペスにノヴァが一撃を合わせると、そこで動きを止めてしまうなど、不安定な姿を見せた。ノヴァの強打というよりも、ロペスの耐久力に難ありと見た。2度のダウンも影響しての大差だが、それでもスコアはもっと接近していたと思う。
フェザー級のプロスペクト、ブルース・キャリントン(アメリカ)が6回戦、ウェルター級のホープ、ブライアン・ノーマンJr.(アメリカ)は8回戦を行ったが、いずれもサウスポーの相手の防御技術に遭って、良いところを披露できなかった。
キャリントンは、ブロッキングの巧みなファン・アントニオ・ロペス(メキシコ)に隙間を作らせることができず。それでもフルマークの勝利は問題なかった。
開始と同時に猛然と襲いかかったノーマンは、そのままロドリゴ・ダミアン・コリア(アルゼンチン)を攻め落とす勢いだったが、コリアは耐えて以降のラウンドで反撃。ノーマンは初回の猛攻で疲れたのか、コリアの緩いテンポに合わせると、コリアの左ストレートやプレスを受けるシーンも多々あった。
最終回、ノーマンは左フックでコリアにヒザを着かせたものの、コリアは諦めずに反抗。スコアは79対72、77対74、77対74の3-0だったが、コリアの善戦が光った。
ロペスもコリアも一通りの防御技術をしっかりと持ち、期待の選手に気持ちよくパンチを打たせず当てさせずだった。アメリカや中南米で試合を数多くこなす選手たちは、たとえ4回戦や6回戦だろうが、そこがまず大元にどっしりと根づく。
自分の身は自分で守らねばならない。試合もこなせない。そしてそうでなければ試合にすら呼ばれない。選手層の問題だけでなく、やはりそれはボクシングという競技に対する向き合い方の違いなのだと思う。
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暁視GYOSHI【ボクシング批評・考察】
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