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【ボクシング】英マンチェスターの女子ダブル世界タイトルマッチ評


☆7月1日(日本時間7月2日)/イギリス・ランカシャー州マンチェスター/AOアリーナ
BOXXER
WBC・WBO・IBF・WBA女子スーパーミドル級タイトルマッチ10回戦
○サバンナ・マーシャル(イギリス)WBC2位、WBO3位、IBF2位、WBA3位
●フランチョン・クルーズ-デザーン(アメリカ)チャンピオン
判定2-0(95対95、99対92、97対93)

 マーシャルはまるで往年のビッグスター、トーマス・ハーンズのようだった。

 長身を前傾にして折りたたみ、左肩をぐっと前に突き出してグローブを下げる。自然半身となる“デトロイトスタイル”で、下から突き上げるジャブ。
 右のオーバーハンドは横から見ているわれわれにはわかりやすいものの、正対するデザーンには出所がわかりづらいはず。しかも、左はフリッカーだけでなく、やや上げて真っ直ぐ打つもの、右はいわゆるストレートでも打つ。

 言葉にすると“変則気味”となるマーシャルに対し、国歌を自ら歌い、コスチュームもド派手なデザーンのそのボクシングはきわめて正統派。初回こそ、ジャブ、ワンツーと打ちこんでいたが、2ラウンド以降はマーシャルにいいように幻惑されてしまった。

 マーシャルは長い自らの腕をコントロールする術を持っていた。速いのはもちろんのこと、正確にデザーンを捉える技術がある。中・長距離ではかなわないと踏んだデザーンは、接近してのボディ打ちを試みるが、マーシャルはこれをクリンチで遮断した。

 中盤以降、マーシャルの攻撃でひと際目だったのが左フックだった。ジャブや右ストレートに右を合わせに来ているデザーンの打ち終わり、パンチのつなぎ目に必ずシャープに差し込んだ。ジャブとフックの中間のような軌道で放つそれは、デザーンには見えないパンチだった。

 困り果て、焦り、ただただ前に出るだけのデザーンは、凡庸なファイターにしか見えなくなり、しかもボクシングを全くさせてもらえなかった。この試合をドローと見たジャッジは、どこで何をしていたのだろうか。

IBF女子世界ウェルター級王座決定戦10回戦
○ナターシャ・ジョナス(イギリス)1位
●キャンディ・ワイアット(カナダ)2位
TKO8回

 サウスポー、ジョナスの一方的な試合だった。
初回早々、強烈な左ストレートをヒットさせたジョナスは、ワイアットに鼻血を流させ、早くもダメージを与えていた。ここではややラフな攻めを見せたジョナスだが、その後は丁寧に打ってかわすボクシングを遂行していく。

 小刻みに体を左右に動かしながら、両腕をしっかりと掲げているワイアットは、左を打てば右フックをかぶせられ、それを意識すれば左が飛んでくるため、右をなかなか打つことができない。唯一、ジョナスを警戒させたのは左フックだが、ジョナスが左回りステップをして遠ざかると、それすらも出せなくなってしまった。

 意を決して強引に距離を詰めれば、ジョナスは余裕をもってサイドへ逃げていく。ロープを背負っていてもそれはまったく変わらない。そうして次々に左を決めていく。右アッパーからつなぐそれは威力も増してワイアットの出血をさらに酷くさせた。

 マーカス・マクドネル・レフェリーは、一方的になっている試合を何度も止める素振りをみせていたが、8ラウンドが始まってすぐに、またしても立て続けに左を打ち据えたマーシャルの攻撃を見て、ストップの声をかけた。

《SKY SPORTSライブ視聴》

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