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12・27 横浜→平塚

 やっぱり熟睡はできなかった。深夜にカルビ弁当を食べたからでなく(カルビで胃がもたれることはいまだありません)、試合に興奮していたからでもなく(してたけどね)、おそらく試合評(!?)を書かねばという強迫観念から。で、例によって習慣化している4:00に起き、「いかんいかん、今日はバイト休みだぞ」って寝直したものの、結局6:00に起きて1時間布団の中でもぞもぞと。7:00にバサッと起きて、『THE BOXERS』用の井上尚弥×マーロン・タパレスREVIEWをしこしこと書き始めた。

 横浜に向かう電車内。一応、『首』(北野武)と『永い言い訳』(西川美和)の2冊を携えてはきたものの、「ここで寝とかんと後々支障が出る」と思い、いきなり目を閉じた。何駅か毎に起きるが、その度に周囲の人の眼差しが気になった。きっと、いびきが凄いんだろう。長男に「うるさくて寝らんねー。うちに2度と来んな!」って怒られたやつ。でも、今日だけはみなさん許して! って心で念じ、目をつぶる。おかげさまで、横浜に着く頃はスッキリした。

 ジム下には、入り待ち出待ちのファンがすでにいた。どこでそんな情報を仕入れているんだろう。あの、「なんだ。尚弥じゃねーのか」って冷たい視線がたまりません。

祝福ムードに包まれて……と書きたいところだが、何とも言えぬ緊迫感が漂っていた

 昨夜、帰宅して2度映像を見直したという尚弥。
「あらためて、すごく高い技術戦をしていたなと思いました」と語ったのが印象的だった。おそらくほとんどの人が「パワー全開ボクシング」の印象を持っていると思うから。では、どんな技術のやり取りをしていたのか。そこは「両者にしかわからない」(尚弥)のかもしれない。ましてや、リングから離れた場所から見ていてはとうていわからないし、そもそもはっきりと見えていても見えない人がほとんどだと思う。
 だから原稿の最後に書いた。それを読み解くのが井上尚弥からのクリスマスプレゼントだと。でも、自分自身にとっては「冬休みの宿題」のつもりだ。それを携えて、近いうちにまた彼のインタビューができればいいなぁと思ってる。

 終了後、平塚へ移動。前もって調べてあったシネプレックス平塚で『PERFECT DAYS』を観るためだ。なんでも水曜日は安いらしく、通常2000円なのが1300円とのこと。「マジっすか!」なんて、いい年して小躍りしてしまい、みっともないことをしてしまった。
 本編が始まるまで、上映予告やマナー勧告が15分くらいあるのはお決まりで、みんな「早く観たいよなー」って思いつつも我慢するのが当たり前。だが、ついに現れた。我慢できない人が。長く映画館で見続けてきて、初めて遭遇した。
「おい、早くやれよ!」って怒鳴り声が、通路を挟んだ隣から飛んだのだ。
パッと見ると、仙人みたいに白い髭を長く伸ばしたジイさんだった。いや、予告が始まる前から口をぺこぺこ鳴らしたり(どうやって鳴らしてんだか不明)してたから怪しいとは思っていたのだが。
 しかし、ジイさんが怒鳴ったと同時に、“余興”はサッと終わり、本編が始まったのだ。「ミラクルじゃん~!」なんて笑いそうになるのを堪え、「いや、映画館の人が(時間を)巻いたのかな」なんて一瞬思ったが、いやいやそんなことはない。で、思いついた。このジイさんは、このタイミングで始まるのを知ってて怒鳴ったんだと。歌舞伎の“掛け声”と同じなんだきっと。そう考えると、さらに笑いが込み上げてきた。必死にかみ殺しながら、オープニングを迎えたのだった。

 バス運転手の毎日を淡々と綴る、ジム・ジャームッシュ監督の『パターソン』同様の展開だ。がもちろん、両者の手法は異なるし、それぞれの味わいが漂い、広がる。そして、西川美和監督『すばらしき世界』の続きを観ているような感覚に陥った。三上さんが平山さんに生まれ変わって。
 もう、どの場面も、どのカットも愛おしい。出てくる人たちすべてが愛くるしい。いつの間にか、隣のジイさんなんて気にならず、スクリーンの中に引きずり込まれてしまった。
 先日の北野武監督『首』同様、書き出したら終わりがないので2点だけ。
役所広司と三浦友和のシーン、そしてラストシーンは深く深く考え、味わいたい。
 個人的には“永遠のマドンナ”麻生祐未さんが出ているのが嬉しかった。
劇中に流れるカセットテープの洋楽群が懐かしすぎた。
早朝に起きて仕事に行く毎日が、自分に重なった。
 ……って5点書いちゃった。
 こういう映画が沁みるようになった。オレも年を取ったんだなぁと。
あ、いや、若い頃からこういうリズムと展開の映画、大好きだったけど。
 この映画の完成をことのほか楽しみにしていた〇さんに、早く観てほしいなぁ。

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