真実【日記】
どこかの学校の体育館で行われる興行は、日章学園以来?かな。
というわけで、薄暗い館内の、真ん中あたりに設置された記者席にリュックを置き、トイレやらなんやらで動き回っていた。
10分ほど経ったところで戻ってみると、記者席は前方に移動されていた。
「あれ? オレのリュックは…」
みんな知った記者だったが、わざわざ他人のリュックまで一緒に移動してくれるような奇特な人物は1人もいなかった。あらためて、自分の嫌われぶりも再確認した。
しかし、そんなことを悲しんでいる場合ではない。ノートもボールペンも入ったままだったし、なによりこのリュックへの愛着が強すぎる。館内中をくまなく何度も探し回る。お客さんの足元を凝視しながらうろうろする。女性の脚を見ているような形なので、完全に変態扱いなのだろうが、そんなことすらも気にならないくらい、必死だった。
「あ、失くしものですか?」と、30くらいの男性。どうやら当館職員のようである。テレビのリモコンのような形・大きさの端末機を持ってきて、「ここに入力してください。見つかれば、郵送しますので」と言う。
いや、そりゃありがたいんだけどさ。いま、使いたいんだから現在のことを考えてほしいんだけどな。。。とは言わなかった。
登録料は100円だったようだが、こちらに確認もせずに、せっせと進めてしまう男性、「あ、クレジットカード持ってましたか?」と後から訊いてきたので「はい」と答えたが、「しまった! こっちにしてしまった」と、端末から出てきた真新しいSuicaを取り出した。なぜSuica?とはツッコまなかった。
「いま、Suica貴重なんスよね。いいですよそれで」と受け取る。そんなやり取りをしていると、体育館後方に設置されたその受付には、いつの間にか若者たちがたくさん押しかけてきており、さっきの端末でなぜかゲームをやり始めたりしていた。
「なんだこの万能端末は」って有り体に驚いてみたが、やっぱりリュックのことが気になって、ふたたび客席中を巡り始める。
「ん、待てよ。いま起きて、確認すりゃいいんだ」と気づき、万年床から身を起こし、すぐ横のリュック置き場を見る。
あった!よかった!
ふつうのリュックよりも容量が大きく、縦長にニョキッと伸びた特徴的なやつが、そびえ立っていた。深夜あらため早朝3:30。そいつを抱いた。
安心したと同時に、夢の中のリュックはいったいどこへ消えたのだろうと、その“真実”を知りたくなった。